[26日 ロイター] - 世界的な脅威が増大するなか、その頂点にあるのは、おどけた仕草や罵声、高笑いだ。米国は、いや世界は、不動産王ドナルド・トランプ氏が主演するリアリティショーの虜になっている。
他のすべての米大統領選候補を合わせたよりも多くのテレビ放映時間やニュース紙面が、共和党の指名獲得を目指すトランプ氏一人に度々割かれている。
この自由世界のリーダー候補は、これまで1日たりとも、いや1時間たりとも公務に就いたことはない。
テレビ番組「セレブリティ・アプレンティス」のホスト役を務めていた政治家トランプ氏は、政治の現場での修業は何一つやったことがない。
それこそまさにトランプ氏が支持される理由だ。富と名声で洗い清められたトランプ氏は、現実の政治によって汚されていないのである。
ト ランプ氏が大統領に当選する可能性は、依然として低いとはいえ、今やありえない話ではなくなってきた。選挙結果の予測がよく当たると言われる「ファイブ サーティエイト」のネイト・シルバー氏は依然としてトランプ候補の指名獲得に懐疑的だが、以前に比べれば、はるかにそのトーンは落ちている。
「私 が想像した以上にトランプ氏にとって好都合な条件が揃いつつある。彼がまだ指名争いに残っているということ以上に、彼を止めようという協調的な取り組みが 見られないことに驚いている」とシルバー氏は指摘。問題は、トランプ候補を止めようとするのが、共和党のエスタブリッシュメントだという点だ。
シ ルバー氏がまだ心の準備をしていない段階まで予測を進めると、「トランプ大統領」がホワイトハウスの執務室に到着した場合、どのような状況が待ち受け、どのような書類がデスクに積まれているのだろうか(もちろん、彼は書類を床に払い落とし、側近にこう叫ぶだろう。「メキシコ人を追い出せ。壁を築け。ムスリムを入れるな。中国人に失せろと言ってやれ。
あの愉快なプーチンを呼んでこい」)
だが、彼が真剣に政治を行う気になったと仮定した場合は、どうだろうか。
トランプ氏が毎日のように罵倒する彼の前任者は、1期目に他国首脳との関係を「リセット」しようと努力した。
ロシアのプーチン大統領(「リセット」という言葉が採用されたのは対ロ関係の文脈だった)、ジョージ・W・ブッシュ前大統領が掲げた「テロとの戦い」に対して深い恨みを抱いていた中東各国の首脳、そして2012年に就任した中国の習近平国家主席などとの関係だ。
欧州諸国に対しても、オバマ大 統領はとても友好的だった。2011年5月、中世に建造された英ウェストミンスター会堂で行った同大統領の演説を生で聴いたが、そこでは、「米国と英国以上に、民主主義の価値をしっかりと守り、声高に唱え、それを守るために熱心に戦う国は、世界中にもほとんど存在しない」と宣言した。
そして、米国スパイがメルケル独首相の携帯電話を盗聴していた可能性が高いとはいえ、オバマ氏自身は同首相に高い敬意を示している(今週リークされたエドワード・スノーデン氏収集による米国家安全保障局の文書からは、ベルルスコーニ氏がイタリア首相だった時期には、プーチン大統領との通話を中心に、同氏の携帯電話も盗聴していたという)。
だがそうした努力の甲斐もなく、オバマ大統領はロシアと中国のナショナリズム(どちらも強力で恐ろしい原動力となっている)に、共通の攻撃ターゲットを与えてしまった。
世界で最も断固たる反欧米派であるプーチン大統領は、2014年3月、扇動的な演説を行った。そのなかで彼は、西側国家は「現実の政策において、国際法ではなく、銃による支配に従うことを好んでいる。彼らは思いどおりに行動しており、世界の運命を決めるのは自分であり、常に自分だけが正しいのだと信じ切っている」と述べた。ロシアというバネを限界まで抑えつけることは、「強く跳ね返るので」危険だと彼は警告。その後も米ロ関係は悪くなる一方である。
中国との関係はまだマシではあるが、大差はない。習近平主席は昨年9月にワシントンを訪れてオバマ大統領と会談した。
険悪な雰囲気にこそならなかったが、合意に達した点は、世界の二大大国が直面する問題のスケールに比べれば、ほとんどなかった。
習主席は2月に入り、中国内で活動する外国メディアを含む報道機関に対して、中国共産党の指示に従うよう命じた。
経済成長が減速するなかで国内の引き締めを進めており、汚職摘発を進めている党内や国内の不満を警戒している。
西側諸国は、執行部への反感をそらすための手軽な仮想敵なのだ。
オバマ大統領が信頼を回復したいと願っていた中東の指導者の多くは、彼自身が賞賛した「アラブの春」とともに一掃されてしまった。
そして、その「春」自体も霧消し、中東地域では新たな独裁者が登場、もしくは混沌が支配している。欧州各国はオバマ氏を支持しているが(電話盗聴をめぐる対立が発生したときを除く)、欧州連合では、統一通貨も、域内の自由移動を認める政策も崩れつつあり、米国にとって十分 なパートナーになれずにいる。
こうした状況で失われたのは何か。恐らく「世界」そのものである。各国首脳は今日、ポスト冷戦期で最も大きな課題に直面している。
ロシア問題専門家のロバート・レグボルド氏は、来月刊行される著書のなかで、そうした課題のいくつかを列挙している。
その一つが急速に迫っている「第2の核の時代」への対処である。いまや、近隣諸国に対する攻撃的な意志を持った国々(パキスタンとインド、将来的には恐らくイランとイスラエル、そして北朝鮮とそれ以外のほとんどの国)が核武装をめざしている。
さらに、気候変動というやっかいな問題への対処も課題に含まれる。海水面が上昇し、往々にして貧しい低地の国々に打撃を与えることを防ぐにはすでに手遅れであることを認識しつつ、大規模災害を緩和する戦略を考案し、温暖化の一層の進行を予防しなければならない。
北極圏の未来に関する有意義な協議を発展させるという課題もある。現時点では、ロシアがこの地域を一方的に軍事化しようとしている。
か つて、各国首脳がこれほどグローバルな規模で活動することはなかった。世界が大量破壊の脅威にこれほど晒されたこともなかった。
今ほど、共同行動や、実質を伴う合意が求められ、不和に終止符を打つことが必要とされている時代はなかった。
だが、我々がいま目にしているのは、新たな希望に満ちた時代ではなく、 冷たい死の世界をもたらしかねない冷戦期の再現なのである。
だが、その一方で、自由世界のリーダーに就任する可能性が高まっている男は、歯を剥き出し、腕を振り回し、わめいている。
「我々は勝って、勝って、勝ち続ける国だ。そしてまもなく、この国はまた、勝って、勝って、勝ち始めるのだ」と。
以上、ロイター記事
うーん、トランプ大統領は未知数ですね。世界を論じる手前が問題だと思います。
それはアメリカ国内の現状です。
白人でも貧乏人、だからトランプに投票するのです。
世界じゃなく、国内の仕組みを変える日本で言うと織田信長的な人材をアメリカ国民が求めているのです。
誰が、アメリカを支配している0.1%と戦うのか。
トランプか、サンダースか。
決してクリントンではありません。