蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

「女の教室 (学校の巻)」 (京都・南座) (1939.6)

2021年12月17日 | 医学 1 医師、軍医、教育

  

  昭和十四年六月興行
 新舊大合同劇 
  南座 完全冷房

 新舊大合同劇・六月公演
   大阪毎日新聞連載
   吉屋信子原作
   中井泰孝脚色並演出
 第一 女の敎室  四幕九塲
      大塚克三裝置
 第二 三人片輪  一幕
      常磐津文賀太夫社中
   長谷川伸作
   早瀨亘演出
 第三 源太しぐれ 三幕八塲
      大塚克三裝置

 六月十八日初日廿八日まで
  ヒル十二時 ヨル五時半 二回開演
      御觀劇料
    四等席・五十錢
    三等席・七十錢
    二等席・一圓
    一等席・一圓八十錢
         (他に税一割)
 前賣
  一等席に限り五日前より發賣しております
 南座前賣劵發賣所
     電話祇園⑥一一五五番
   三條河原町角松竹案内所にてもお取扱ひ申して居ります
    電話本局②二五二四番

    御挨拶
 風薫る潑刺 はつらつ の初夏!
 大衆演劇の第一線をゆく我が新舊大合同劇は茲に内容の充實をはかると共に、大阪の初演に 絕讃を博せる、大阪毎日新聞連載、吉屋信子原作の評判小説の劇化「女の敎室」の獨占上塲に、更に長谷川伸作「源太しぐれ」と舞踊「三人片輪」の三篇、現代劇に、舞踊に、剣戟に將に興趣滿々の舞臺でございます。何卒この六月公演を滿員もて飾 かざら して頂けますよう伏而 ふして お願ひ申上ます。
     月  日 
           南座
             敬白

   大阪毎日新聞所載
   吉屋信子作
   中井泰孝脚色並演出
 第一 女の敎室  四幕九塲
     (學校の卷)
      裝置 大塚克三
 第一幕一塲 女子醫專附屬病院の庭
          (グルッペの人々)
 同  二塲 藝者屋、分千登世の二階
             (春の風)
 同  三塲 北雲閣の一室(母の心)
 第二幕一塲 女子醫專圖書室(朝風)
 同  二塲 或る境内(無垢な男)
 第三幕一塲 演習地の或る農家(とろゝ飯)
 同  二塲 上野驛構内(出發)
 第四幕一塲 寄宿舎應接室(晴衣)
 同  二塲 卒業式々塲(別れの歌)
     人物
 一仁村藤穗 (女醫生)   瀧蓮子
 一蠟山操  ( 同 )   大路多雅子
 一轟有爲子 ( 同 )   若葉蘭子
 一羽生與志 ( 同 )   山本かほる
 一細谷和子 ( 同 )   高木峰子
 一伊吹万千子( 同 )   小栗壽々子
 一陳鳳英  ( 同 )   宮野朱美
 一初枝(他のグループの人) 黑川初江 
 一看護婦         岡本節子
 一同           潮美智代
 一舎監          澤みや子
 一小使          白崎菊三郎
 一河本敎授        關本勝
 一助手          高久保
 一藝者幾代        若宮里路
 一同 惠美        成田菊雄
 一同 春也        川喜多靜
 一仕込っ子 君代     常盤久子
 一番頭益三        小高眞吾 
 一同 太助        志水辰三郎
 一三吉翁         林淸三郎
 一大野英吉 (藤穂の義兄) 淸水一郎
 一大野浦五郎(藤穂の義父) 小波若朗
 一大野お蔦 (藤穂の母)  若宮里路
 一女醫生         黑川初江
 一同           岡本節子
 一同           潮美智代
 一敎授          瀨戸英樹
 一他ニ女醫生       大勢
 一弓削士郎(見習士官)   村田駿
 一神主          白崎菊三郎 
 一種吉          笈川武夫
 一忠一(種吉の孫)     藤山寛美
 一おまき(同)       常盤久子
 一兵士1         若月伸太郎
 一同 2         高島凡平
 一同           土屋正衛
 一佐々木(上等兵)     市川玉太郎
 一森山 (一等兵)     牧岡敏夫
 一赤帽          森本弘
 一他ニ乗客        大勢
 一大阪の母        白崎菊三郎 
 一與志の姉        成田菊雄
 一おしも(蠟山操の母)   梅野井秀男
 一父親          藤島敏郎
 一兄           人見二九二
 一弟  (大學生)     小川美夫
 一姉           市川光敏
 一妹           潮美智代
 一田舎の父親       松本三郎
 一細谷軍醫少佐(和子の父) 市川小太夫
 一外人宣教師(陳の保護者) 河喜多靜
 一伊吹副院長       稻村實
 一老敎授         中山利雄
 一若い敎授(司會者)    高久保
 一若い敎授( 同 )    牧岡敏夫
 一女子醫專校長      若宮里路 
 一敎授          市川玉三
 一女敎授         市川光也
 一其他敎授、生徒       大勢

 東洋 ひがし の國に咲きにほふ
  赤き心の花見ずや
 慈愛 めぐみ の雨と露うけて
  彌生 やよひ の園に生 お ひ育ち
 女子醫專の産科敎室の校庭で、イ、クラスのグルッペの七人が高らかに校歌を唄っています。まづグルッペの人を紹會すると、仁村藤穗 ふぢほ 、羽生與志 よし 、細谷和子、支那遊學生の陳鳳英と、一年から首席を爭そっている鐵の心臓 アイゼンヘルツ と仇名の勉強家蠟山操 ろうやまみさを と轟有爲子 とゞろきうゐこ の七人です。來年卒業する最後の暑中休暇前のことです、皆なの緊張たるや物凄いもので歸郷するどころか皆んな寄宿舎で我張 がんば ると意氣込んでいます。
 東京下谷の藝者町、分千登世 わけちとせ の二階では藝者幾代が風邪氣で朋輩の見舞をうけていた。藤穂 ふぢほ は休暇で凾館の母の處へ歸へるべく幾代に別れに來たのです。二人は姪同志であるが、流轉した二人の運命は一人は藝者、一人は女醫生にと別々の道を辿っていたのです。
 凾館に歸った藤穂を喜んで迎へてくれたのは義兄 あに の英吉であった。義父 ちゝ の浦五郎は藤穂が卒業したら英吉の妻にと樂しんでいたのです。母のお葛 つた は義理の板挾から泣いて藤穂に賴んだが、藤穂は決然と學校の寄宿舎に逃げ歸ったのです。
 悄然としている藤穂に有爲子は力と勇氣を鼓舞した。追かけて來た英吉も悲痛な面持ちで、「僕は諦める、勉強して立派に卒業するのが。たった一人のお母さまを安心さすのが務めだ」といっている二人はいつしか泣いているのでした。幾代は藤穂が家出した事を聞き英吉に會ひすっかり同情したのです。
 グルッペの中でも藤穂ばかりでなかった。和子と許嫁 ビトロウザル の間柄の弓削見習士官とも面白く行かなかった。弓削は家庭人になれ、和子はせっかく勉強したのだから、自分の自由を束縛されたく無いと可愛らしく反抗した。弓削は演習地のある農家で、種吉といふ老爺 おやぢ さんが忍從と貧苦と鬪って二人の孫を養育している姿に打れた。弓削は或る決心を持って演習地を引上げ上野驛に歸った、出迎かえの和子の樣子が一變して居るので驚いた、和子の母悦子さんと、父細谷少佐の經驗に富んだ訓諭の賜 たまもの でありました。同じ驛で藝者幾代が英吉の妻になるべく晴れの花嫁姿で藤穂と別れの手を握った、何んと不思議な輪廻ではありませんか。
 悲しみと嬉 よろこ びの卒業式の前日父兄達は晴衣を持て學校に集った。
 蠟山操の母おしもは或る病院の小使いをしながら操を優等生として卒業さす事が出來たのです、なんと尊い愛ではありませんか。此等惠まれた幸福な卒業生、慈愛に包まれた卒業式、別れの歌が講堂から靑空に響き渡る時、第二の女の敎室が始るのです。

昭和十四年六月十八日發行
發行所 松竹株式會社大阪支店 



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