


シネ・ウインド35周年祭の中で、今年は「凧の国」の上映などでシネ・ウインドとも縁のある、新潟の梨本諦嗚監督の色々な作品が上映されています。(全部は観られていませんが)

12/7(月)には、2019年に梨本監督が演出した演劇「真作 青鬼の褌を洗う女」の舞台映像も上映されて、観に行ってきました。
坂口安吾の「青鬼の褌を洗う女」は、戦時中から戦後にかけて一人の女性の退廃的な人生や、様々な男性達との出会い、彼女の周りの様々な男女の人間模様などを描いた物語です。
梨本監督の演劇では、坂口安吾の原作を現代を舞台に置き換え、護国神社の境内を自由に使って一人の女性の人生を描いていました。
主人公が少女から大人になっていく時間の広がりを、一つの作品として表現できるのは文学の力であり演劇の力だなあと感じました。
演劇では役者さんが10人もいて、少女時代と大人になってからで登場人物が変わっていって(一回の場面だけで少ししか出てこない役者さんとかもいる)、物語内の主人公の年齢や時間の経過に合わせて演出も変わっていくことで、時間の広がりを表している感じがしました。
原作では戦時中、戦後の物語が、演劇では現代が舞台になっていて、スマホが登場したり、主人公が若い頃にクラブに遊びに行っていたり、力士の恋人がサッカー選手になっていたり、震災の話題が登場したりするんだけど、面白いなと思ったのが戦争も普通に原作通りに登場するんですよね。
原題を舞台にしたなら戦争はもっと昔の出来事なのに普通に登場するから、一体昭和なのか平成なのか分からなくなるようなちょっとややこしい物語になっているんだけど、あえて戦争を原作通りに登場させることで戦争を身近な存在として描いたのかなと思いました。
上映後には主演の杉本彩さんからのビデオメッセージが流れていたんだけど、子供の頃にウリナリ社交ダンス部で見た杉本彩さんが新潟の演劇や護国神社やシネ・ウインドと繋がってるのはなんかすごいなと思いました。
会場には演劇に登場した小林へろさんと堀川久子さんが普通に見に来ていて、上映後にゆるい感じで梨本監督と一緒に舞台挨拶していて、また、東京から3人の役者さんもZoomで舞台挨拶に参加していました。
昨年公演をした時は、東京に集合して数日間稽古をしただけで本番だったとか、場当たりに杉本彩さんが参加できなかったので急遽シルバニアファミリーの人形を護国神社の図面の上に並べて立ち位置を確認したとか、本番中に急遽演出が変わって杉本彩さんにこっそりメモが手渡されてアドリブで演技をしていた部分があったとか、かなり大変だったであろう裏話が聞けました。
あと、小林へろさんが劇中で恋をする女優さんに、演技をしながらマジで惚れそうになって、かつてない熱演になったという話が面白かったです。
何はともあれ、去年演劇が見られなかったので見られて良かったです。
あと、シネ・ウインドに出会ったことで自分も坂口安吾に興味を持つようになったので、もっと坂口安吾を読みたいなとも思っいました。