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1/19(水)、T・ジョイ新潟万代で「明け方の若者たち」を観てきました。
大学卒業間際の飲み会で出会った彼女に恋をした主人公の、社会に出て理想と現実の違いに葛藤する日々や、切ない恋の行方を描いた青春映画。
二人が恋に落ちる下りや大学生から社会人への生活と心境の変化を丁寧に描くからこそ、主人公の心の痛みもそれでも前を向く強さも伝わる映画でした。
冒頭から典型的な意識高い系大学生の飲み会に辟易している主人公が、ひょんなことから運命的な出会いをして恋に落ちるまでを、無駄のない脚本と北村匠海さんと黒島結菜さんの瑞々しくて繊細な演技、ここぞ!という場面で恋に落ちた二人の表情をアップで映すカメラワークによって丁寧に描いていて、一気に引き込まれました。
僕は、恋愛映画において、恋をする気持ちがしっかりと伝わってくることはかなり大事なポイントだと思っていて、まずそこまでの下りが丁寧に描かれていて本当に素晴らしかった。
そこから二人が恋人同士になる下りも、手を繋ぐか繋がないかの絶妙な心境の変化までも丁寧に描写するからこそ、私も見ながらドキドキしてしまうほどでした!
また、ピンク映画みたいな直接的な濡れ場ではないものの、二人がセックスしていることを無理のない範囲の表現で伝える描写がしっかりあったのも、二人の関係に説得力を持たせていて、丁寧な作りの映画だと思いました。
細かい部分ですが、二人がデートで演劇を見る下りで、本当にありそうな演劇の一場面や、観劇後に二人が感想を言い合う下りまでしっかり描いていたたことで、二人が同じ時間を過ごして仲が深まっていることにかなり説得力が出ていたと思いました。
それ以外の場面でも、本当にこんな会話してるカップルいそうだなあ…という、絶妙な台詞がいちいち面白くて、脚本と役者さん達の力をかなり感じる映画でした。
そんな恋をしつつ、主人公は大学を卒業して会社に就職するのですが、登場する新入社員達や上司にもいちいち本当にいそうなリアリティがあり(特に嫌な部分で)、新入社員で本当にに感じている人が多そうな会社の理不尽あるある的な描写が満載でした。
そんな会社での体験から、一見いい就職に見えて本人は理想とは違う現実に嫌気が差しているという心境も、北村匠海さんの絶妙に晴れない表情から伝わってきました。
それでも、社会に出てからも彼女との幸せな関係は続く…かに見えたが、実は二人の恋愛には隠されていた秘密があった!というちょっとしたどんでん返し的な展開が途中であり、そこから物語全体の印象が一気に変わっていきます。
ここは是非ネタバレなしで見ていただきたいのですが、チラシに載っている「僕は最初からわかっていた。いつか、この時間に終わりがくることを…。」というキャッチコピーはそういう意味だったのかー!という驚きがありました。
そこからちょっと切ない展開になっていくわけですが、そこでの北村拓海さんの熱演が素晴らしくて、主人公の心の痛みがかなり伝わってきて、見ながら本当に切なくなってしまうほどでした。
また、そこで最初はちょっといけ好かない印象だった井上祐貴さん演じる同僚や山中崇さん演じる先輩の意外な優しさに救われる場面もあり、登場人物達の奥深い人間性が描かれていたのも良かったです。
これ以上は伏せますが、他人から見たら報われない恋愛でも自分にとっては大切な気持ちだ、という部分がしっかり描かれていたのが、恋愛映画としてかなり好きな部分でした。
また、社会に出てからの主人公も周りも変わっていくリアルな切なさを描きつつ、理想とは違う毎日でも前を向いて生きていくんだという、いい意味で大人になっていく主人公が見つけた希望が、最後にしっかり描かれていたところも、いい青春映画だなあと思える部分でした。
ただこの映画、社会に出てからの理想と現実の違いに悩む若者の葛藤…みたいなものを描いていたと思うし、主人公は俺なんかダメな奴だ…と思っていそうなのですが、社会にまともに出られなかった自分からすると、いやいや!アンタめちゃくちゃ頑張ってるしマジで立派だよ!そんな落ち込まなくていいよ!と思ってしまいましたね。
ただ、一見順風満帆に見えた社会人生活を送る人にも、本人にしか分からない悩みがある、という部分を描いた物語だともいえるので、そう考えるとやっぱりいい映画でしたね。