白眉音楽評論
編輯 伊庭孝・小泉洽・堀内敬三 大正十四年九月 No.1 創刊号
内容目次
▽目黒楽話 伊庭生
▽音楽の高価 上司小剣
ジル・マルシエツクスの宿
◎今秋の楽壇に、多くのピアノ愛好家から期待されてゐるジル・マルシェックスは、最近にロンドンに於て、数回のレサイタルで、大喝采を博した近代的ピアニストである、が、是をわが国に招聘したのは、薩摩治郎八氏で、先年徳川頼貞氏が、ホルマンを招聘したやうに、大金を抛って、この巨匠を迎へるのださうである。
◎ジル・マルシェックスの演奏曲目は既に発表されてゐるが、氏のレサイタルは毎晩ではなく、その間に一週間ばかりの間隔がある。是は曲目が曲目だけに、その間に楽匠は魂を休め、指を走らせて練習をする休養と練習の期間であらうと思はれる。
◎薩摩氏はジル・マルシェックスを、ホテルには泊めないで、静かな処で練習させるといふ約束をしたさうで、目下同氏の駿河台の邸内には、楽匠の為めに静かな一棟が建築されつゝあるとの事である。
◎最も贅沢な演奏ではある。しかし、是が本当の楽匠の「招き方」ではなからうか。音楽はかうして聞かす可きものかうして聞く可きものである。(K)
▽本の値段と音楽研究者 小泉洽
▽写真の人(野村光一氏) 堀内敬三
▽白眉ハーモニカ楽譜使用者に 春柳振作
▽寄席にもピアノ一台 青柳有美
▽今年読んた本より 伊庭生
▽オルンスタインと其の作品 伊庭孝
チヤイコウスキイの「船唄 バルカロール」(ヴァイオリン独奏曲)
レオ・オルンスタイン編曲〔楽譜〕
▽去る人来る人
▽椋鳥通信
編輯後記
◎足掛三年来、音楽愛好家から驚異の眼で視られてゐた「白眉月報」は、たうとう普通の形の雑誌になった。そのために「月報」は自然廃刊になったわけであるが、色々編輯上の都合や何かで、七月号と八月号とをお休みしたのである。白眉愛好家の中には、月報の届かぬのを不思議に思はれた方も、少くないと思ふが、そのお埋め合わせには月報の倍以上の内容ある「白眉音楽評論」をお送りするのであるから、どうぞ悪からず思召し下さい。
〔省略〕
◎尚、本誌は、他の音楽雑誌と違って、楽団以外の社会的地位ある諸大家の言説を多く掲載することを特色としたいと希っている。〔以下省略〕
◎本誌の特色とするのは、「質疑欄」と「好楽クラブ」とである。〔以下省略〕
白眉音楽評論
編輯 伊庭孝・小泉洽・堀内敬三 大正十四年十月 No.2
内容目次
▽世界の音楽 ✕✕✕✕
▽目黒楽話 伊庭孝
▽続ゴトフスキイ論 鈴木賢之進
▽楽蝶譚語 小泉洽
▽音楽春秋
▽悪口雑言(堀内敬三)
▽無題(増沢健美)
▽楽壇忠臣蔵(てれめん散)
▽楽壇意見帳(大久保彦左衛門)
▽飢放送(如是空)
▽音楽春秋ABC(渋井三七)
▽今年読んだ本より 小泉洽
▽寿命とは? 春柳振作
▽オルンスタインと其の作品 伊庭孝
ダ・ウィドのヴァイオリン練習曲
作品第二十四の十五 〔楽譜〕
▽ハクビ小学唱歌に就て 小田島樹人