[16日 ロイター] - これはもう「トランプ」問題である。12日、ドナルド・トランプ候補が暴力事件の発生を理由にシカゴでの選挙遊説を中止せざるを得なくなったことからも、それは明らかだ。
だがこの暴力事件は、3日後の世論調査ではトランプ候補に何ら打撃を与えなかったようである。フロリダ、イリノイ、ノースカロライナでの勝利により、彼の共和党の指名獲得はほぼ確実となった。結論は明らかだ。トランプ候補の支持者の多くはトラブルを求めているのだ。
7月に開催される共和党大会での最初の投票でトランプ候補が過半数を獲得できなかった場合に同氏の指名を阻む戦略を練るため、ある保守系団体が今週、ワシントンで会合を開いている。たとえトランプ候補が他の誰よりも多くの代議員を獲得したとしても、である。党がトランプ候補の指名を邪魔するようなことがあれば、「われわれは会場を焼き払うだろう」と、トランプ支持者の1人は語っている。
トランプ候補は荒削りなポピュリストである。だが、そう言ってみても、あまり多くを説明したことにならない。
ポピュリズムとは何か、ひとことでは言えないからだ。
富裕層・特権層(「カントリークラブ保守」)を攻撃する左翼のポピュリズムもある。その一例がバーニー・サンダース上院議員で、ウォール街といわゆる「1%(の富裕層)」を容赦なく批判している。
高学歴エリート(リムジンに乗ったリベラル)のスノビズムと尊大さを攻撃する右翼のポピュリズムもある。
たとえば、ポリティカル・コレクトネスや高学歴層が伝統的な宗教を軽蔑することを絶えず批判していたのがベン・カーソンだった。
その両者を併せ持つのが、トランプ候補だ。
トランプ候補は左翼ポピュリストだろうか。そう、彼が自由貿易を攻撃するのはサンダース候補と同様である。
自身が富裕層であるにもかかわらず、トランプ候補にはウォール街への愛着はない(「ヘッジファンドの連中は殺人者なのに罰せられない」)。
ウォール街の側でも同じことだ。米金融界は、トランプ候補が大統領になれば市場と経済に災厄をもたらすと信じている。
米金融界の大物たちは、反トランプの広告に何百万ドルも注ぎ込み、同氏が党大会代議員の過半数を獲得するのを阻もうとしている。
では、トランプ候補は右翼ポピュリストだろうか。移民、マイノリティー、女性に対する攻撃を見れば、そのとおりである。
それに加えて彼は、昔ながらの孤立主義を信奉しており、米国は自国の利益が直接脅かされない限り外国への介入を避けるが、ひとたび脅威があれば相手を木っ端みじんに打ち砕く、としている。彼の「イスラム国」への対応戦略は「やつらを徹底的に爆撃する」である。
トランプ候補の支持層は、イデオロギー的な壁を完全に乗り越えている。最も彼を支持しているのは、大学教育を受けていない白人、特に男性の有権者だ。トランプ流ポピュリズムのもう一つの要素、「強い男」願望である。
1959年、偉大な社会学者シーモア・マーチン・リプセットは、「労働者階級の独裁主義」、つまり「下層階級の人々」のあいだの不寛容の傾向、過激で非民主的な態度について書いている。
トランプ候補はロシアのプーチン大統領への敬意を表明している。「彼は自分の国を動かしているし、少なくとも、リーダーである。そこがわが国とは違う」とトランプ氏はMSNBCで話している。プーチン氏の政治手法に関しては「わが国もたくさん殺していると思う」と答えている。
トランプ候補がこのところ見せているプーチン流の動きと言えば、批判的な報道機関が自分の選挙イベントを取材するのを拒否したことだ。デモイン・レジスター、ユニビジョン、フュージョン、ハフィントン・ポスト、ナショナル・レビュー、マザー・ジョーンズ、バズフィード、そして最近ではポリティコも排除されている。
自分の集会に対する抗議参加者に彼が送るメッセージも同じだ。「あいつらをたたき出せ」である。15日夜の勝利宣言では、メディアについて「吐き気がする」と表現するのを忘れなかった。
多くの米国民は、トランプ候補が言うのと同じ理由で、「強い男」を望んでいるように見える。政府の連中は何一つ実現できていない、という理由だ。米連邦政府は袋小路で行き詰まっている。
トランプ候補は自分流に仕事を片付けると約束するが、具体的には説明しようとせず、ただ自分なら「アメリカを再び偉大にできる」と約束するばかりだ。彼は専門家やアドバイザーさえ帯同しない(「外交政策については誰に相談しているのか」と質問され、トランプ候補は「私の第一の相談相手は私自身だ」と答えた)。彼は自分流にやりたがっている。
たった1人で。
なぜトランプ候補は共和党の指名獲得競争で勝利を収めつつあるのか。米国が世界でも最もポピュリスト的な国であることを忘れないでおこう。米国に次ぐ第2位の国を探しても、他はどこも(権威主義的な王制国家である)サウジアラビアと大差ない。
それというのも、この国はもともと、権威(圧制的な政府、硬直した教会、閉鎖的な経済)から逃げ出してきた者たちによる植民に由来しているからだ。
エリートへの不信は、米国史を通じて流れる、深く根づいた価値観である。米国の大衆文化において、金持ちや権力者(企業幹部、政治家、官僚)がどのように表現されているかお気づきだろうか。たいていは無能で腐敗している。
もっとひどい描写の場合もある。
米国の政界は、米経済と同様に、非常に起業家的である。市場があるところには製品が生まれる。支持されない戦争が行われているときには反戦派の候補が出てくる。有権者が重税に不満を抱いていれば、減税派の候補が出てくる。大衆がいつもながらの政治にウンザリしていれば、1992年のロス・ペロー氏のように、反政界の横断幕を掲げるアウトサイダーが突然浮上する。今日では、それがトランプ候補なのだ。
出口調査は、トランプ支持者を最もうまく定義する一つの特性が「怒り」であることを明らかにしている。
「連邦政府の仕事ぶりについてあなたの感情を最も的確に表現する言葉はどれですか」という質問に対して、「わくわくする」「満足している」「不満がある」ではなく、「怒っている」と答える有権者のほとんどが、トランプ支持なのだ。
彼らは何に怒っているのだろうか。答えは2つ、景気の後退と、文化的な影響力の低下だ。
トランプ候補を最も強く支持しているのは、米国社会のうち衰退している部門の有権者だ。ニューヨーク・タイムズによる調査「トランプ主義の地域分布」によれば、トランプ候補の支持率が最も高いのは、高校の卒業証書を持たない白人の比率が高く、民族的・宗教的マイノリティーの数が少なく、農業や製造業など「旧経済」タイプの雇用が多く、労働参加率が低い地域だ。たとえば、アパラチア地方である。
つまり、米国民のうち、景気の回復から取り残され、外国との貿易により雇用を脅かされ、人口は減少し、伝統的な宗教・文化に基づく価値観が挑戦を受けているような人々だ。彼らは怒れるレジスタンスであり、トランプ候補は彼らレジスタンスのリーダーなのだ。
イデオロギー的にはどうか。彼らは、オバマ大統領のような、スノッブな謙遜さを備えたリベラルを憎悪している。
そして、無頓着(むとんちゃく)に彼らを搾取していくミット・ロムニー氏のような保守派も憎悪している。
トランプ候補を止めようとする保守派の努力が失敗すれば、同氏と大統領の座のあいだに立ちふさがる存在はただ1人、ヒラリー・クリントン氏だけだ。多くの有権者にとって苦渋の選択になろう。どちらも有名人で、長年にわたって世間の視線にさらされており、米国民の大部分から否定的に見られている。ただしクリントン氏よりもトランプ氏の方がよけいに嫌われている、という点が民主党にとっては心強い。
米国民は皆、オハイオ州デイトンで9月26日に行われるトランプ対クリントンの最初の公開討論を期待していい。
きっと火花が散るだろう。視聴率は過去最高を記録するかもしれない。
以上、ロイター記事
>米金融界の大物たちは、反トランプの広告に何百万ドルも注ぎ込み、同氏が党大会代議員の過半数を獲得するのを阻もうとしている。
⇒トランプの集会の邪魔をする団体は米金融界の大物からの支援?
>彼は、昔ながらの孤立主義を信奉
⇒日本にとっては、自分の国は自分で守ることにチェンジしないといけない
>最も彼を支持しているのは、大学教育を受けていない白人
⇒プアホワイトが熱狂的に支持
>トランプ候補はロシアのプーチン大統領への敬意を表明している。
⇒ロシアとの関係改善
>多くの米国民は、トランプ候補が言うのと同じ理由で、「強い男」を望んでいるように見える。
⇒リーダーは強くないといけない
>彼は自分流にやりたがっている。
⇒金融界がコントロールできなくなる?
>エリートへの不信は、米国史を通じて流れる、深く根づいた価値観である。米国の大衆文化において、金持ちや権力者(企業幹部、政治家、官僚)がどのように表現されているかお気づきだろうか。たいていは無能で腐敗している。
⇒現状のアメリカの体制に不信感を国民は持っている
以上、トランプ人気に関する要点である。
日本独立が現実になる可能性大である。