人生を癒す百歳の禅語を読んで 2
*逆境の中に安らぎを得る
夏の甲子園の高校野球は、観客に誰も「涼しい」なんて言いません。「暑い、暑い」と
言っていますが、野球を見ている時は、「暑い、暑い」と言いながら暑さが一向に気に
なりません。同じように雪国のスキー場で誰もが「寒い、寒い」と言っている。
しかし、寒さがあまり気にならない。
これを批評すると、好きな事をやっていれば暑さ寒さは苦にならないと解釈できます。
そこから一歩進めると、そういう暑さ寒さだけではなしに、どのような環境にあって
もそこから逃げない、逆境から逃げずに、暑さ寒さのっ苦悩に同化し、とけ込むので
す。それが日常生活の中で大事な事なのだという結論になるのです。
嫌なこと、苦しいこと、悲しいことに打ち克つためには、その苦しみや悲しみに同化
し、成り切り、徹する事が大切なのです。悲しいときには、思い切り泣き、苦しいと
きにはウーンウーンと苦しんだらいいのです。我を張って我慢しないで「悲しい、悲
しい」「暑い、暑い」と確認して、その物事に徹し、成り切り同化することにより、心
の休まる場があるのだということです。
言葉を換えると、成り切るとは、その物事に沈着するのです。そこに沈み込んでいく
ところに、一つの心の安らぎが得られるのです。
逆境なら逆境に自分の身を沈潜することによって心を開く事ができる。
*煩悩はなくせないがコントロールできる。
煩悩は、なくせないのです。生きている限り煩悩はなくならない、死ななければ煩悩
はなくならないのです。
煩悩は、悪いもののように考えますが、私たちが生きていくということは、生命欲と
いう欲望があるからです。それがなかったら人間は生きることはできません。だから
煩悩が悪いのではなく、煩悩の処理の仕方が問題になってくる。欲しい、憎い、可愛
い、といった煩悩のままに動いていたら、人間は自滅してしまう。
コントロールされた煩悩を持つということが理想の人間のあり方なのでしょう。
煩悩はなくならない。ただ煩悩のマイナス価値をコントロールしてプラスにしていく。
これは煩悩に限りません。すべて負の価値をプラスにコントロールしていくところに
人生の生きがいがあると思う。
だから、よく「生きがいはどうすれば得られるのか」と問う人がありますが、これは
交番で「私の生きがいはどこにありますか」と聞くようなものです。探しても無駄で
す。自分で自分を観察しなければ駄目です。そして、その生きがいというものは、順
境ではなく、むしろ逆境において得られると思う。
終戦の時、外務大臣で戦犯となり死刑に処せられた、広田弘毅氏が、外務省欧米局長
の時、首相に嫌われて人事異動でオランダ公使に飛ばされ、左遷された時、皆が広田
さんに同情したら、彼は一つも不平を言わないで「風車、風が吹くまで昼寝かな」と
吟じたそうです。
人間は逆境の時をどう生きるかが勝負ですね。その逆境の時に、愚痴を言ったり、不
平を言ったりしていたら、人生の敗残者になってしまう。その逆境の時に、それを縁
として自分を築き上げていく。逃避せず、断念することなく、静かに沈潜して、その
環境の持つ意味と価値を見つける努力をするなら、そこに新しい人生が開けるのです。
と、言っています。世の中経済不況、仕事がない、儲からない、生活が苦しい、と言
ってないで、互いに逆境に負けず考えを切り換えて頑張りましょう。
今が踏ん張りどころです。