帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔七十五〕あぢきなき物

2011-05-21 00:02:33 | 古典

 



                     帯とけの枕草子〔七十五〕あぢきなき物



 
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言 枕草子〔七十五〕あぢきなき物

 
 あぢきなき物、わざと思ひたちて宮づかへにいでたちたる人の、物うがり、うるさげに思ひたる。
 とりこのかほにくげなる。
 しぶしぶに思ひたる人をしゐてむこどりて、思さまならずとなげく。


 清げな姿

 

あぢきなき物(苦々しいがどうしょうもないもの)。わざわざ思い立って宮仕えに出でている人が、つらがって、めんどくさく思っている。
 養子の顔、かわいげがない。
 渋っている人を強いて婿に取って、思いどおりではないと嘆く。


 
心におかしきところ
 
味気無い物、わざわざ思いも物も立って、宮こへ送り届けるよと奉仕し始めた人が、つらがって、めんどくさく思っている。
 取り入れた子の君、彼お、快くない。
 渋々で思い垂る人お、強いて婿に取って、思いを思えないと嘆く。


 言の戯れを知り言の心を心得ましょう。

 「あぢきなき…不当だ…にがにがしい…不満だがどうしょうもない」
「物…物体…何とも言えないもの…状況…情況…者」「宮づかへ…宮中でお仕えすること…女を宮こへ送り届けること、なま宮づかえともいう」「宮…宮こ…京…絶頂」「かほ…顔…彼ほ…彼お」「にくげ…みにくいさま…かわいげがない…不快なさま」「思さまならず…思っていた様子ではない…思いを思う様に成らず」。



 おとなの女には、すぐにわかる「あじけなさ」でしょう。



 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人しらず  (2015・8月、改定しました)



 枕草子の原文は、新 日本古典文学大系 枕草子(岩波書店)による