企業の採用内定者のみなさんへ
内定を取り消されてもあきらめないでください
世界的な金融危機に伴う景気悪化の中、私たちNPO法人労働相談センターに企業の採用内定を取り消された大学生らからの相談が相次いでいます。
内定取り消しの動きと対応策などについて、11月16日付け『朝日新聞』朝刊(写真上)、同月18日付け『東京新聞』朝刊(写真下)が相談センターのコメント付きで記事を立て続けに掲載しています。
記事にも書いてあるように、企業から内定取り消しを通知されても泣き寝入りする必要はありません。内定を通知された時点で労働契約は成立しています(口頭での内々定を含む)。合理的な理由もなく契約を一方的に破棄することは違法で、効力がありません。企業に契約の履行を求めることができます。
そのためには企業から内定取り消しの連絡があっても「分かりました」などと同意と受け取られる発言はしないことです。内定通知書や企業側とのやり取りのメモなど、労働契約が成立=内定したことを証明できる証拠を集めて、契約通りに採用するよう交渉しましょう。その際には地域に1人でも加入できる労働組合(ユニオン)が力になります。
金融危機だからとって企業側が何をやっても許されるわけではありません。正しい法知識を身につけて、堂々と自分の権利を主張しましょう。内定取り消しを言われたり内定の辞退を促されたりしたら、NPO法人労働相談センター(電話03-3604-1294)まで相談してください。
合理的理由なければ無効
中日新聞 2008年11月18日
米国発の世界的な金融危機に伴う企業業績の悪化で、新卒学生の採用内定取り消しが相次いでいる。「内定」って、企業側と戦える権利? 一方的に取り消された場合、どう対応すればいいのだろう。 (服部利崇)
「企業が一方的に内定を取り消すことなんてできるんですか」
ある企業から新卒採用の内定を受けている男子学生が、東京都のNPO法人「労働相談センター」に電話をかけてきた。同じ企業から内定をもらった別の学生が取り消され、不安になったという。
対応したスタッフの須田光照さんは「業績悪化のしわ寄せはいつも弱い人にくる」とやるせない表情。同センターには同様の相談が複数寄せられている。
内定取り消しは広がりをみせている。青山学院大では男子二人がそれぞれ別の不動産会社から内定を取り消された。明治大学は計四人で、業種は不動産のほかアミューズメント、情報通信と多岐にわたる。理由はいずれも業績不振。それを裏付けるように、就職情報誌のリクルートには「ここ数カ月で、複数の企業から『内定を取り消すことはできるのか』という相談があった」(同社広報部)という。
そんな事態をうけ、東京都渋谷区の就職支援会社「パソナユース」は大学四年生向けの就職相談室を設置し、不安を抱える学生のキャリア相談に乗っている。
内定辞退の場合は反対に企業側から認めてもらえないのではないか、とのことですが、労働契約を使用者(企業側)から解約するのと労働者側から解約するのとではまったく問題が異なります。
企業側からの解約は「解雇」と同様に客観的・合理的な理由、社会通念上相当と認められる理由がないと認められません。一方、労働者側からの解約は「自己都合の退職」と同様に基本的に辞めるのは自由です。それぞれ個別の事情を考慮しなければなりませんが、原則として内定辞退は法的にも社会的にも問題にはならないはずです。