
1/8(土)、クロスパル新潟で開催された、活弁公演「ジャムの月世界活弁旅行」を観てきました。
活弁とは、映画がまだ活動写真と呼ばれていた時代に、まだ音がなかった今でいうサイレント映画に、スクリーンの横で活動写真弁士と呼ばれる人達がその場で台詞を入れ、音楽も生演奏だったという文化のこと。
そんな活弁を、活弁士の大森くみこさんと、女優の辻凪子さんが行うというのが、今回の「ジャムの月世界活弁旅行」。
僕は活弁を見たこともなく、せいぜい周防正行監督の「カツベン」を観た程度の知識しかなかったので、活弁が見られるチャンスがすごく楽しみだったし、あと個人的に辻凪子さんが好きなので、そういう意味でもすごく楽しみでした。
で、実際に観に行ったわけですが、4作品上映した中の3作品は100年も前のサイレント映画だったのですが、そんな昔の映画を心から笑って楽しめる日が来るとは思わなかったし、そんな映画の面白さを、言葉とアイディアと音楽の力によってさらに面白くする活弁の素晴らしさにめちゃくちゃ感動しました。
大森くみこさんも、辻凪子さんも、本当に面白くて引き込まれたし、そして映画にその場で音楽をつけていく雨宮遥さんのピアノも本当に凄かったですね。
というわけで、上映した映画それぞれの感想を書いていきます。
最初が「迷惑帽子」という1909年のアメリカ映画。
これは、映画館の客席に大きくて邪魔な帽子を被った人がやってくるというドタバタを描いただけの3分の短編なんだけど、それだけなのに大森くみこさんの活弁の力でめちゃくちゃ笑えるコメディになっていました。
しかもこれ、映画館のマナーを注意するために作られた映画なので、今で言う「映画泥棒」みたいな映画だと思うんですよね。
そんな映画を110年も前の人も作っていて、そういう文化が現代にまで繋がっているのかと思うと、そこに映画の歴史を感じて感動しました。
次が有名な「月世界旅行」という、1902年のフランスの映画。
120年も前の、CGもない時代のアナログ特撮というまさに映画史に残る傑作なのですが、科学が発展する前の月や宇宙がまだファンタジーの世界だった時代に描かれた月世界旅行という意味で、今見るとかなりツッコミどころ満載だったりもするわけです。
で、辻凪子さんの軽快な関西弁によるユーモラスな活弁が、そんな映画の素晴らしさもツッコミどころも、両方とも笑いに変えていくのがめちゃくちゃ面白かったです。
さらに、活弁の中に、実はマジシャンでもある監督が隊長の役で出演しているという解説までしてしまうという活弁の可能性の大きさを感じ、それで昔の映画への理解も深まり、面白さを身近に感じられました。
その次の辻凪子&阪本裕吾監督の「ぱん。」で、これは2017年のMOOSIC LABで上映された映画。
僕はこの映画を当時見ていて、当時も大好きだったし、何より僕が辻凪子さんを好きになった思い入れのある映画でもあります。
で、そんな映画を活弁で見てみると、あらためてギャグもアクションも満載なぶっ飛び映画にもほどがある!と思って爆笑したし、MOOSIC LABだから途中で歌が登場するのも、辻凪子さんと大森くみこさんのダブル活弁と雨宮遥さんのピアノによってライブみたいに盛り上がっていました。
そして、細かい説明よりも、ツッコミどころをぶっ飛ばすほどの映画を作る楽しさと熱量に溢れていて、それこそサイレント映画みたいな古き良き映画の面白さを現代に伝えた名作だなとあらためて思いました。
最後が「キートンの探偵学入門」という、1924年のアメリカ映画。
世界三大喜劇王の一人と呼ばれるバスター・キートンの映画は初めて見ましたが、100年も前にジャン=ポール・ベルモンドやジャッキー・チェンの元祖みたいな体を張ったアクションコメディを、もちろんCGもない時代にここまで面白く、それこそ100年後の人が爆笑できるようなクオリティで作っていた人がいたのか!凄すぎる!と心の底から感動し、本当に何から何まで最高でした。
もちろん、ギャグもアクションもテンポよく進んでいく映画の面白さを軽快に伝える大森くみこさんの活弁の素晴らしさはもちろん、途中で会場のクロスパル新潟のチャイムが鳴ってしまうというアクシデントすらもアドリブで笑いに変えていて本当に凄いと思いました。
また、先程の「月世界旅行」の約20年後の映画という大森くみこさんの解説を踏まえて見ると、その分、映画のアクションやカメラワーク、カット割りなどが進化しているのも感じられるという、映画の歴史を実感することもできました。
アフタートークでは、NGT48の佐藤海里さんがゲストで登場。
登場時は、雨宮遥さんがNGT48の「ポンコツな君が好きだ」をピアノで演奏してくれるというサプライズもあったのですが、これは直前に雨宮さんが曲を聞いて譜面に起こしたということで、凄すぎる!
佐藤海里さんは、「浦島太郎」の1分間のサイレントアニメ映画の活弁に初挑戦したのですが、初挑戦とは思えないくらい表現力があり、ちゃんと面白くなっていたのですが、佐藤海里さんはNGT48として落語にも挑戦しているとのことで、その経験が活かされたとのこと。
また、佐藤海里さんは鉄道が好きということで、「今後は活弁の経験を活かして、電車に台詞を付ける動画を作りたい」というまさかの新たな可能性!
そんな感じで、最初から最後までめちゃくちゃ楽しくて、ますます映画が好きになれるという、本当に幸せな時間でした!本当に見に行けて良かった!
そして、辻凪子さんは現在、活弁映画「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」を制作中とのことで、完成したら大森くみこさんと一緒にシネ・ウインドでも上映したいとのこと。
新作活弁、見られるのが本当に楽しみだし、是非またお会いしたいので、新潟にまた来ていただけるのを待っています!
というわけで、新春から心の底から笑って幸せになれる時間をありがとうございました!