舞い上がる。

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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

【書き起こし】トークイベント「月刊おはなし図鑑」第17回 ゲスト:成宮アイコさん(朗読詩人)テーマ:成宮アイコさんの活動について

2020-05-12 22:50:34 | 月刊おはなし図鑑


2019年1月から、僕とよしこで月一で行っているトークイベント「月刊おはなし図鑑」。
第17回は、5/11(月)に、新型コロナウイルスに配慮して配信のみで、初のリモート出演で成宮アイコさんをゲストに行いました。



詳細は告知に書いてあります。
【お知らせ】トークイベント「月刊おはなし図鑑」第17回 ゲストは成宮アイコさん!(5/11、配信のみ)



トークの動画はこちらの記事からご覧ください。
トークイベント「月刊おはなし図鑑」第17回、成宮アイコさんとコラボ配信でトーク!終了しました!



今回もトークの書き起こしを公開します。



トークイベント「月刊おはなし図鑑」第17回
(2020.05.11 ゲスト:成宮アイコさん)


ちひろ 「月刊おはなし図鑑」、初のツイキャスのみでの開催となりました。こんばんは、ちひろBLUESです。毎月僕は、よしこさんと2人で「月刊おはなし図鑑」というトークイベントを行っていて、今までは新潟にあるちず屋の2階とか、ぺがさす荘とか、そういう場所でお客さんを招いてお金もいただいてやっていたんですけど、今回ちょっと状況が状況なので、どこかで開催するということが難しくなってお客さんも呼べなくなったので、しばらく僕がこうやって自宅から配信して、ゲストの方とコラボ配信をしていくってことになりました。というわけで、「月刊おはなし図鑑」第17回、初めていこうと思います。すみません、機材トラブルでバタバタしてしまって。でもこのバタバタする感じも、今回らしさですからね。コラボキャス最初ならではって感じですからね。で、このコラボキャスに慣れていて、なおかつ僕のトークイベントの趣旨とか理解してくれてる人って言ったら、あ、もうあの人だなと思いまして、成宮アイコさんに出ていただけることになりました。というわけで、アイコさん、コラボよろしくお願いします。
成宮  こんばんは。
ちひろ お久し振りです、アイコさん。
成宮  お久し振りです。
ちひろ セッティングまでに10分間を要してしまいました。すみません。じゃあ、始めていきますね、あらためて。よろしくお願いします。
成宮  お願いします。
ちひろ 変な緊張感がありますね。
成宮  配信?
ちひろ コラボ配信って初めてやるから。アイコちゃんって、最近わりと毎週、コラボ配信をやってて。
成宮  みんなが疲れているかと思い。雑談できないじゃない。
ちひろ ね、本当ね。
成宮  だから、立ち話で、偶然会って話して3時間くらいしゃべったくせに、家帰ってきたら何の話したんだっけなみたいなことが必要だなと思って。
ちひろ しょうもない会話というか、雑談をね。
成宮  そうそう。
ちひろ この間なんて、アイコちゃんずっとランチパックの話してたもんね。
成宮  ハハハ…3人とやって、結局大体後半ずっとパンの話をしてる。またパンになる予感。もうパンの話はしない。
ちひろ しかも今日、アイコちゃんが僕の告知のツイートを引用RTしてくれたんですけど、その告知の中にもパンの話が載ってたんですよ。フラグですよ、これはもう。
成宮  フフフ…
ちひろ というわけで、一応このイベントは、色んな人の話を掘り下げていったり、その人の好きなものの話とかをして、人間の図鑑を作っていこうっていうのがコンセプトなんですよ。
成宮  はい。
ちひろ なので、せっかくアイコさんが出てくれたので、僕が長年アイコさんに対して聞きたかったこととか色々聞いていって、そんな感じでいいですかね、アイコさん。
成宮  はい。
ちひろ では、始めていきますね。アイコさんは同じ新潟の出身で、幼少期、思春期に機能不全家庭での経験とか、登校拒否の経験とかがあって、そのあとで、色々な気持ちを詩にして朗読するという活動を始めていて。
成宮 はい。
ちひろ そのあと、2014年に上京して、今は東京を中心に活動しているという感じで合ってますかね。
成宮  合ってます。



ちひろ アイコさんがどういう方かっていうのは、僕が2017年にアイコさんと共演した時にプレゼンテーション形式で説明したんですけど、そこで話したようなことは、同じく2017年にアイコさんが初めて出版した「あなたとわたしのドキュメンタリー」という本に大体書いてあるので、そこはちょっと端折って、その先の話とかを、今日は聞いていけたらいいかなと思っています。
成宮  はい。
ちひろ で、ちひろ的に、僕的にアイコさんとどういう付き合いがあったのかというと、確か2012年に初めて会ったんですよ。アイコさんの出ていたイベントをたまたま見に行って、打ち上げで初めてお話したんですけど、その時にアイコさんが僕に向かって「はじめまして。リア充だと思ったけどメンヘラだったんですね」というすごいパワーワードをぶつけてきたのを、昨日のことのように覚えております。
成宮  フフフ…
ちひろ そのあと、新潟でアイコさんが出るイベントのスタッフとかをしていくようになって、アイコさんが東京に上京したあとも、何度か東京まで行ってスタッフをやったりとか。あと、「カウンター達の朗読会」というアイコさんのやっていたイベントが2015年に初めて新潟の北書店でやって、それを見に行ったことがきっかけで、東京にも見に行くようになったりとか。探したら出てきたんですよ。「北書店の夜よ消えるな 絶望の望が光っているから生きろ」と書いてあるのを、もらってたんですよね。
成宮  最初の北書店の時かな。
ちひろ そうそう。最初の北書店です。2015年の。赤い紙に書いてあるのを、朗読しては捨てていくというかまき散らしていって、それをお客さんにプレゼントするっていうパフォーマンスをしていて。で、2016年に初めて僕がアイコさんと共演したのが、「生きづらさを抱えた人間賛歌」っていうイベントを松本で開催することになって。
成宮  はい。長野県。
ちひろ TOMOKAさんという長野の女の子が開催したやつですね。そのあと2017年に新潟でも「生きづらさを抱えた人間賛歌」をやって、その年に「あなたとわたしのドキュメンタリー」が発売されて、その時もスタッフとかさせてもらって。で、このへんまでは、2017年の「生きづらさを抱えた人間賛歌」で話してるんですよ。
成宮  うん。
ちひろ で、このあとですね、2018年から成宮アイコは熱いんですよ。
成宮  熱い?本当?
ちひろ ホットな時代が到来するんですよ。
成宮  やったー!
ちひろ この本(あなたとわたしのドキュメンタリー)を、なんとRYUTistの宇野友恵大先生ともちぃさんが読んでくれたっていう。そのツイートを見付けて、翌年アイコちゃんと一緒にRYUTistを見に行ったのが、お正月だったと思うんですけど。
成宮  うん。
ちひろ そこから、アイコちゃんが新潟にRYUTistのライブを見に帰って来るようにどんどんなっていって。その年はRYUTistさんが7周年のライブをやった年で、ライブレポートをアイコちゃんが書いてくれたりとか。で、その翌年、2019年に「伝説にならないで」っていう一番新しい詩集が出て、そのイベントで、ファンの方にはお馴染みだと思いますけど、アイコちゃんが思春期からずっと一人で過ごしていたイトーヨーカドーでライブをすることができて、その日の夜に北書店でもライブをすることができたりとか。



成宮  二公演。
ちひろ あとは、2018年にGOLDEN PIGSで小澤いずみさんっていう新潟のシンガーソングライターの女の子と共演したことがきっかけで、去年の北書店でもまた共演できたりとか。あとは、「あなたとわたしのドキュメンタリー」を草野マサムネさんが読んでくれて、それが「伝説にならないで」の帯に繋がっていったりとか、色々ありましたね。
成宮  うん。
ちひろ あと、このイベント的に熱いのは、去年、乙女座長☆銀河団さんが出てくれたんですけど、活動終了前の古町どんどんのライブのことを、アイコさんが記事に書いてくれたりとか。東京に行ってからの方が、新潟との接点がどんどん強くなっていったっていう感じがしていて。そこらへんを聞いていこうと思っているうちにもう23分ですよ。本当下手ですね時間の使い方が!
成宮  ハハハ…
ちひろ 本当すみません!バタバタしちゃって!で、聞きたいなと思っていたのが、「伝説にならないで」に、アイコさんの活動の変遷みたいなことが書いてあって。
成宮  うん。
ちひろ 最初は生きづらさとか怒りとかをマシュマロに包むかのようにポップな言葉で投げ付けるみたいな、怒りの衝動を原動力にしていたのが、だんだんそれに共感してくれる人が増えて、第二段階として、怒りとかをぶつけるんじゃなくて、みんなで生きるぞ!という気持ちをアジテートするかのように朗読していくようになって。多分、僕が第一段階から第二段階の移行期くらいに出会ってるんですよ。
成宮  うん。
ちひろ だけど、この先に第三段階成宮アイコがあって。第三形態とか言った方がいいんですかね。フリーザみたいな。
成宮  ハハハ…
ちひろ 第三形態では、みんなで生きていくぞ!というアジテーションを、さらに先に進めたというか。
成宮  うん。
ちひろ みんなで一緒とかじゃなくて、みんなが別々に生きているけれど、それぞれ出会って生きていくみたいな感じになったと思ってて。
成宮  うん。
ちひろ この時代はほとんど東京で活動していてあんまり会ってないんだけど、去年北書店でやったのを見た時に、昔は言葉を投げ付けるっていう、実際に本でも書いていたと思うけど最初の頃は「言葉の必殺技を的確に的中させたい」みたいな気持ちでやっていたのが、それぞれ生きている人達の生活の中に、そっと言葉を置いていくみたいに変わっていったなと思っていて。そこは何かきっかけとかがあったんですか?
成宮  それは、「ハロー言葉」っていうイベントを今やっていて、一緒にライブ活動をしているピアノの青山祐己と、私に色んなアドバイスをくれたり追い駆けたい目標というか先輩の内藤重人さんというシンガーソングライター、バンドマンの人と、3人で共同でやっているんですけど。そこは私達のライブだけではなくて、ライブがメインというよりも、色んな人の言葉を聞きたいと思って始めたイベントで。例えばTwitterとかで夜中の3時頃とか寝れない時に「寝れない」って検索すると色んな寝れない人がいて、明日就活面接だからっていうガチの寝れない人と、しゃべりすぎてテンション上がりすぎて寝れないみたいな、色んな状態の「寝れない」が、同じ「寝れない」という4文字の言葉で同等に並んでるのがすごくいいなと思って。例えばそれが「寝れない」じゃなくて「死にたい」になってもいいんだけど。それで、じゃあこれをイベントでやりたいなと思って、「ハロー言葉」ではオープンマイクっていうのをやってるんですけど、1人3分時間をあげるので、参加したい人は事前申し込みをして、その3分でしゃべるっていう。でも、それは自由なオープンマイクではなくて、テーマが付いているんですけど、例えば、「言えなかったけど」から始まる3分とか、「忘れたかったのは」から始まる3分とか、できるだけTwitterで一人で書くような内容が聞きたかったから、内緒話を堂々とみんなで聞けるイベントにしたくて。それをやっていくうちに、もともと感じてた、アジテーションをするライブではないものをやりたくなっていって。というのも、そもそも私が読んでる言葉っていうのは、自分自身のことを書いて自分の考えを伝えたくて書いてるわけではなくて、Twitterの夜中の「寝れない」が分かるわーみたいなことを思いつつも、別にリプを送るわけでもなく、寝れない色んな人の生活はそれぞれの部屋にあって、私がそれをただ盗み見してるだけで、やり取りはしないけど寝れない気持ちを共有してしまったみたいなのがすごく良くて。だから、私の詩はそもそも、そういう色んな人のブログとかTwitterの色んな言葉を拾い集めて書いていることが多いので、自分のことではなかったり、自分の詩ではないというのがすごく意識的にあって。だから自分が読むということにも特に執着がなくて。そこからもっともっと自分を消していきたいというか。自分と、私が書いたものを、もっと離していきたいと思って。今、多分、私が書いたものって、私とべったりくっついてるイメージがあると思うんですけど、文章は文章、私は私で、別にしていきたくて。だから、自分が読むっていうことに重きをおいているのを動かしていきたいことと、読んだ人/聞いた人っていうのではなく、その場を共有してしまった人同士で、またそれぞれの家に帰っていって、交流をするわけではないけど、共有してしまった、また次の第何回目かでは共有してしまうかも知れないみたいなことが、一番今の私にはちょうどいいなと思っています。
ちひろ 今思うと、「あなたのドキュメンタリー」っていう、今はもうあんまりやらなくなった詩ですけど、あの詩の中にも、色んな人から募集した思い出みたいなのが入ってたりするし、完全な著作物として、「私のもの」として同じものを毎回出していくんじゃなくて、例えば、この日誰かと時間や空間を共有した体験として、作品を作り続けるようになったのかなって感じがしました。
成宮  うまく言えないんだけど、自分がやっているということの執着が特にないので、でも人に言わなかったり、日記にメモしておかなかったらなかったことになっちゃう色んな人の気持ちとかが、どこにも存在しないままなくなることがすごく落ち着かない。それは、同じ経験はしてないけど、「卵焼きが好き」ってところで一致したら、子供の頃から卵焼きが好きな人でも、大人になってから卵焼きが好きになって昔超嫌いだった人でも、過去が違うけど今は同じ気持ちで「そこは分かるわ」っていうところが、感情の中には色々あって。学校に行かなかった日にしていたことが同じだったりとか。
ちひろ アイコちゃんは結構、高校で不登校だったってことを言ってて。俺は高校時代はなかったんですよ、そういうのが特に。わりと優等生な人間だったと思いきや、大学から精神疾患になったし、登校拒否とかも結構あって。全然違うじゃん、アイコさんと俺で。家庭環境とかも全然違うし。
成宮  うん。
ちひろ でも、全然違うのに、いざ聞くと、どこかで重なる部分が出てきて。
成宮  うん。
ちひろ それは、それでいいじゃん、って感じがする。全部を完璧に分かり合えるとかは有り得ないし、こういう感じの人にしか受け入れられない作品とかじゃなくて、全然違う人が聞いても、どこかで共有できる何かがあるみたいな。そういうところがアイコさんの詩のいいところだと思ってたので、ちょっと納得しました。完全に理解できたかは分からないけど。
成宮  フフフ…
ちひろ ちょっとコメント見ますか。「アイコちゃんが書いてくれた乙女座長☆銀河団についての記事がすごく良くて私は救われた」
成宮  フフフ…あのあと書けなくなっちゃった。あ、来てくれてオープンマイクに出てくれた人がいる。
ちひろ 「去年の今日が「ハロー言葉」でした」って。あと、「アイコさんの詩を聞いていると私と同じ気持ちを大勢の人の前で叫んでくれてありがとうって思います」って。
成宮  ああ、嬉しい。
ちひろ 「重なる部分が何かあれば糸口になりますよね」とか、そんな感じで色んな人から来ています。あれですね、いつも隣にいる人とトークしてコメントを拾っていたのが、難しいですね、テレワークだと。
成宮  テレワーク。慣れる慣れる。練習の回。
ちひろ フフフ…
成宮  前回イトーヨーカドーでライブやった時は、最初の新潟ライブとは結構違う感じでした。
ちひろ 最初の新潟ライブってのは、2015年の?
成宮  北書店の。
ちひろ アイコちゃんがってこと?どういう感じでした?
成宮  気持ちは結構違う感じでした。
ちひろ イトーヨーカドーでやった時と、北書店でやった時って、読む内容とかもちょっと違ってて。イトーヨーカドーの時って昔の作品が多かったなって思って。
成宮  うん。今はもう読まないけど、その当時には必要だったことを、全部そこで読もうと思って。で、北書店が今バージョン。
ちひろ そうだよね。「伝説にならないで」がメインだったよね、北書店は。作品を作ってる人あるあるだと思うんですけど、やっぱりその時その時で違っていくじゃないですか、スタンスが。
成宮  うん。
ちひろ アイドルとかだと、初期のあの曲をまたやってほしいとか、そういうこと思われたりすると思うんですけど、作り手としては、あれはもう今やる曲じゃないんだよなってなったりとか、あるのかなって思うんですよ。やっぱり、アイコちゃんもありますか?そういうのは。
成宮  私は結構、内容をその時その時で読み変えていくので。「これ読むよ」って言ってても、全然違う内容にして一緒にやってる青山くんが困ったりとか、そういうのがあって。
ちひろ そうなんだ。
成宮  その時の感情をアドリブで言うのがめちゃくちゃ得意なんで。でも、イトーヨーカドーの時はそれはしないで、全部そのまま読もうと思った。今の気持ちは何も入れずに、そのまま全部読もうと思った。今の自分を入れちゃダメな気がしていて、あの時は。
ちひろ 結構色んな人がコメントとかしてたけど、「同時のアイコちゃんに聞いてほしい」みたいな人を結構、感想のツイートとかで見かけたんですけど、そういうことは考えてました?
成宮  あの日、終わったあと、本当は日記を書こうと思ってたんだけど、これをうまくまとめるのは無理だなと思ってやめちゃったんだけど。なんだろう、あの時は、その時の自分にどうっていうよりも、絶対にその言葉を読み間違えないし一文字も読み落とさないぞって気持ちだけだったような気がする。その時の私が書いたものを絶対、一文字も、例えば感情が揺れちゃったら読めなくなるから、それが絶対ないように、すごく冷静を保って読み落とさないようにすることが一番だった。
ちひろ 写経みたいだね。
成宮  ハハハ!そうかも!
ちひろ 修行する時に、お経の言葉をまずは一言一期間違わずに書くっていう。そういう感じで、あの時の自分を一言一句間違わずにもう一度なぞるみたいな。
成宮  もし泣いちゃって読めなかったら、これは一生後悔するぞって思ったから。
ちひろ それは、どうなるかなって思ってましたよ俺も。泣くのかなアイコちゃんって思ってたけど、あ、泣かなかったって思って。そしたらツイートでアイコちゃんが「今日は泣かなかった。偉かった」って自分で言ってて。
成宮  フフフ…
ちひろ アイコさんの新潟時代からの友達のTangoさんがここに出てくれたことがあるんですけど。
成宮  すごい長い友達。
ちひろ 高校生くらいからでしょ。
成宮  うん。
ちひろ その時に、Tangoさんが写真を撮るようになった時の話とかを聞いたんだけど、自分は芸術作品を作るとかそういう意図はまったくなくて、例えば若い頃に作品を作りたいという気持ちが自分から噴出してしまったのをただ作品にしてるだけだったとか、あとは、その時々の記録みたいな気持ちでやっていたってことを言っていたんですよ。
成宮  うん。
ちひろ で、僕も結構、最近は文章を書く仕事とかもさせてもらえるようになったんですけど、今の記録って気持ちで書くことが多くて、アイコちゃんは記録みたいな気持ちはあるのかなってちょっと聞いてみたかったんですけど。
成宮  ツイートはそれが大きいかもしれない。頭の中がずっと言葉のドッジボールみたいになっていて、でもこれだけはボールを流していってしまってはダメだみたいなのがあって、それはバンバンツイートの下書きに入れていって、人と共有できそうなものだけは送信していく。
ちひろ なるほど。アイコちゃんの朗読のスタンスみたいなのには、もしかしたらSNSとかTwitterの影響があるのかなと思ってて。Twitterって、全員が必ず同じ議論をしなきゃいけない世界ではないわけじゃん。みんなが言葉をポンポンと置いていって、反応したくなった人が反応するし、しなくても見てる人もいたりみたいな。そういう感じが、さっきのアイコさんの、全員でアジテーションするんじゃなくて、ちょっとずつ同じ場所で繋がりながら、同じ言葉を見ているみたいなのに影響してるのかなと思った。
成宮  それが一番ちょうどいい。リプもしなくていいし、空リプでもいいし。無理にコミュニケーションをするのも嫌だし、そんなにしゃべりたくもないし。フフフ…
ちひろ 絶対Twitterの議論とか嫌いでしょ。
成宮  うん。
ちひろ 嫌いではないか。
成宮  参加はしたくない。そことは違うところにいたい。だから、自分の中の優しいパラレルワールドでほぼ一日を過ごしている。
ちひろ 一人一人のTLってその人のTLで、同じのが一個もないし、自分の世界を作ってる感じだよね。
成宮  独白とか日記のために使っている人のツイートを見るのが好き。
ちひろ ああ、なるほどね。
成宮  人とやり取りをするためじゃなくて、ただ日記代わりにメモしているみたいなツイートを読むのがすごく好き。知らない人のブログを読むのと同じ感じ。
ちひろ ずっと言ってるよね、それ。
成宮  うん。
ちひろ 俺、自分のブログが2018年で10周年迎えたんですよ。その時に色んな人からコメントをもらうことがあって、アイコちゃんに頼んだら、「レインボータワーはなくなってもこのブログはいつもあるから安心する」みたいな、いいことを書いてくれたって思って、嬉しかったんですけど。どこかで出てきたんだよな、レインボータワーが、アイコちゃんの詩を読んでいたら。「薬局がショッピングモールに変わるような町で」か。
成宮  うん。小さい薬局とか個人の商店がどんどんイオンとか、マツキヨ、ユニクロがあるみたいなところになっていく感じ。
ちひろ 新潟はそうなっていくよね。コメントちょっと読みますか。「私は好きな人の過去をまったく見ないから、リアルタイムで流れてくるアイコちゃんしか知らないんだ」ってよしこさんが言ってます。
成宮  フフフ…
ちひろ あと、「Tangoの兄貴見てそう」って。
成宮  あの人とはもう、すごいずっと一緒にいた。すっごい仲良かった。今も仲いいけど。なんか自分みたいだった。
ちひろ 高校時代に、高校サボってよく一緒に遊んでいたっていう。
成宮  ほぼ毎日一緒にいた。
ちひろ コメントで、「菊池(真理子)さんが泣いてたのと、最後に小澤さんと抱き合ってたのが印象的でした」って。
成宮  北書店の時は、今のそのままを出していいから、わりと気持ちは楽でした。
ちひろ そっかそっか。
成宮  イトーヨーカドーはすごく気を張ってないと大変だったから。
ちひろ だって、一世一代の舞台みたいなもんでしょ、イトーヨーカドーなんて。
成宮  しかも、そもそもそんなに北書店よりかは人が来ないだろうと思って、余裕でいて、最初。そしたら、全然いっぱいいたから、びっくりしちゃって。
ちひろ すごい人いたよね。100人以上いたよね。
成宮  140人くらいいたみたい。
ちひろ アイコさん見て思うのが、それぞれがアイコさんを好きなんですよ。教祖みたいになってないんですよ。
成宮  それは嬉しい。たまに言われる、宗教かと思ったら違ったって。
ちひろ 宗教かと思いきや宗教にはなってないところがいいんですよ。
成宮  多分、色んな人のイトーヨーカドーがそれぞれにあるんだろうなって感じがすごくしてて。ピーコックとか。それがきっと、別々の過去の部分だけど、この円と円の重なる小さい部分のグラデーションが、例えば「イトーヨーカドー」って単語で、その人のピーコックとかが思い出されたいいと思う。
ちひろ ピーコック推しがちですね。
成宮  フフフ…
ちひろ コメントで、「気持ちの記録をツイートするの分かります」とか、「同じ気持ちの人がいると安心する」とか、「見たい情報しか見たくないからほとんどミュートしていて、ポメラニアンと魚とバンドマンの渋い日常ばかり見ている」って。
成宮  ハハハ!私もファミ通.comばっかり見てる。
ちひろ ハハハ!あの、Tangoさんと自分がそっくりだみたいな話をしていたら、よしこさんが「Tangoの兄貴みたいなんですか?酒ヤクザドルヲタの兄貴なんですか?」って。
成宮  ハハハ…
ちひろ 「自分みたいと感じる人とずっとお友達っていいですね」とか、「アイコさんは神様みたいに私の声を言ってくれます」ってコメントも。
成宮  私の声も言ってくれてる。お互い様ですよ人は全部。
ちひろ そうですね。教祖みたいに、アイコ教みたいになってないところがいいんです、アイコさんは。
成宮  ハハハ…怖い怖い。
ちひろ あと、ファンの呼称があるグループとかもいるじゃないですか。そういうのがないでしょ、アイコさんは。何だろう、「団員」みたいな、「清掃員」みたいな、そういうのがないから。
成宮  ハハハ!そういうことね。解散だよ解散!
ちひろ 全員てんでばらばらな人達がみんなアイコちゃんのこと好きなんだなっていうのがいいなと思いますよ。
成宮  色んな人のイトーヨーカドーがあるみたいな、そういうのがいい。
ちひろ あと、これをすごい言いたかったんだけど、昔のアイコさんは新潟に対する愛憎の憎が強かったんだなって思ってて。
成宮  それはもう。
ちひろ ですよね。でも、ここ数年で新潟によく帰って来るようになったじゃないですか。前からも来てたんだけど、こっちの友達が増えたりとか。多分、当時だったらイトーヨーカドーに140人も集まらなかったと思うんですけど、やっぱり僕はですね、アイコさんの本をRYUTistのともちぃが読んだあの日がターニングポイントだったのではないかと思っていまして。
成宮  ハハハ!
ちひろ それで、新潟が好きになったのがあったのかなって、ずっと聞きたかったんですけど。
成宮  もともと、一番最初のRYUTistが結成された時から、古町では見てて。最初の衣装がめちゃくちゃ好みだったんですよ。
ちひろ 古町どんどんとかかな。
成宮  そうそう。あの、白と赤と青みたいな、あれがすごい好きで、めちゃくちゃ可愛くて。
ちひろ 5人いた時代。
成宮  でも、新潟はやっぱり全然好きな場所じゃなかったから、誰が行ってもいいライブなのに、自分なんかがライブに行っていいわけないって意識がすごい大きくて。
ちひろ そんな重い気持ちがあったんですか。
成宮  どこに行っても自分はここにいてはいけないみたいなのが邪魔してくるから、どこにも行けなかった。だから、ずっと知ってたけど、ずっとYouTubeで見るだけだった。
ちひろ そうだったんですね。じゃあ、一方的に好きではいたんだね。
成宮  そうそう。最初、むうたんの顔ファンで入って。可愛い。
ちひろ はいはい。むうたん可愛い。コメントで「ありがともちぃ」って来てる。
成宮  わー!
ちひろ あと、「お正月にRYUTistのTwitterでアイコさんとの写真がアップされたのが印象に残っています」って。これね、僕が言ったんですよ、安部さんに「アイコさん来てますよ!」って。
成宮  フフフ…
ちひろ そうしたら、安部さんが「じゃあ写真撮りましょう」って、アイコさんが「えっ、私ダメですよ」みたいになったんだけど、「いいですよ」って言って、安部さんが撮ったんですよ。
成宮  あのあと、号泣しながら帰った。
ちひろ 号泣しながら、お正月のRYUTistの餅つきをずっと見ているアイコさんっていうね。
成宮  ハハハ!
ちひろ コメントで「アイドルの力とパワーと尊さがすごい」って。あ、よしこさんから質問きてますね。「アイコちゃんにずっと聞きたくて、でもメンタルにきそうで聞けなかったことを」って。
成宮  何?
ちひろ 聞いていいのかな、センシティブな内容なんですけど、ひかりちゃんって出てくるじゃないですか、アイコさんの記事に。亡くなってしまったお友達の。Tangoさんがよしこさんに会った時に、「ひかりちゃんに似てるね」って言ったっていう。
成宮  ああ、髪の長さかな。髪型かな。黒髪ロングの人だから。
ちひろ すごく言われたっていう。
成宮  酔ってたでしょ、Tango。
ちひろ Tangoさんは、最初僕が会場まで送るよって言ったんですよ。でも歩いていくって言って、なんでかなって思ったら、歩きながら缶酎ハイを2本飲んできたんですよ。
成宮  フフフ…もう想像つくもん。
ちひろ 本番中はアルコール度数40%くらいあるズブロッカをずっと飲んでたんですよ。
成宮  よく水筒にそれを入れて一緒に出掛けました。
ちひろ アイコちゃんの詩で、「夜の公園でなんでもないような話をすることをエモいとすら思わなかった頃の自分のことは忘れた」ってのに出てくる、水筒に入ったお酒ってのは、Tangoさんなんですね。
成宮  そうそう。
ちひろ なるほど。いい話が聞けました。
成宮  そこに書いてあるのは、全部景色が浮かぶ実話しかない。
ちひろ そうなんですね。
成宮  北書店の時も、全部撮影をしてもらってて。
ちひろ そうだよね。北書店とイトーヨーカドーの、あの日の2日くらい前が、Tangoさんとトークした日だったんです。
成宮  北書店はもうなんか、気持ちのギャップがありすぎて、あんまり丁寧に読めないくらいになってた。大爆発みたいな感じで。内藤さんがあんなに声を必死に出して、裏返っちゃうくらいの内藤さんって初めて見たかも知れないと思うくらいだった。だから、周りの人の気持ちも余計入っちゃって、丁寧に読めないくらいになってた。イトーヨーカドーとは正反対。
ちひろ あ、ちょっとだけ延長しましょう。僕が最初15分くらいバタついちゃったので。
成宮  ちひろくんが用意していた残りの質問ありますか?
ちひろ そうですね。新潟にまだアイコちゃんが住んでいた時あったじゃないですか。僕が会ったのが2012年で、アイコちゃんが引っ越したのが2014年なんですよ。当時、アイコちゃんが駅前かどこかで働いてて、僕が駅前で就活をしていた時があって、その就活のあとに休憩してたら、アイコちゃんが仕事の休み時間を抜けて、やってきたんですよ。そこで、謎の付箋を持ってきたのが出てきたんですよ、探したら。それが、こういう絵なんですけど。「四コマーズ」「いってらっしゃーい」って書いてあるんですよ。



成宮  ハハハ!そういう漫画を描く人がいて、その時に仲良かったギャルの子と一緒に描いてた。関係ない落書きです。
ちひろ ギャルの子なんですね。アイコちゃんのギャルが好きって話がちょっと気になってて。ロフトプラスワンに出入りするようなサブカルが好きな子とギャルって、一見別に見えるけど、でも、アイコちゃんは結構ギャルが好きじゃないですか。
成宮  ギャルが好き。
ちひろ 自分もギャルになりたいとも言うし。でも、ギャルになろうとして蛭子さんの漫画を売ったけど、結局買い戻したり。その話が俺、めちゃくちゃ好きで。本当に好きなんですよ。
成宮  ハハハ!最終的には蛭子さんのサイン会で似顔絵を描いてもらったけれど、髪型すら合ってなかったっていう。
ちひろ 一つも似てないっていうね。似てないとこまで含めて蛭子さん最高って感じなんですけど。あ、蛭子さんの話は「正面で待ってる」って詩に載ってるんだな。
成宮  そうそう。
ちひろ ギャルが好きなのは、ギャルの友達がいたとか、そういう感じなの?
成宮  ギャルの子はいつも優しかった。普通に話しかけてくれてた。しゃべり方についても特に何も言われなかったし。
ちひろ いますよね、そういう、いいギャルっていうか何ていうか。人に対する偏見がないのかな、アイコちゃんと仲良かったギャルの子は。
成宮  なんか、それぞれの人同士でいる感じがすごくあったというか。私のしたかった、点と点でいられる感じがある。
ちひろ コメントで、「ギャルはコミュニケーションが洗練されてる」って。
成宮  ハハハ!
ちひろ 人によるのかな。やっぱり学生時代とかってさ、仲良しグループ感があるじゃないですか、クラスに。ヒエラルキーみたいなのがあったりとか。ギャルは、それを超越してる感じがするんだよね。
成宮  フフフ…
ちひろ 超越してる存在が2ついて、ギャルか、俺とかみたいな人。変な奴かギャルってちょっと浮いてるじゃないですか。
成宮  人の好きなものとかに何も言ってこなかったから、ちょうどいい。
ちひろ なんか、「下妻物語」みたいでいいですね。
成宮  ハハハ…
ちひろ ちょっと変な奴同士で仲いいみたいな。
成宮  高校の終わりくらいから色々作り始めて、Tangoと新潟で展示とかをずっとしていたんだけど、その時も学校とかでもずっと書いてて。
ちひろ コメントで、「陽キャと陰キャみたいな」って。あれかな、最初のプリキュアかな。
成宮  あ、「ギャルは学校と家以外の場所を知ってるのが強み」って本当そう。でも、当時は自分のことだけを書いていたかもしれない。それこそTangoとずっと作ってた時とか。
ちひろ あの、冊子みたいなやつを作ってた時。
成宮  うん。展示とかも一緒にやってて。その時はそれぞれ自分達だけのことだけしか書いてなかったかもしれない。
ちひろ Tangoさんが甘海老って名前だった時代の話。
成宮  そうそう。その頃の話とかって全然したことがないかもしれない。
ちひろ あんまり聞かないよね。
成宮  一番学校に行かなかったりしてた時だったから。
ちひろ 俺が学校に行かなくなったのが大学生の時なんですけど、大学行かない代わりにブログ書き始めたりとか、お芝居を始めたりとかしてたんですよ。で、何で俺、学校行かないでこんなことやってんだって思ったんだけど、今の自分に繋がってるのが、寧ろその学校に行かないでやってたことだったりするから、何がその先に繋がるかって分からないから。それがアイコちゃんの場合は学校に行かないでTangoさんと会ってた時間とかだったのかなって感じがしました。
成宮  当時はサイトとかで日記を書くくらいで、SNSもmixiがあったかなくらいの時だったから、人とやり取りをするとか、独白を書く場所っていうのも特になくて。大体の書いてあることを全部説明できる人かもしれない。一番知っている人。何があってどうだったか。
ちひろ これ、色々収束したら、2人呼びたいですね。2人同時ゲストみたいな。
成宮  フフフ…
ちひろ Tangoさんが当時作ってた冊子を見た時に、あ、俺が作りたいのこういうのだって思って。去年初めてちゃんと話したんですよ。新潟絵屋で写真展をやってて、それがTangoさんの亡くなったお友達の、Tangoさんなりの追悼というか。
成宮  会ったことある。
ちひろ それを、ギャラリートークでお話してて。昔はこういうの一緒に作ってたんですよって言って、甘海老通信っていうのを見せてくれて。で、亡くなった人の話なんだけど、俺はこういう本が作りたいって、あの時思ったんですよね。だから、ちょっと羨ましかったですね、新潟でずっと会ってたアイコちゃんが。
成宮  ハハハ!本当それしかなかったから、その時は。だから今よりちゃんと言葉に執着があったかもしれない。
ちひろ そっかそっか。アイコちゃん言うもんね、言葉に対してすごく執着がある一方で、言葉を否定するけれど、言葉を使うしかないみたいな。
成宮  会話ができない分、自分が考えたこととかを、頭がドッジボール状態だから、順序良く人に使えるためには、会話はちょっとそぐわないことが多い、私にとって。
ちひろ なるほど。
成宮  すごい散らばってるから、人に伝えるためには、一回ちょっとまとめ直さないといけないから。だから、パンの話はいいけど、自分が今感じてることとか考えてることを会話でやるとか、今日どんな日だったって言われて説明するのに、会話はちょっとそぐわない。
ちひろ すごい思うんですけど、例えばTwitterでの議論とかって、今何か事件が起きました、そこで「こうあるべきだ」って言葉を誰かがバンとぶつけると、「いやそれはおかしい」ってバンと言葉が返ってきて、リアルタイムで繰り広げられる、アイコちゃんは言葉のドッジボールが頭の中で起こるって言ってたけど、それがTwitterの中で起こってるって感じがするわけ。
成宮  うん。
ちひろ 議論になればいいんだけど、結局喧嘩になりがちだなって思うんですよ。でも、一旦言葉を吐き出す前に自分の中で順序立てて消化して、それをアイコちゃんの場合は詩だったり、コラムだったりって形で世の中に出すっていうのは、いいことだなって思ってて。言葉をぶつけるんじゃなくて、本を書いて一冊ポンと置いておくみたいな。本とまではいかなくても、チラシを書いてそこに貼っとくのかもしれないけど。そういう感じがして、いいことだなって思ったんですね。みんながそれぞれ同じことをやるんじゃなくて、それぞれのみんなのプラカード代わりの言葉を書きたいみたいなことを、アイコちゃんが言ってるのが、これだなって思って。全員がプラカードをわーっと掲げるんじゃなくて、それぞれの考えていることとかをそのままぶつけるんじゃなくて、一回アイコちゃんの仲で消化しないといけないというか、順序立ててもう一回考え直して、吐き出すっていう。多分それはアイコちゃんが、会話が苦手だからやってることだと思うんだけど、それが結果的に、芸術とまで言うのか分からないけど、アーティストが作品を作るってことになってると思うんだよね。
成宮  「プラカード代わりの言葉を送ろう」っていうのは、私が書いたものから私を引きはがしていきたいっていうのにも通じていて、あまり「自分が」っていうのとか、メンタルヘルスのことを前面に出さなくなったのも。
ちひろ そうだね。そのこと聞こうと思ってたんだ。
成宮  私は実際デモとかに行くけど、それについてのことをあんまり話題に細かく書かないっていうのは、メンタルのことも政治のことも、そこに興味がない人が見ても、私の何でもないパンとかの雑談の中に一行ニュアンスが入っているのを気付かずに読んでいても、はっきりした言葉、分かりやすい一行のプラカードに書けるようなキャッチコピーに伝えなくても、雑談の中で刷り込んでいくぞみたいな気持ちはあって。
ちひろ なるほど。
成宮  だから、瞬発的にすぐ言わないと、何もそのことについて発言しないままなの?って言う人もいるけど、気付かないうちにあなたも読んでるからね、含ませているからねって思いながらいる。
ちひろ なんかね、同じことを最近亡くなった大林監督が言っててね。芸術家はプラカードを掲げるべきじゃないって言うのね、大林監督は。
成宮  ふうーん。
ちひろ プラカードを掲げるのは、例えば今の政治に対して「何とか反対!」っていう、ただそれだけなんだけど、芸術家が作る作品っていうのは100年先の未来にまで残っていくものだから、今ある何かに向かってプラカードを掲げるんじゃなくて、そういうのを見越して作品を作らなきゃいけないよって言ってて。
成宮  うん。
ちひろ アイコちゃんの朗読を長年色々聞いてると、初期の頃はそれこそ、その年に起きた事件のことをその年のうちに詩に盛り込んじゃったりとかしてるなって思ったんだけど、もっと普遍的な、それこそ生きづらさの問題とか精神疾患のこととか、そういうのだけじゃなくて、もっと超越した、人が生きることとか、人が考えることとか、そういうことを表現してるから、芸術って何かって話までしてると長くなっちゃうんだけど、普遍的な芸術作品を作るっていうところに、だんだん近づいていってる人だなって思うんですよね。これは僕の自論なんですけど。
成宮  興味がなかったりしている人のところでも、じわじわと意識の中に埋め込んでいけるようにしていて、コラムとかでも、ツイートでもそうだけど。何でもないことの中でも、ずっと読んでるうちに、差別してはいけないのだという当たり前のことは、じわじわ伝わっていくはずだと信じてて。
ちひろ なるほど。
成宮  ただ、プラカード代わりの、気付いてないかもしれないけど、このツイートも全部、そういうことが入っているんだよって思って書いてる。
ちひろ 言ってますもんね、結構作風は変わっていくけど、こういうことが伝えたいんだよって部分だけはずっとぶれないでやってるなっていうのは。あと、アイコちゃんの本を読み返してたら、結構自分が影響受けてるなって思う部分があって。最初、アイコちゃんが生きづらさ系のイベントとかで活動することが多くて、そういうのをテーマにした詩とかも読んでたじゃないですか。自分の体験談だったり。
成宮  うん。
ちひろ だけど、ちょっとずつ、例えば障害者に向けてのアピールとか、そういうことじゃなくなってきた感じがしたのね。もっと広く色んな人に読んでもらうみたいな。その結果、アイドルのコラムとかも書くようになったりとか。障害者の活動だけしてたら、tipToe.の椋本さんにRTされることとかなかったと思うんですけど。ともちぃが読むこともなかったと思うんですけど。
成宮  フフフ…うん。
ちひろ で、僕自身も同じことを結構感じてて。病気の人のイベントとか、生きづらさ系のイベントとかにすると、毎回病気の人が来たりとか、もともとそういう問題に関心がある人とかが集まってくるから、結局同じ感じになっちゃって。なおかつ、ちょっと言いにくいんだけど、説明が難しいんだけど、ちょっと共依存みたいになっちゃうのかなって思ってて。それが良くないなって思ってて、よしこさんも「病気イベントにはしたくなかった」って言ってるんですけど。だから、病気だからどうこう、生きづらいからどうこうとかじゃなくて、どういう人が生きてても、それをトークすることで面白いイベントにしていきたいなっていうのが、僕がこのイベントを始めた根本にあって。それがわりと、アイコちゃんの活動の変遷に、自分も影響受けてこういう風に変わってきたのかなって思ったんですよね。あと、アイコちゃんがだんだん新潟のことをそんなに憎まなくなっていってるなって感じてたら、自分もあんまり新潟のことを嫌いにならなくなっていったし、結構影響を受けていて。
成宮  水面だ、水面。
ちひろ 「世界は水面だ」っていう、あれですね。あと、僕が度々言うんですけどね、成宮アイコはリスペクトしているけど、ある意味ライバルだっていう。
成宮  ハハハ…
ちひろ あ、俺が何もできてないのに、こいつ二冊目を出しやがった!っていうのは、常々感じております。
成宮  私、人に対してそういう感情が欠落しているんだよね。
ちひろ ああ、誰かをライバル視しないってこと?
成宮  それも、自分に対してお金が使えないってこととすごく似ていて。例えば(ニンテンドー)スイッチ買う時も、ものすごい悩んで何回も手に取ったけど、やっぱり私なんかが買っちゃダメみたいになって。最終的に家族に言って、「私が今日買わなそうだったら、
どうしても買わせてくれ」って言って。
ちひろ ハハハ!
成宮  それでも、本体と交換しますの紙を持っていけなくて、やっぱやめるわーみたいな感じになって。自分に対してお金を使うとか、自分に何かしてあげるっていうのが、全然できなくて。他人よりも自分が、同じところで生きている人間ではないっていう気持ちがどうしてもあって。人に対してそういう気持ちがまったくわかないんだよね。だから、じゃんけんするとかすら嫌なくらいのレベル。フフフ…!
ちひろ そっかそっか。いや、僕もあんまりないんですけど、そういう感情。結構、他人と自分の比較に対して無頓着なところがあるんですけど、数少ない一人が成宮アイコだと思っていただければ。
成宮  フフフ…本当、じゃんけんとかもダメで。
ちひろ 勝負事がダメってこと?
成宮  発想が嫌なのかもしれない。だから、自分の作ったパラレルワールドがないと、とでもじゃないけど生きていかれない。
ちひろ アイコちゃんのパラレルワールドには、どういう人達がいるんですか?
成宮  ぬいぐるみ達。
ちひろ 僕のパラレルワールドはしゃべる犬と猫がいっぱいいますよ。
成宮  なんか、そういう話だけがいい。本当にすごい苦手なんだよね。何でなんだろう、昔からそうで、具合悪くなっちゃう。
ちひろ コメント読みましょうか。
成宮  「自分への後ろめたさ」本当に。自分なんかダメで当たり前みたいな。だから私が、他の人が持ってるものをいいなって思うことすらしてはいけないのだという感じがある。
ちひろ 「袋菓子を一人で食べる罪悪感」って感じ?
成宮  ハハハ!それ分かる。だから、普段やってる雑談ツイキャスも、最初500円までお菓子を買っていいことにしてたけど、自分に500円も使うことができなくて。フフフ…
ちひろ いいんですよ。
成宮  なんか、私なんかが500円もお菓子買っちゃダメだ自分のためにと思って。
ちひろ ベルクでうまいコーヒー飲んでいいんですよ。
成宮  ハハハ!
ちひろ コメントで、「家族に食事を作るのに、私みたいな奴がこのご飯を食べていいのかな、私みたいな奴が食事してもいいんだろうかって毎日なってしまって、コンビニに行って迷子になっちゃう」らしいですよ、よしこさんは。
成宮  本当に、おにぎりとか買っていいのかなみたいな。お母さんごめんなさいみたいになっちゃう。
ちひろ でも、お母さんごめんなさいって思っててもですね、アイコちゃんのお母さんは「イエーイ!ロックンロールだぜ!」って言って励ましてくれると思いますよ。
成宮  ハハハ!
ちひろ アイコちゃんのお母さん、俺が猫の絵を描いてツイートしたら、「イエーイ!ロックンロールだぜ!愛し合ってるかい?」ってコメントしてきたよ。
成宮  清志郎が好きだから。あ、コメントで「アイコさんとTangoさんコラボしてね」って。Tangoとコラボしたいです。これは本当にしたいです。
ちひろ Tangoさんに言っといてください。アイコさんがRYUTistを見てともちぃ!ってなってる頃に、Tangoさんは家の帰り道で車の中で楽器を持たないパンクバンドのBiSHの話を聞いて、バカにしてやろうと思って調べたらそのままハマってしまったらしいです。
成宮  そうそう。
ちひろ そんな感じで、結構長い付き合いなんですけど、ちゃんとインタビューしたのが初めてなので、ちゃんと話せてたのか分からないですけど、ありがとうございました。
成宮  ありがとうございました。
ちひろ 今回こういう形で出てくれてありがとうございました。
成宮  バイバーイ。
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