書き残していた映画の感想を書いていきます。

3/20(火)に、ユナイテッドシネマ新潟で『blank13』を観て来ました。
新潟ではユナイテッドシネマ新潟南だけで上映されていました。

チラシがもう一パターンあるんですね。
第20回上海国際映画祭のアジア新人賞部門で最優秀監督賞を受賞するくらいの話題作らしいです。
予告編はこんな感じです。
この映画『blank13』は、俳優の斎藤工さんが監督をしている映画です。
正直、一番最初にこの映画を知った時は、「えっ!?あの斎藤工さんが映画監督!?」っていうのに驚きました。
この映画がきっかけで知ったんですが、斎藤工さん、過去にも映画監督をやっているんですね。(映画監督の時の名義は「齊藤工」)
いや、俳優さんやタレントさんが映画監督に挑戦することって時々ありますけど、北野武さんなんかは別格としても、正直あんまり大きな声では言えないけど、話題性はあるものの内容の面白さが伴っていないような映画が作られてしまうことが、実際多いと思うんですよ。(特に例は挙げないけど!)
だから、今回のこの「blank13」も、俳優の斎藤工さんが監督に挑戦っていう話題性だけで終わらないといいなあ…
その一方で、斎藤工さんは例えばカメラマンとしてもKinKi KidsのCDジャケットを撮影するなど話題性だけでなく実際に活躍してもいるので、そんな斎藤工さんならもしかしたらやってくれるかも知れない…
そんな、不安と期待が入り混じった気持ちで、また、斎藤工さんが監督ということ以外、前情報ゼロで観に行ったんですが…
実際に観ての感想、率直に言ってしまいますが、斎藤工さんが監督とかそういう前提を抜きにしても、普通に一本の映画として面白かったです!
どんな映画かと言うと、借金まみれの父に振り回された母とその二人の息子の回想シーンと、その父が亡くなった葬儀のシーンを、交互に描いています。
回想シーンでは、二人の息子の幼少期から大人になるまでを丁寧に描き、一方、現代の父の葬儀のシーンはシリアスでありながらどこかコントのようにコミカルに描いていたのが特徴的だと思いました。
回想シーンに登場する、リリー・フランキーさん演じる父が、仕事もせずにギャンブルばかりしているという、一言で言ってしまえば非常にだらしない人物として描かれています。
家族の生活は非常に貧しく、狭いアパートで安い食事をしていると、そんな束の間の一家団欒の時間にも借金取りがドアを激しく叩いてきたりと、幸せとは程遠い生活を送っています。
しかも、そんな父が借金を残したまま行方不明となり、父の代わりに母と二人の息子で新聞配達をやって生活費を稼がざるを得ない状況になったり、仕事中に母が交通事故に遭ったりと、とにかく、父に振り回されっぱなしの一家。
13年ぶりに発見された時、父は余命幾許もない状態であり、母と長男は見舞いを拒否したために、主人公である高橋一生さん演じる次男のみが父に会うのですが、最初は幼少期に父とキャッチボールをした優しい父の面影を忘れられずにいた彼も、13年ぶりに再会した直後に金を無心するような父に出会ったことで完全に愛想を尽かしてしまいます。
そんな、家族の温かい絆とは程遠い親子関係しか築けなかったまま、父が亡くなり、二人の息子は葬式を行うことになるのですが、生前まともな職に就かずギャンブルに明け暮れていた父なだけあって、まともな弔問客はおらず、非常に小規模な葬儀が行われることに。(隣の会場で行われているどこかの社長みたいな人の葬儀と非常に対照的)
それでも、家族の前から父が姿を消していた13年間で父とかかわりがあったであろう様々な弔問客が何人かやってくるのですが、麻雀仲間や行きつけのスナックの店員など、何とも個性的な(言葉は悪いが父と同じような世の中の底辺という言葉が似合うような)人ばかりなのです。
そんな個性の強い弔問客ばかりが訪れる葬儀は変な空気になり、その中で佐藤二郎さん演じる男性が「じゃあみんなで彼の良かったところを一言ずつ言っていきましょうか」と突然仕切り出すことで流れる変な空気は、本当にシリアスさを逆手に取ったコントのようでした。
しかし、そこに集まった怪しい人々から口々に語られる父の思い出の一つ一つは、確かに笑い話にもならないようなものばかりなのですが、順番に聞いていくと、亡くなった父は確かに父親としては失格だったかも知れないが、決して誰からも愛されなかった人間ではなく、彼を必要としてくれている人が少ないかも知れないが確かにこの世界にはいたのだ、という証明のようにも思えてきて、言葉にできない謎の感動があるのです。
「blank13」というタイトルの通り、父が失踪していた13年間の記憶のブランクを埋めるような弔問客の言葉を聞いた主人公が、決して大嫌いだった父を許せるわけではないものの、少しずつ父に対する気持ちが変わり、受け入れようとしていく姿にぐっときました。
また、父が生前ずっと吸っていたタバコ、父の死後ほとんど言葉を発しない母役の神野三鈴さん、笹川美和さんが歌うエンディング「家族の風景」(ハナレグミのカバー)による印象的なラストシーンも、台詞を使わずに、言葉にならない気持ちを上手く表現していて、映画を観終わったあとも深い余韻を残すものになっていました。
そんな訳で、この映画、斎藤工さんが監督という前提を忘れてしまうくらい、一本の映画として普通に面白いんですよね。
敢えて言うなら、斎藤工さんという方は、もともと役者として魅力的なだけでなく、「映画」というものに対する強いリスペクトと愛を持っているんだなあということを感じました。
そもそもこの映画、主人公である次男が高橋一生さん、その兄を監督でもある斎藤工さん、主人公の彼女を松岡茉優さん、父をリリー・フランキーさん、母を神野三鈴さんが演じているという、実はかなり豪華キャストな映画なんですよね。
他にも、葬儀の弔問客に、佐藤二朗さん、伊藤沙莉さん、川瀬陽太さんなどの名脇役な俳優さんたちをはじめ、お笑い芸人やミュージシャンなど本当に様々な方面で活躍している面白い顔ぶれが大集合しているのです。
まあ、これだけのキャストを集められるあたりからも、齊藤工さんが本当に同業者たちからも愛されていること、信用されていることがうかがえるなあと思います。
そもそも、世の中には(おそらく金の力で)人気俳優ばかりをとにかく集めたようなキャスティングだけが豪華で中身の面白さが伴っていないような映画も少なくない中、この映画は役者が信用で集まっているような感じがしたし、さらにしっかり「映画として面白い」と思える内容になっていたのが良かったですね。
この映画の特徴として、上映時間が70分といかにも自主映画って感じの短さなんですけれど、短い中に面白さが詰まっていたので物足りなさは感じなかったし、自分の出来る範囲で最大限の面白さを表現した監督の齊藤工さんに好感も持ちました。
何度も言いますけど、斎藤工さんが監督というのを知らずに観ても普通に面白かったと思うし、低予算だろうが自主制作だろうが映画への愛に溢れた齊藤工監督作品を今後も観てみたいなと思いました。

3/20(火)に、ユナイテッドシネマ新潟で『blank13』を観て来ました。
新潟ではユナイテッドシネマ新潟南だけで上映されていました。

チラシがもう一パターンあるんですね。
第20回上海国際映画祭のアジア新人賞部門で最優秀監督賞を受賞するくらいの話題作らしいです。
予告編はこんな感じです。
この映画『blank13』は、俳優の斎藤工さんが監督をしている映画です。
正直、一番最初にこの映画を知った時は、「えっ!?あの斎藤工さんが映画監督!?」っていうのに驚きました。
この映画がきっかけで知ったんですが、斎藤工さん、過去にも映画監督をやっているんですね。(映画監督の時の名義は「齊藤工」)
いや、俳優さんやタレントさんが映画監督に挑戦することって時々ありますけど、北野武さんなんかは別格としても、正直あんまり大きな声では言えないけど、話題性はあるものの内容の面白さが伴っていないような映画が作られてしまうことが、実際多いと思うんですよ。(特に例は挙げないけど!)
だから、今回のこの「blank13」も、俳優の斎藤工さんが監督に挑戦っていう話題性だけで終わらないといいなあ…
その一方で、斎藤工さんは例えばカメラマンとしてもKinKi KidsのCDジャケットを撮影するなど話題性だけでなく実際に活躍してもいるので、そんな斎藤工さんならもしかしたらやってくれるかも知れない…
そんな、不安と期待が入り混じった気持ちで、また、斎藤工さんが監督ということ以外、前情報ゼロで観に行ったんですが…
実際に観ての感想、率直に言ってしまいますが、斎藤工さんが監督とかそういう前提を抜きにしても、普通に一本の映画として面白かったです!
どんな映画かと言うと、借金まみれの父に振り回された母とその二人の息子の回想シーンと、その父が亡くなった葬儀のシーンを、交互に描いています。
回想シーンでは、二人の息子の幼少期から大人になるまでを丁寧に描き、一方、現代の父の葬儀のシーンはシリアスでありながらどこかコントのようにコミカルに描いていたのが特徴的だと思いました。
回想シーンに登場する、リリー・フランキーさん演じる父が、仕事もせずにギャンブルばかりしているという、一言で言ってしまえば非常にだらしない人物として描かれています。
家族の生活は非常に貧しく、狭いアパートで安い食事をしていると、そんな束の間の一家団欒の時間にも借金取りがドアを激しく叩いてきたりと、幸せとは程遠い生活を送っています。
しかも、そんな父が借金を残したまま行方不明となり、父の代わりに母と二人の息子で新聞配達をやって生活費を稼がざるを得ない状況になったり、仕事中に母が交通事故に遭ったりと、とにかく、父に振り回されっぱなしの一家。
13年ぶりに発見された時、父は余命幾許もない状態であり、母と長男は見舞いを拒否したために、主人公である高橋一生さん演じる次男のみが父に会うのですが、最初は幼少期に父とキャッチボールをした優しい父の面影を忘れられずにいた彼も、13年ぶりに再会した直後に金を無心するような父に出会ったことで完全に愛想を尽かしてしまいます。
そんな、家族の温かい絆とは程遠い親子関係しか築けなかったまま、父が亡くなり、二人の息子は葬式を行うことになるのですが、生前まともな職に就かずギャンブルに明け暮れていた父なだけあって、まともな弔問客はおらず、非常に小規模な葬儀が行われることに。(隣の会場で行われているどこかの社長みたいな人の葬儀と非常に対照的)
それでも、家族の前から父が姿を消していた13年間で父とかかわりがあったであろう様々な弔問客が何人かやってくるのですが、麻雀仲間や行きつけのスナックの店員など、何とも個性的な(言葉は悪いが父と同じような世の中の底辺という言葉が似合うような)人ばかりなのです。
そんな個性の強い弔問客ばかりが訪れる葬儀は変な空気になり、その中で佐藤二郎さん演じる男性が「じゃあみんなで彼の良かったところを一言ずつ言っていきましょうか」と突然仕切り出すことで流れる変な空気は、本当にシリアスさを逆手に取ったコントのようでした。
しかし、そこに集まった怪しい人々から口々に語られる父の思い出の一つ一つは、確かに笑い話にもならないようなものばかりなのですが、順番に聞いていくと、亡くなった父は確かに父親としては失格だったかも知れないが、決して誰からも愛されなかった人間ではなく、彼を必要としてくれている人が少ないかも知れないが確かにこの世界にはいたのだ、という証明のようにも思えてきて、言葉にできない謎の感動があるのです。
「blank13」というタイトルの通り、父が失踪していた13年間の記憶のブランクを埋めるような弔問客の言葉を聞いた主人公が、決して大嫌いだった父を許せるわけではないものの、少しずつ父に対する気持ちが変わり、受け入れようとしていく姿にぐっときました。
また、父が生前ずっと吸っていたタバコ、父の死後ほとんど言葉を発しない母役の神野三鈴さん、笹川美和さんが歌うエンディング「家族の風景」(ハナレグミのカバー)による印象的なラストシーンも、台詞を使わずに、言葉にならない気持ちを上手く表現していて、映画を観終わったあとも深い余韻を残すものになっていました。
そんな訳で、この映画、斎藤工さんが監督という前提を忘れてしまうくらい、一本の映画として普通に面白いんですよね。
敢えて言うなら、斎藤工さんという方は、もともと役者として魅力的なだけでなく、「映画」というものに対する強いリスペクトと愛を持っているんだなあということを感じました。
そもそもこの映画、主人公である次男が高橋一生さん、その兄を監督でもある斎藤工さん、主人公の彼女を松岡茉優さん、父をリリー・フランキーさん、母を神野三鈴さんが演じているという、実はかなり豪華キャストな映画なんですよね。
他にも、葬儀の弔問客に、佐藤二朗さん、伊藤沙莉さん、川瀬陽太さんなどの名脇役な俳優さんたちをはじめ、お笑い芸人やミュージシャンなど本当に様々な方面で活躍している面白い顔ぶれが大集合しているのです。
まあ、これだけのキャストを集められるあたりからも、齊藤工さんが本当に同業者たちからも愛されていること、信用されていることがうかがえるなあと思います。
そもそも、世の中には(おそらく金の力で)人気俳優ばかりをとにかく集めたようなキャスティングだけが豪華で中身の面白さが伴っていないような映画も少なくない中、この映画は役者が信用で集まっているような感じがしたし、さらにしっかり「映画として面白い」と思える内容になっていたのが良かったですね。
この映画の特徴として、上映時間が70分といかにも自主映画って感じの短さなんですけれど、短い中に面白さが詰まっていたので物足りなさは感じなかったし、自分の出来る範囲で最大限の面白さを表現した監督の齊藤工さんに好感も持ちました。
何度も言いますけど、斎藤工さんが監督というのを知らずに観ても普通に面白かったと思うし、低予算だろうが自主制作だろうが映画への愛に溢れた齊藤工監督作品を今後も観てみたいなと思いました。