はさみの世界・出張版

三国志(蜀漢中心)の創作小説のブログです。
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臥龍的陣 涙の章 その62 あとわずかの真相

2022年11月20日 10時01分55秒 | 英華伝 臥龍的陣 涙の章
「判っている。だが、逆に聞かせてくれ。
それほどまでに憎む相手なのに、どうして、こんな正体のわからぬ神まで作り上げて、母親の復活を願っているのだね」
わめき散らされるかと予想した孔明であるが、意外にも花安英《かあんえい》は理性的に答える。
「復活してほしいのは、あの女じゃなくて、『母親』なのです。うまくいけないけれど」
妙な表現だな、と孔明は怪訝に思ったが、花安英はたずねてくる。
「だけど、どうしてわたしの母のことがわかったのですか? 
ああ、あなたの奥さんがおしえてくれたのですか?」

意外なところで意外な名前がでてきて、むしろ孔明のほうが動揺する。
「妻? あれは関係ない。月英は君らにはいっさい関わりがないぞ。
わたしが君の出自について、もしやと思ったのは、君が子龍に蔡瑁と蔡夫人の関係を教えたからだ。
なぜそんな真似をしたのかわからなかったが、さっきの君の言葉で確信した。
最初は、子龍を誘惑する手段かとも思ったのだが、そうではない。
君は、子龍を『兄』だと思っているのだ。共に、潘季鵬の下で訓練を受けた者として。
だからこそ、子龍ならば自分を助けてくれるのではと、期待したのではないかね。
そして蔡瑁と蔡夫人の最大の秘密を見せてやり、協力を得ようとした。

本来ならば、その役目は程子文《ていしぶん》が果たすべきものだったかもしれない。
だが、かれは、自分自身を救うことで手一杯で、とても君まで救うことができなかった。
君は程子文の力量に怒り、離れる。そうしてあろうことか」

殺してしまったのだ、と言葉をつづけるより先に、しゅっと風を斬る音がして、孔明のほほぎりぎりに、花安英の手にしていた、小刀がかすめた。
闇の中に立つ花安英は、激しく震えている。

「黙るがいい、諸葛亮! わたしは、程子文を殺してない!」
孔明は、その怒りに触れて、うろたえる。
斐仁《ひじん》は、復讐のために襄陽城へやってきたとき、花安英の従者に化けていた男…潘季鵬《はんきほう》に案内されて、程子文の遺体をみつけた、と証言した。
ふつうに考えるならば、潘季鵬は、すでにそこに程子文の遺体があるということを知っていた。
そして、斐仁を罠にはめるために、わざわざ部屋に案内したのだろう。
あとから部屋に入ってきた花安英も、同様だったはず。

そうではなく、本当に花安英は知らなかった? 
斐仁と花安英、双方を騙していたのは、潘季鵬だった?

「わたしが程子文を見つけたとき、どれだけ打ちのめされたか貴様にわかるものか! 
たしかに仲たがいをしたとも。おまえとかれが再会してからは、顔をあわせれば喧嘩ばかりだった! 
だからわたしはおまえが憎かった。おまえが程子文を変えてしまったからだ! 
わたしは程子文が理解できなかった。
『壷中』を裏切ろうとしているのが、なぜなのか、わたしを捨てようとしているのがなぜなのか!

でも殺そうなんて、一度だって思ったことはない! 一度たりともだ!」
「では、なぜ斐仁は程子文の部屋に案内されたのだ。潘季鵬はなにも君に教えていなかったのか」

花安英の表情に、暗い影がさす。
「新野から帰ってきた潘季鵬は、いつになく荒れ狂っていたよ。
わたしの顔を見るなり言った。
これから異分子をのぞく『仕事』をしなければならない。おまえも協力するようにと。
これから新野から客がくる。いまから死体を作って、そいつを死体のある部屋に案内する。
おまえは派手にわめき散らせ、と。
なんだかわからなかったけれど、ああなったときの潘季鵬は手が付けられない。
協力するしかないんだ。
でも、その『仕事』が、まさか程子文を殺すことだったなんて、予想できなかった。
知っていたら、あの場であの男を殺していたさ!」

「では、誰が程子文を殺したのだ?」
「わたしじゃない。あなた方が、『狗屠《くと》』と呼ぶやつだ」
「なに?」

つづく


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おかげさまで、投稿文字数が26万文字を超えたようです。
良く書いたなあと思うと同時に、よく読んでもらえているなあと感謝しきり!
続編の制作もがんばりますので、臥龍的陣、さいごまでお付き合いくださいませ♪


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