■火を噴く惑星■ かなりガキの頃強烈に印象に残っている一種のトラウマ場面があって、それってのは、複数の人間を肩に載せて溶岩流を横切ってゆくロボットが熱に苦戦し、自己保存機能赤ランプになって「荷物をおろさねば」と無機的に言って人間をマグマの中へ投げ捨てようとするシーン。結局人間たちは間一髪救助されるのだが、見捨てられたロボットはゆっくり倒れて熱流に飲み込まれてゆく……。こわかったです、私かなり幼かったと思うので。悪夢のそのシーン、この映画だったのか~。ソ連映画だったとはなあ。こういう、おぼろげに焼きついているシーンと再会するっての、嬉しいですよねぇ。でまあこれ、アメリカ映画と違ってのんびり進行だな~とつくづく。冒頭の金星着陸までもずいぶんゆったりしてるし。とくにアクション要請するような大事件もなし。淡々と探検。まあクリーチャーはけっこう多くて、肉食植物と一瞬出演のタコくんは愉快だったけど、あとは地球の生物とほぼ同じ、トカゲは実写というのはちょっと。ブロントザウルスはほとんど動かないし。肝心の翼手竜とホバークラフトの戦いはどうなったのか結末映ってないし。ラプターっぽいあいつらがロボットに追いすがるとこも、もっとしつこくやってほしかったかも。金星に植民した火星人とかいう憶測も無用に錯綜してるし。でもラストはよかったなあ、声だけだった歌姫ついに御登場、待ちこがれた乗組員らは去ったあと。姿水面に映るだけ、にっくい演出だねえぇぇ。
■コンタクト■ 序盤早々、会ったばかりのヒロインと牧師くずれだかがすんなりキスしてセックスまでしちゃう唖然ものの軽さに、いい加減にしろ、これで150分は先が思いやられるぞと観賞中止しかけるも、『パワーズ・オブ・テン』まっつゃお的オープニングの余韻に免じて観続けたのだが。結果的には最後まで観て良かったです。予兆通り徹底的に俗っぽい話ではあるものの、やっぱビジュアル最後まで凄かったからねえ~、ワームホールのCGジェットコースターとか。しかしどうしてああいう話になるかなあ。あの牧師くずれが軽薄な色ボケにしか見えずあいつが顔見せるたびにおめーら映画のジャンルどっちにしたいんだと怒鳴りたくなったのは俺だけじゃあるまいってのは別にしても、ただでさえSETI大嫌いの俺がだよ、うっとーしいヒロイン天文学者の狂信的な電波探しを肯定的に観ろっていわれてもどだい無理。電波はあんたでしょうが? それとリターンマッチの現場がいくら北海道だからってわざわざ和室に宿泊してなくていいからヒロインは。丁寧にキモノまで着て。そもそも神を信じないやつが明らかに無意味なコンタクトをすんなり信じちゃうなよな。死んだ父親と会って感激したからってさ。この映画観た若者の中には見習っちゃうやつが出てきかねないでしょうが、この目で見たものは信じよう、とかな。オカルトの素なんですよ、それ。幻覚剤のせいで尊師のパワーを信じちゃった哀れな信者たち思い出せよ。体験よりたいてい理屈の方が正しいんです。理屈で考えたら宇宙人絶対いないんですよ。とくにあんな個人的もいいとこの虚ろなコンタクトのために大騒ぎ仕掛ける高度文明なんてものあるわけなかろうがっつの。科学論ぶち挙げてきたわりにヒロインの変化は安易な収束でしたワ。あとすべて終わってから「捏造だったかも……」て疑い始めるギャラリーはどういうつもりよ。最初に調べろよンなこと。あのじいさんが暗号解読法をすんなり教えた時点でおかしいと思わなかったのかよ。それ以前に、変な機械を素直に造らされる前に変だと思わなかったのかよ、「何でむこうが来ないんだろう、そうしたほうが25年早いじゃん」って。といろいろまあ、とにかく神なんてどうだっていい俺にとっては(たぶん大多数の日本人、てか東亜細亜人にとっても)神神神神うっるせーうぜー映画でした。にもかかわらず、映画としては――とくにドラマ面ね――優れているとしっかり認めざるをえないのが悔しいところです。18時間のノイズ、ってかろうじて謎を残してくれて。しかしまあ、日本て国、ヒーロー出す意欲はないがカネのためなら下請け仕事せっせとします、て有能な裏方として重宝されてることがわかったのは収穫でした。