「あいちトリエンナーリ2019」での『表現の不自由展・その後』が社会問題化しましたが、今度は川崎市でも同様な事態が進行しつつあります。
東京新聞10/26付朝刊によると、映画祭で上映予定だった映画「主戦場」が上映中止になったとのことです。
この映画は、従軍慰安婦をめぐる論争を様々な角度から検証しようとした日系アメリカ人監督ミキ・デザキによるドキュメンタリー映画です。
論争の当事者たちが顔を揃えて持論を述べている実に迫力ある内容ですが、この映画が話題になり封切られると、藤岡信勝氏ら5人が上映中止を求めて訴訟に踏み切りました。
この裁判の詳細については未だ認識していませんが、要は従軍慰安婦をなかったものにしたい勢力の思いが背景にはあります。
自分たちの出演した映画が、自分たちの思いとは反対の側のプロパガンダに利用されたと感じたのでしょう。
NPO法人が主催するこのイベントに川崎市も600万円を負担していることから、問題化したのでは思われます。
川崎市が直接的に上映を中止させたわけではありませんが、市が主催者事務局に「映画祭や市が、出演者に訴えられる可能性のある作品を市が関わって上映するのは難しいのでは…」と伝えて来たというのが事の始まりであることは事実です。
これを受けて事務局が、上映要請をしていた映画配給会社「東風」に対して上映申し込みの取り消しをしたからです。
事務局としても苦渋の選択だったかもしれませんが、監督を始め映画制作者側からすると「表現の自由」を踏みにじる「事実上の検閲」ととらえられても仕方ありません。
明日27日が開幕ですが、またしても従軍慰安婦をめぐる問題と行政との関わりは、行政側が「混乱」を懸念して云々の理由で自主規制する方向へ向かっています。
主催者や事務局の主体性がどこまで発揮できているのかという問題もありますが、終局的には歴史修正主義の価値観が反映されたネトウヨを含む右派の言動圧力が行政を萎縮させています。
それは、単に歴史修正主義者等の右翼の言動に屈するのではなく、その背後にいる現政権を忖度したものに他なりません。
そして、この動きは今回に限らず各地で行われる市民の社会・文化活動の足枷にもなっています。
公民館等の会場を貸し出さなかったり、行政が後援を拒否したりする例が後を絶たないからです。
憲法で保障された自由権が脅かされる頻度が高まっている今日、安倍政権の進める憲法改悪策動とも連動していることが見え隠れしています。
私たちは今回の川崎市の映画イベントだけでなく、身の回りの様々な動きを「政治的」な目で監視していく必要があるように思います。
-S.S-