蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

「東京同文書院擴張設計及豫算」他 (1902.10)

2022年04月02日 | 孫文、稲天、東亜同文会、黒竜会他

 

募集義捐主旨及新築設計幷ニ豫算

   支那學生寄宿學校新築募集義捐主旨

 今ヤ清国ハ変法自強ノ詔勅ニ基キ孜々トシテ庶政革新ノ事業ニ着手シ而シテ右革新ノ源ハ人才ヲ養フニアリ人才ヲ養フハ新學ヲ講求スルニアリ而シテ新學ヲ講求スルハ日本留學ヲ以テ最便且ツ益アリトナシ爾来學生ノ本邦ニ來ルモノ陸續踵ヲ絕タス今ヤ其在京総員数実ニ六百名餘ノ多キニ上レリ而テ別表所示五百三十七名以外ノ學生ハ概ネ所謂下宿屋ナルモノニ居住シテ不規乱雜ニ修學ヲ為シツヽアリ現状已ニ斯ノ如シ翻ツテ彼邦ノ情況ヲ顧レハ派到留學生ハ日ニ月ニ益其数ヲ加フベキノ勢ナルヲ以テ今ニ及ンテ嚴整ナル収容ノ道ヲ講セスンバ将ニ其弊害ニ堪ヘサラントス抑モ學問ノ変遷ハ即チ社會ノ変遷ナリ支那大陸ニ於ケル社會変遷ノ良否ハ新學振作ノ成敗ニ由ル而テ前途新學ノ鼓吹タリ社會ノ木鈬タルノ重任ハ実ニ懸リテ來遊學生ノ肩頭ニ在リ幸ニ此輩ヲシテ徳性ヲ全フシ品格ヲ高フシ所志ノ學識ヲ修得シテ以テ彼ノ土ニ還ラシメン乎文武緊要ノ仕途ニ登ルニアラズンバ各種有為ノ民業ニ就クヘク其国家ノ富強社會ノ更新ニ少ナカラサル貢献ヲ效スベキハ勿論将来常ニ日清間ノ連鎖トナリテ国交ニ民業ニ直接間接ニ裨補スル所必ス多ク且ツ大ナルモノアラン然ルニ若シ不幸ニシテ或ハ敗徳失行ノ輩ヲ出シ或ハ遊隋荒怠ノ徒ヲ生シ又或ハ軽佻浮薄ノ習ノ驕慢不遜ノ気ヲ負フテ皈ルモノアラシメン乎獨リ夫ノ厭新守舊ノ頑黨ニ新學排斥ノ口実ヲ與ヘテ再ヒ実學勃興ノ萌芽ヲ蹂躙セシムルノミナラス一般父兄ヲシテ我教育界ヲ悪徳敗行ノ渕藪ナリト憶測セシムルニ至ランモ測ルヘカラス本會深ク之ヲ憂フルヲ以テ曩キニ東京同文書院ヲ設ケ專ラ支那學生ヲ収容シテ謹嚴ナル監護ノ下ニ置キ之ヲシテ學徳並ヒ修メテ眞才ヲ成サシメンコトヲ期セリ独リ憾ムラクハ経費限リアリ規模大ナル能ハス更ニ設備ヲ廓張スルニアラズンバ幾多新來ノ學生ハ之ヲ坊間ノ下宿ニ放縦シテ弊風汚習ノ感染ニ任セサルヲ得ス是レ決シテ志士仁人ノ見ルニ忍フ所ニ非ルヲ信スルナリ夫レ嚴師ハ親シ難ク✕友ハ押レ易シ高徳ハ攀チ難ク悪趣ハ墮シ易シ況シテ萬里ノ外絕海ノ殊域ニ遊ンテ斬新苛警ノ智術ヲ求メ言語未ダ熟セス禮法未ダ習ハサルニ放縦不羈ノ客舎ニ偃蹇シテ軽躁無頼ノ悪友ニ接セハ時ニ學校ノ徳教師長ノ嚴訓ヲ受クルアルモ一日暴シテ十日寒シ一齊傳ヘテ衆楚咻スルノ類ニ過キス其悪習弊風ニ感染セサルヲ欲スルモ得ヘカラサルノミ果シテ然ラバ今ニ於テ一大寄宿學校ヲ建立シ謹嚴懇到ナル監督法ヲ設ケテ来遊ノ學生ヲ待チ教養戒飭並ニ一統ノ制ヲ施シテ其修徳進業ヲ兼ネ全フスルハ真ニ焦眉ノ急務タルヲ知ルヘシ本會已ニ彼邦ノ保全振作ヲ計ルヲ主義トシ又其育才興学ヲ助クルヲ要務トス留學監護ノ任固ヨリ譲避スヘカラサルヲ知ル殊ニ頂日彼邦学生紛擾ノ件アリ本會聊カ微力以テ調停ノ労ニ當リ爾後益支那學生斡旋ノ義務ヲ感シ是ヲ以テ大ニ東京同文書院ヲ擴張スルノ議ヲ起セリ然ルニ本會旧来ノ諸要務ヲ顧ミレハ時局ノ推移ニ隨ヒ並ニ擴充ノ必要ヲ生シ就中海上同文書院ノ擴張ノ如キハ殆ント一日ヲ緩メ難ク調査編纂事業ノ恢弘ノ如キ亦片時モ怠ルヘカラサルニ但タ籌費ノ支絀ニ✕テ並ニ未タ大ニ遂行ノ志ヲ展フル能ハス夫レ留學監護ノ急務已ニ彼ノ如クニシテ経費籌辨ノ事情又此ノ如シ是レ本會ノ議遂ニ捐金募集ノ止ムヲ得サルニ出テタル所以ナリ仰キ冀クハ大方ノ士君子幸ニ時局ノ急要ニ鍳シ本會ノ微衷ヲ諒シ多ヲ分チテ寡ヲ潤シ腋ヲ集メテ裘ヲ成シ✕ニ共ニ本會劻襄ノ美擧ヲ玉成セラレンコトヲ

  明治三十五年十月     東亞同文會敬白

   支那學生在學校種及人員表

 士官學校         二十五名
 成城學校        百四十八名
 弘文學院        百六十 名
 同文書院         六十一名
 精華學校         六十二名
 慶應義塾          十四名
 早稲田大學         十三名
 東京帝國大學         八名
 高等學校           九名
 高等商業學校         六名
 法學院            五名
 高等師範學校         三名
 東京帝国大學農科大學    十二名
 明治法律學校         三名
 日本法律學校         三名
 高等工業學校         五名

     計  五百三十七名

東京同文書院擴張設計及豫算

     設計概畧
 
 一 敷地ハ本郷、小石川、目白附近ニテ間口六十間奥行五十間三千坪内外ヲ買入ルヽ豫定ニシテ壱坪ノ價参圓内外ノ見積ナリ
 一 寄宿舎ハ新築木造ノ総二階建ニシテ間口四十五間奥行四間半建坪貳百貳坪五合ニシテ一坪ノ建築造作費共八十四円ノ割合ナリ(図面参照)
 一 講堂移轉建築費ハ現在神田錦町ノ東京同文書院校舎ヲ移転シテ之ヲ建築スルノ費用一切ヲ含ムモノニシテ即チ取壊、運搬、建築、造作費ヲ含ムモノナレトモ今詳説スル能ハサルヲ以テ其費ノ概算ヲ揭ク
 一 講堂増築費ハ木造平屋間口十二間奥行四間四十八坪ノ新築ニシテ一坪約五十円ノ割合ナリ
 一 附属舎ハ食堂木造平屋建七十坪一坪参十円炊事場煉瓦造平屋建二十一坪一坪五十円浴場同煉瓦平屋建十五坪一坪五十円此他物置木造平屋二十坪供待七坪五合便所十五坪此平均一坪約十七円外ニ炊事場浴場ノ据付物費ヲ含ム
 一 諸設備ハ講堂ノ机、椅子、其他一切ノ教場並ニ事務用具、寄宿舎ノ机、椅子、寢台、食堂ノ卓、椅子、食器、及運動場用具一切ヲ含ムモノニシテ學生用トシテハ壱百六十人分ヲ備フルモノトス
 一 門墻地均シ排水工事植物植込費ハ屛牆二百十五間門扉三ヶ所地均シ排水工事及木竹植込等ノ費ヲ云フ
 一 諸雜費ハ建築監督其他一切ノ臨時費ニ充ツルモノトス 
 一 講堂擔保借入金償却費ハ現在ノ東京同文書院設立ニ費シタルモノニシテ講堂ノ移轉ヲナスニハ其債務ヲ果スノ要アルナリ
  
     豫算

 一 金六万壱千圓也
  
     内譯

 一 金壹万    圓也  敷地買入金(約参千坪)
 一 金壹万八千  圓也  寄宿舎新築費
 一 金  四千五百圓也  講堂移轉建築費
 一 金  貳千四百圓也  講堂増築費
 一 金  五千  圓也  附属家建築費
 一 金  四千  圓也  諸設備費
 一 金  参千五百圓也  門墻土工費
 一 金    六百圓也  建築用諸雜費
 一 金壹万参千  圓也  講堂擔保借入金償却費
     以上
 
 東京同文書院擴張設計附圖 〔上の写真参照〕
 
   注意
 
 寄宿舎左側自ト記シタルハ自習室寝ハ寝室ノ畧字ナリアラビヤ数字ハ各室ノ坪数ナリ
 寄宿舎ハ総二階建ナレトモ階上ノ構造及各室ノ配置ハ階下ト異ルコトナク只階上ニハ舎監室ナクシテ談話室アルノミ故ニ畧ス
〇教塲ハ錦町ニ在ル現在ノ校舎ヲ移シテ之ニ充ツルモノナルカ故ニ只其位置ヲ示スノミ
〇自習室ト寝室トハ共ヽ一室八人ヲ入ルヽモノナルガ故ニ総テ百六十人ヲ容ルヽヲ得
〇自習室ト寝室トノ間ニ在ル隔壁ノ両側ニ点線アルハ障子ナリ



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。