THE KAMINOYA ADVERTISEMENT 〔上野屋洋物店季報〕
明治三十四年 〔一九〇一年〕 一月一日 第壹號 〔下は、その一部〕
楽器之部
同文館製改良風琴
壹号 壹個 金 十八円 保険 五ヶ年
貮号 同 金 二十八円 同 五ヶ年
三号 同 金 三十八円 同 五ヶ年
四号 同 金 四十五円 同 六ヶ年
五号 同 金 五十三円 同 七ヶ年
六号 同 金 六十円 同 八ヶ年
七号 同 金 七十円 同 九ヶ年
八号 同 金 八十円 同 十ヶ年
九号 同 金 九十円 同 十二ヶ年
十号 同 金 壹百円 同 十五ヶ年
十一号 壹個 金 壹百三十円 同 十五ヶ年
十二号 同 金 壹百五十円 同 十五ヶ年
十三号 同 金 二百円 同 十五ヶ年
右之外
洋琴ヴァイオリン
右明細書御入用の御方は御申越次第無代進呈す
舶来手風琴
壹個 金貮圓八十銭
同 金三圓十銭
同 金三圓五十八銭
同 金四圓十銭
同 金四圓五十五銭
同 金五圓廿銭
同 金五圓八十銭
同 金六圓三十銭
同 金六圓八十銭
同 金七圓三十銭
同 金七圓六十銭
同 金八圓二十銭
同 金九圓十銭
フラヂオレット 壹個 金五十銭
同 金六十八銭
同 金七十八銭
マウスハーモニカ 壹個 金二十八銭
金三十五銭
金四十銭
金四十七銭
金五十二銭
金六十銭
金七十八銭
金八十二銭
金九十銭
音楽隊用 楽器附属品
和漢洋楽器一式
音楽雑感(一) 三舞庵主人
神楽の価値
誤り易き俗歌俗謡
小学校に於ける洋曲
文部省出版の『小学唱歌集』中往々純粋の洋曲を用ひつゝあるを見るとなれど彼の『富士の山』の如き『見渡せば』の如きは曲の優なる割合には歌甚だ調を成さす之を讃美歌の『たそかれ静かに』の歌ひ善きに比すれば遥 はるか に物足らぬ心地され『国民唱歌集に讃美歌の『さまよへるものよ』と同譜の『ゆけども』を載せあれど又之前者と同一の観あるを免れず「ねやの板戸」は多く萬歳節的に流れ「若菜」又徒らに滑稽じみて聞きなさるゝにはあらざるか、そは兎に角近時流行を極めたりし軍曲「雪の進軍」の譜が福島は勿論県下各地に於ける小学児童の口に依りて誤り唱ひられつゝあることは頗る奇なる現象なり、何者か伝ひ何人が受けたるやを知らずと雖もよくも一致して誤謬を陥れるものかなと思はる左に其の一節を紀せんに 35_ _ 3565511216560 を 11 _ 65 _ 512332160 となしたるが如き劈頭既に非なり況や其他をや吾人は県下の教育家が本譜を咀嚼し得るの能に乏しきを憾まざるを得ず。
上野屋音楽隊
福島中町上野屋洋物店員より成れる同音楽隊は実に福島県に於ける最初の音楽隊にして器械の完整被服の美麗等に於ては東京市中音楽隊に比するも敢て甚しき遜色を認めず吹奏又甚だ拙なりとせざれども吾人をして遠慮なく言はしめば譜の数に於て多少の落莫を感するものあると共にあまりに、キワモノ的の傾あるを認む、然れども『ジヲルヂヤマーチ』の如き『すまの月』の如き『金鵄勲章』の如き「フランス』『ドイツ』マーチの如き難曲を平然として吹奏し些の滞澁を見ざるの半碗 しゆわん に至つては嘆賞に堪へ之を伊達音楽隊の略譜に依つて滅茶苦茶に鳴らしたつるに比すれば実に天淵の差ありと言はざるべからず況んや同店員が一歳僅に数日の練習を試むるに過ぎずと云ふに於てをや吾人は福島に於ける音楽隊の先輩たる同隊を重しとし衷心其前途を祝福して止まざるものなり。
上の広告は、明治三十五年十一月三日発行の『教育界』第二巻 第一号 に掲載されたものである。