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帯とけの枕草子〔六十一〕はしは
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、君が読まされ、読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言 枕草子〔六十一〕はしは
はしは、あさむつのはし。ながらのはし。あまびこのはし。はまなのはし。ひとつはし。うたゝねのはし。さのゝ舟はし。ほり江のはし。かさゝぎのはし。山すげのはし。をつのうきはし。一すぢわたしたるたなはし、心せばけれど、名をきくにをかしき也。
清げな姿
橋は、朝睦の橋。長柄の橋。天彦の橋。浜名の橋。一つ橋。うたた寝の橋。佐野の舟橋。堀江の橋。かささぎの橋。山菅の橋。小津の浮橋。一筋渡してある棚橋、心狭いけれど名を聞くとおかしいのである。
心におかしきところ
身の端は、朝睦むはし、永らのはし、天彦のはし、端間名のはし、一つはし、うたた寝のはし、さのの夫根はし、堀り江のはし、天の川わたすはし、やます毛のはし、おつの浮はし。一筋わたす多無はし、心せばいけれど、名を聞くとおかしいのである。
言の戯れと言の心
「はし…橋…端…身の端…おとこ…女」「あさむつ…朝睦む…朝六つ」「ながら…長い柄…永い情態」「あまびこ…天彦…天の男神」「はま…浜…嬪…女」「な…名」「さの…ささやかな…ささいな」「舟…夫根…おとこ」「掘り江…まぐあい」「江…女」「山すげ(草木の名)…山すけ…やます毛」「山…沢山…山盛り」「す…女」「たなはし…欄干がない橋…粗末な端…多無端…単発の端」「心せばし…心狭い…度量が無い…直情である」
橋の歌を聞きましょう。古今和歌集 巻第十四 恋歌四 よみ人しらず
まてといはばねてもゆかなんしひてゆく こまのあしおれまへのたなは
(待ってと言ったら寝ていってよ、強いて帰って行く、駒の足折れ!前の棚橋! ……待ってと言えば、また寝ていってよ、むやみに逝く、股間の悪し折れ、お前の多無端)。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人しらず (2015・8月、改定しました)
枕草子の原文は、新日本古典文学大系 枕草子 (岩波書店)による