帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔六十一〕はしは

2011-05-04 00:07:03 | 古典

 

 



                    帯とけの枕草子
〔六十一〕はしは


 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、君が読まされ、読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。

 

 清少納言 枕草子〔六十一〕はしは

 はしは、あさむつのはし。ながらのはし。あまびこのはし。はまなのはし。ひとつはし。うたゝねのはし。さのゝ舟はし。ほり江のはし。かさゝぎのはし。山すげのはし。をつのうきはし。一すぢわたしたるたなはし、心せばけれど、名をきくにをかしき也。

 清げな姿
 橋は、朝睦の橋。長柄の橋。天彦の橋。浜名の橋。一つ橋。うたた寝の橋。佐野の舟橋。堀江の橋。かささぎの橋。山菅の橋。小津の浮橋。一筋渡してある棚橋、心狭いけれど名を聞くとおかしいのである。

 心におかしきところ
 身の端は、朝睦むはし、永らのはし、天彦のはし、端間名のはし、一つはし、うたた寝のはし、さのの夫根はし、堀り江のはし、天の川わたすはし、やます毛のはし、おつの浮はし。一筋わたす多無はし、心せばいけれど、名を聞くとおかしいのである。

 言の戯れと言の心
 「はし…橋…端…身の端…おとこ…女」「あさむつ…朝睦む…朝六つ」「ながら…長い柄…永い情態」「あまびこ…天彦…天の男神」「はま…浜…嬪…女」「な…名」「さの…ささやかな…ささいな」「舟…夫根…おとこ」「掘り江…まぐあい」「江…女」「山すげ(草木の名)…山すけ…やます毛」「山…沢山…山盛り」「す…女」「たなはし…欄干がない橋…粗末な端…多無端…単発の端」「心せばし…心狭い…度量が無い…直情である」


 橋の歌を聞きましょう。古今和歌集 巻第十四 恋歌四 よみ人しらず
 まてといはばねてもゆかなんしひてゆく こまのあしおれまへのたなは
 (待ってと言ったら寝ていってよ、強いて帰って行く、駒の足折れ!前の棚橋! ……待ってと言えば、また寝ていってよ、むやみに逝く、股間の悪し折れ、お前の多無端)。

 
 伝授 清原のおうな

聞書  かき人しらず  (2015・8月、改定しました)

 枕草子の原文は、新日本古典文学大系 枕草子 (岩波書店)による