東京東部労働組合【公式】ブログ

全国一般東京東部労働組合の記録

「管理職」の悲哀

2006年05月10日 17時32分20秒 | サービス残業
 残業代不払正当化の”論拠”として使用者側が弄する2大詭弁が、労働者自らによる時間管理及び作業遂行方法の自己決定という新自由主義経済におあつらえ向きの”糖衣”にまぶしあげた「裁量労働制」であり、労働者の上昇志向を狡猾に逆手取りした「管理職」であります。
 
 今回は「管理職」について喝破していく所存。
 
 「今日から課長だ、Y君。残業代は付かなくなるけど、精進したまえ」―社長からの身に余るお達し。「やっぱり、見てくれる人はみてくれているんだよなぁ。感激だ」と、一人悦にいる図。残業代を拝領していないことが、さもステータスシンボルでもあるかのような”大誤解”を労働者の骨の髄まで染色させようと企図し、片頬を緩ませている経営者の悪代官顔を、叩けば高らか天空にも響きわたる小生自慢の「スッカラカン頭」に彷彿とさせてしまうことは、果たして酔狂の沙汰でしょうか。
 
 なるほど、労働基準法第41条第2号には、「管理監督者」に係る労働時間等の適用除外規定があるにはあります。しかし、使用者の脳髄に鎮座ましましている「管理職」の姿と法に定める「管理監督者」とは、実は似て非なるもの。
 前者は就業規則等で明記してある組織体系に則り会社が便宜的に設けた「職制」のこと。一方、後者は―。人様の思潮に仮託し自らの言葉で表現化しない怠慢をお許しいただきたいのですが、判例によれば「経営方針の決定に参画し或いは労務管理上の指揮権限を有する等、その実態からみて経営者と一体的な立場にあり、出勤退勤について厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について自由裁量権を有する者」(昭和53.3.28静岡地裁判決 静岡銀行事件)としています。
 
 上記判例の定義に従い労基法上の管理監督者に該当する役職を素直にあげつらえば、何のことはない、「役員」(取締役)しか思い当たらないのです。件のY君にはお気の毒ではありますが、たかだか「課長レベル」では”残業代返上”の栄に浴することはできないという解釈ですね。残業代獲得万歳!
 
 「管理職」という恣意的に設定された、権限にしろ伸縮自在の肩書きをもって、残業代不払に対する金科玉条となす経営側による所行なぞ到底認められるものではありません。経営者に翻弄され尽くしている役員レベルに達しきれない職制こそ、いい面の皮。出世したゾ、と舞い上がるだけ舞い上がらせられ、払われるべき残業代も不当に召し上げられる―彼らこそ悲哀を噛みしめているということですよね。
 
 結語の常套句となりましたが、決して騙されてはいけません。今後とも、労働条件に関し鵜の目鷹の目で使用者の動静をぬかりなく監視していきましょう。
 (やっしー)
**************************************************************************

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大久保製壜所再雇用制度反対... | トップ | 団交は商談か! »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ホントだよ (マチャミ)
2006-05-16 14:36:08
管理職って肩書きにつらされてしまうサラリーマンたちって本当にかわいそうだよね。でも、管理職って名の下に残業代未払いを公言する経営者がいること自体が間違いなんだと思うよ。働いた分の賃金を支払うことに対して何でケチるわけ??己の利益ばかり考えるのはいい加減やめておくれ。賃金の分だけ私たちは働いているんだぞ。
返信する
Unknown (なっつ)
2006-05-12 18:17:30
おっしゃる通り。

「管理職」なんてクソの役にも立たない肩書きはどうでもええから、働いた分のカネを払え!

まことにシンプルな話です。



ところが、「管理職」の名を悪用する経営者に、また1つろくでもない武器をいま与えようとしています。



国の審議会で労働時間規制の見直しを話しあっているのですが、「自律的労働時間制度」とやらを導入したがっています。それによると「係長」や「チームリーダー」なんかも36協定の適用除外、つまりタダ働きさせてOKてことみたいです。



ちなみに「自律」を辞書で引いてみると、「自己の欲望や他者の命令に依存せず、自らの意志で客観的な道徳法則を立ててこれに従うこと」



おっ、カッコイイじゃん。



でも、そんな会社ってどっかありましたっけ???
返信する
Unknown (ルノワール)
2006-05-11 16:53:03
よくこんな言葉を耳にする。「うちの会社は実力主義だから」だから、がんばれば、給料もあがるし、出世もすると。そんな幻想を抱かせ仕事をさせるのだが、

当然そんなことはなく、課長のポストが空き、普通であれば下の人間から繰り上げたりするものだが、課長には適さないと判断すれば、平然と他の会社やら、中途採用した人間を課長にするのである。

会社にしてみれば、課長になって、残業代など請求せず、会社のために働いてくれる人ほど都合がいいでしょうね。なんか周りにいそうだな~
返信する
Unknown (木根川橋)
2006-05-10 21:23:41
やっしーさんのサラリーマンの悲しい性(さが)をとても素晴らしく表現していて、読んでいてとても勉強になりした。



これからも、資本家が仕掛けるトラップに引っかからないように注意喚起のご指導よろしくお願い申しあげます。





返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

サービス残業」カテゴリの最新記事