アメリカのジョー・バイデン大統領は9月24日、ホワイトハウスで、アメリカ、インド、オーストラリア、日本の4カ国首脳による初の対面による会談を開催する。バイデン大統領にとってこれは明確に、中国との対峙を目的とした外交政策の最前線だ。オーストラリアに原子力潜水艦を提供する密約を発表したことも、この会談の重要性を物語っている。
だが、日本の代表である菅義偉首相が、この首脳会談の数日後に退陣することは残念ながら、誰も気にとめていないようだ。
主要メディアもほぼ「無関心」
日本は現在、国のリーダーが誰になるかがまったくわからないという、近年最も政治的に不明瞭な時期にある。政権与党・自由民主党が9月末に党首を選出したとしても、その後に2回の選挙を控えており、与党連合は、不満を抱えた有権者や、活を入れ直した野党と対峙することになるのだ。
しかし、アメリカでは政治関係者や、主要メディアの記事にさえも、アジアの最重要同盟国である日本の今回の総裁選についての言及はほとんど見られない。バイデン政権の高官らと接触のある主要な日本通アメリカ人の何人かと話をしてみたが、みな一様に、今回の総裁選への関心は皆無に等しいと報告してくる。
「彼ら(バイデン政権)が注意を払っていることを願っている」とワシントンのシンクタンクである「アメリカ進歩センター」に拠点を置く日本アナリスト、トバイアス・ハリス氏は言う。だが、「バイデン政権が現在これ(総裁選)を本当に注視しているかどうかはわからない。私には何も聞こえてこない」。
これは主に、アメリカ政府の注目がほかのところに向いているからだ。第一に、新型コロナウイルスとの継続的な戦い、そして経済回復、さらには外交政策においても、アフガニスタンでの壊滅的な敗北とその余波という問題がある。
もちろん、バイデン大統領の中国政策おいて日本は重要な役割を担う。政権内部のある関係者が筆者に対して「日本は非中国だ」という言い方をしたことでもそれはわかる。しかし、アメリカの政策立案者の間には、日本の保守的な官僚を後ろ盾として自分たちに忠実である自民党の議員たちが、永久に政権を維持するとの信念が深く浸透している。
「基本的な見解としては、安定していて欲しい、というところだろう」とジョージワシントン大学の日本専門家であるマイク・モチヅキ教授は言う。
「誰が首相かという点では安定しないかもしれないが、システムとしては安定している。首相が次々と入れ替わる時代が再び訪れるのか。そしてそれが同盟関係を展開していく上で問題になるか。バイデン政権は問題だとは思っていない。基本的には同じ層が運営するのだから」
日本に対するこうした見方が、菅首相の後任が誰になるのか、ということへのアメリカ政府の無関心さにつながっている。「自民党はどこへも行かないという安心感がある」と、安倍晋三元首相初の英語での伝記の著者であるハリス氏は言う。「日本に関しては心配無用」との信念があるのだ。
しかしハリス氏は、過信は禁物だとし、野党連合からのみならず、安倍氏が支持する高市早苗氏の周辺に動員された党内の過激分子からの挑戦の可能性をも指摘する。「日本の根本的な安定への疑問について、軽視すべきではない」と、同氏は警告する。
河野氏を特に好む空気はない
自民党内で候補者が出そろった今、アメリカ政府にとって「都合のいい」の人物はいるのだろうか。あるいは少なくとも、日本専門家たちの小さなコミュニティーの中ではどうなのか。主要候補の2人についてはよく知られている。いずれも外務相を務めたことのある岸田文雄氏と河野太郎氏だ。アメリカ政策立案者は、その人気と英語力から、河野氏が首相になることを好むだろうとの憶測がある。しかし、そうとも言えないようだ。
「河野氏のほうを特に好む空気は感じられない」と、オバマ政権時代に防衛上級顧問を務め、シンクタンク「カーネギー国際平和財団」からワシントンの「笹川平和財団」に移籍したばかりのジェームズ・ショフ氏は話す。
「基本的にアメリカの政策立案者は、岸田氏でも河野氏でも構わないと思っている。一番の関心事は、政権の強さと継続力だ。菅氏が出馬を見送った際には、勢いが失われる懸念と、日本の政治はどこに向かうのかという不安とで、全体に軽くため息が漏れた」
安倍氏が、基本的経済政策の領域においても外交政策においても、現在確固たるものとなっている青写真を確立させ、アメリカとの同盟関係や、ヨーロッパとの関係改善、中国を戦略的ライバルと見る幅広いコンセンサスなどを固定化させたのだと考えられている。「どの候補者もそこから逸脱してはいない」とハリス氏は述べる。違いは、「そのやり方と実行力」の問題だという。
その中の例外が高市氏で、同氏は戦没者を祀った靖国神社への参拝を公約に掲げるなど、戦時中の歴史について強硬な見解を示しており、これは日米韓の三国同盟を修復しようとするアメリカ政府の希望を実質的に打ち砕くことにもなる。高市氏が首相に就くことは、「中国にとって都合のよいプロパガンダとなり……日本はアメリカにとって、一緒にやりにくい同盟国になる」(ハリス氏)。
高市氏が当選する見込みは薄いとされるものの、河野氏と強硬右派である同氏との決選投票にでもなれば、安倍氏や麻生太郎氏といった主流派閥のリーダーたちが結束して高市氏に付くのではないかとの懸念もある。
広く訴求力をもつ河野氏とは異なり、そのような強硬派を党首に据えた自民党では、予定されている衆院選や参院選で深刻な敗北を招く恐れがある。「もしも高市氏が当選すれば、困ったことになる」とショフ氏は語る。
安倍氏が高市氏を支持する「思惑」
アメリカの専門家たちには、安倍氏がなぜ高市氏を支持するのかが不明だ。一部には、安倍氏に対する高市氏の個人的忠誠への見返りであり、また、誰であろうとも首相になる人物の背後で自らを影の勢力に据えようとする試みだとの見方もある。
さらに問題なのは、これは、安倍氏自身の思想的見地を反映しているのではないかと感じられることだ。自身が首相であったときには、政治的な理由や、アメリカからの圧力もあり、隠したり諦めたりせざるを得なかった見解だ。
「ふたりの安倍氏が存在する」とモチヅキ教授はいう。「実際主義の安倍氏と、観念論的な安倍氏だ。政権を降りた今は、観念論的な安倍氏が語っている。これが、一連の成り行きの中の厄介な問題となっている」。
安倍は、菅首相が憲法改正を推し進めることに失敗し、北朝鮮や中国の基地への報復攻撃を実行する政策を採用することに及び腰であった点を不服としていた。高市氏は立候補に当たり、この2つの政策の実行をあえて公約に掲げた。岸田氏も、保守派へのアピールを試みてはいるが、「安倍氏は、岸田氏がこれをやり遂げるだろうとは信用していない」とモチヅキ教授は考える。
アメリカの政策立案者にとっては、明らかに高市氏が総裁となった場合の自民党が最も厄介ではある一方で、ある意味、河野氏が最大の挑戦者となる可能性がある。
河野氏はやや型破りであるという、その通りの評価を受けており、国内の世論に非常に敏感な、独立独歩の人物だ。同氏は安全保障同盟を強く支持しているが、その一方で、アメリカの見解に無条件に従うことはしない姿勢も見せてきた。
それを明確に示す例として、同氏は防衛相であった際に、国内の激しい反対を受け、物議を醸していた「イージス・アショア」ミサイル防衛システムの契約をキャンセルするという決断を下している。
河野氏は自身の著書で、経済、エネルギー、テクノロジー政策といった分野における日本の「戦略的自律」の概念を信奉している。「私は彼が、他国への攻撃や台湾への関与を積極的に推し進めるとは思わない」と河野氏本人と何度も会っているショフ氏は考えている。
太郎氏は父親と同じなのではないか、という疑念
自民党のより強硬保守派議員の間には、河野氏が、自民党の元幹部であった父親の河野洋平氏と同じ見解を持っているのではないかとの危惧がある。父親の洋平氏は、戦時中に日本は韓国や中国などの女性たちを帝国軍の慰安所で強制的に働かせていた責任があると認めようとしたために非難されている。
「太郎氏は父親と同じなのではないかとの疑念を持たれている」とモチヅキ教授は話す。「本人はそれを意識しており、中国や韓国に対してはあえて弱腰ではないところを示した。安倍氏はそれを評価したが、本能的には、河野氏はよりバランスのとれた外交政策をとっている」。
自民党総裁選で誰が選出されようとも、アメリカの政策立案者は、日本では当面不確実性が続くと見ており、4カ国会談で取り上げられるような大規模戦略の実行が遅れる可能性がある。
政府の現場レベルでは、中国との競争において重要な構成要素となる科学技術の革新、サプライチェーンの連携、サイバーセキュリティー、経済安全保障など、より広範囲に具体的政策を構築しようとしているが、一部はすでに停滞してしまっている。
「われわれは多くの会合を重ねているが、全体的に勢いを欠いている」と、笹川平和財団のワシントン事務所で新たに同盟関係に関する戦略を率いることになるショフ氏は言う。次の閣僚が誰になるか決まるまで、できることも限られている。「われわれは2カ月も、物事が決まるまで待ち続けているわけにはいかない」とショフ氏。「すでに出遅れているというのに」。
貼り付け元 <https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%81%AB-%E6%9C%80%E3%82%82%E9%83%BD%E5%90%88%E3%81%AE%E3%81%84%E3%81%84-%E6%AC%A1%E6%9C%9F%E7%B7%8F%E8%A3%81%E3%81%AF%E8%AA%B0%E3%81%8B-%E5%BF%85%E3%81%9A%E3%81%97%E3%82%82%E6%B2%B3%E9%87%8E%E6%B0%8F%E3%81%8C%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%82%8F%E3%81%91%E3%81%A7%E3%82%82%E3%81%AA%E3%81%84/ar-AAOGjll?ocid=msedgdhp&pc=U531>
以上、東洋経済
アメリカにとって首相が誰になろうが気にしてないのかな?
問題は、高市さんの場合、靖国参拝?
河野太郎は父親と同じ? チャイナのスパイになる?
ということは、岸田氏になることが無難とみているのかもしれない。
日本はアメリカの保護国なので、裏で手を回されることが考えられるが
アメリカバイデンも頼りないので、日本の勢いで首相は決まるように
思える。