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帯とけの枕草子〔八十一〕もののあはれ
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言 枕草子〔八十一〕もののあはれ
もののあはれしらせがほなる物、はなたりまもなふかみつゝ物いふ声、まゆぬく。
文の清げな姿
何となく哀れを知らせ顔な情況、鼻みず垂れ、絶え間も無くかみながらもの言う女の声。眉抜く女。
心におかしきところ
ものの哀れを知らせるかおなる物、ものはな垂れ、間もなく彼方を見つつもの言う男の声、小枝、間より抜く。
言の戯れと言の心
「物…もの…言い表し難い情況…はっきり言い表したくないもの」「あはれ…いたわしい…いとしい…さみしい」「かほ…顔…いかにもそのような様子である…彼お…もの…おとこ」「はな…鼻みず…花…先端」「たり…垂り…垂れる…垂らす」「まもなく…間も無く…絶え間なく…間もおかずすぐに」「声…こゑ…こえ…小枝…おとこ」「まゆ…眉…間ゆ」「間…女」「ゆ…より…から…動作の起点を示す」。
男に去られた哀れな情況を、和歌の表現方法と同じく「清げな姿」に「心におかしきところ」を添えて表してある。言いかえれば、空虚な悲しみとその比喩の心におかしきところを、清げな姿で包んで表してある。
空しきわが心の哀れは、生の感情として感じられるでしょうか。千年の時を隔てて伝わるならば、和歌の表現方法のすばらしさを讃えるべきでしょう。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は「枕草子 新日本古典文学大系 岩波書店」による