厚労省の調査によれば、全国で痛風に苦しんでいる患者は約96万人。その予備軍である「高尿酸血症」の患者は1600万人にのぼる。実に、成人男性の4人に1人が痛風の恐怖に悩まされているのである。
そんな人々の間で注目されているものがある。痛風の原因となる尿酸の生成を抑える「尿酸生成抑制薬」としては、40年ぶりとなる新薬だ。
その薬とは、製薬会社・帝人ファーマが自社開発した「フェブリク」(成分名=フェブキソスタット)。国内では昨年4月から本格的な処方が始まり、約1年半経った今、その効果を実感する声が医師・患者の間で広がっている。米国では同社から販売委託された武田薬品工業が手がけて「事業の柱」とするなど、すでに世界約30か国で販売されている。
尿酸生成抑制薬は、英国グラクソ・スミスクライン社の「ザイロリック」が国内では1969年に発売され、痛風治療の定番となっている。
ザイロリックは、体内で尿酸を作る酵素の働きを阻害することで尿酸値を低下させる。一方、新薬の「フェブリク」も、この酵素の働きを阻害するという仕組みは同じだ。
では新薬の特長は、どこにあるのか。山中寿・東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長が解説する。
「『ザイロリック』は、体内で分解した代謝物を尿からのみ排出する。そのため代謝物が腎臓に蓄積しやすく、腎臓機能の低下した人には負担がかかっていました。また、皮膚や粘膜に赤斑や水泡といった炎症が生じるなど、重篤な副作用が一定の割合で起きるので、安全面で神経を使う必要がありました。
『フェブリク』は、尿に加えて便からも薬代謝物を排出できるので、患者の負担が少ない。そのため腎臓機能の低下している人も服用できます」
患者側の利用しやすさにもメリットがある。尿酸降下薬のほとんどが、1日2~3回服用する必要があるが、「フェブリク」は1日1回、朝夕の好きな時に飲めばいいだけ。飲み忘れてしまうこともなさそうだ。
肝心の効果に関しても、「『ザイロリック』と同じかそれ以上」と、前出・山中氏が語る。
「『ザイロリック』で下がる尿酸値は1.5mg/dl。尿酸値が8.0~10mg/dlくらいの痛風患者や予備軍だと治療効果が十分に得られず、服用しても発作が起きてしまうことがある。
これに対し、『フェブリク』は一般的に処方される40mgで、目安として4.0mg/dl下げられるので、治療目的が達成しやすい」
「日本痛風・核酸代謝学会」の報告によれば、尿酸値が下がらず痛風発作を繰り返していた患者が「フェブリク」に切り替えた後、尿酸値が治療目標の6.0mg/dl以下に低下し、経過観察中の発作も起きていないとの症例があるという。
20代のころから痛風を患う、都内の50代会社員Aさんも、その効果に驚きの声を上げる1人だ。
「尿酸値は10.0mg/dlを上下して、なかなか下がらなかった。健康診断で腎機能の検査数値が引っ掛かり、これ以上、今の薬の量を増やすのに抵抗があったので、医師と相談し、『フェブリク』に切り替えたんです。今の尿酸値は5.8mg/dl。毎晩ビールを1缶飲んでいますが、痛風の発作は起きていません」