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帯とけの枕草子〔七十五〕あぢきなき物
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言 枕草子〔七十五〕あぢきなき物
あぢきなき物、わざと思ひたちて宮づかへにいでたちたる人の、物うがり、うるさげに思ひたる。
とりこのかほにくげなる。
しぶしぶに思ひたる人をしゐてむこどりて、思さまならずとなげく。
清げな姿
あぢきなき物(苦々しいがどうしょうもないもの)。わざわざ思い立って宮仕えに出でている人が、つらがって、めんどくさく思っている。
養子の顔、かわいげがない。
渋っている人を強いて婿に取って、思いどおりではないと嘆く。
心におかしきところ
味気無い物、わざわざ思いも物も立って、宮こへ送り届けるよと奉仕し始めた人が、つらがって、めんどくさく思っている。
取り入れた子の君、彼お、快くない。
渋々で思い垂る人お、強いて婿に取って、思いを思えないと嘆く。
言の戯れを知り言の心を心得ましょう。
「あぢきなき…不当だ…にがにがしい…不満だがどうしょうもない」「物…物体…何とも言えないもの…状況…情況…者」「宮づかへ…宮中でお仕えすること…女を宮こへ送り届けること、なま宮づかえともいう」「宮…宮こ…京…絶頂」「かほ…顔…彼ほ…彼お」「にくげ…みにくいさま…かわいげがない…不快なさま」「思さまならず…思っていた様子ではない…思いを思う様に成らず」。
おとなの女には、すぐにわかる「あじけなさ」でしょう。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人しらず (2015・8月、改定しました)
枕草子の原文は、新 日本古典文学大系 枕草子(岩波書店)による