自宅ちかくの本屋さんを久しぶりにのぞいたら、ネルケ無方さんが本を出していた。
『迷える者の禅修行~ドイツ人住職が見た日本仏教』(新潮新書)。
ネルケさんは、兵庫県但馬地方の山奥にある安泰寺の住職だ。
安泰寺は、大正時代に洛北に開かれ、有名な沢木興道師、内山興正師も住職を務めた曹洞宗の禅道場。1976年に但馬に移ってきたという。数年前、ふとしたことから、ネルケさんが開設した安泰寺のホームページを見つけて、時々、読ませていただき、勉強もさせていただいた。
いつかは、安泰寺の座禅会に加わりたいと思いつつ、すごく遠いのと、冬は雪に閉ざされ、夏は夏草に覆われ、修行もかなり厳しそうなので、実現しそうにない。
ホームページのネルケさんの文章もすごいが、夫人のともみさんの叫び声に近い本音や、修行に参加した人々の体験談も載っていて、安泰寺の厳しさが伝わってくる。
そのホームページに掲載されたネルケさんの修行物語が下敷きになっているが、編集者に厳しく書き直しを命じられたらしい。
本にするには、書き手の思いもさることながら、日本の一般読者の興味を引くものでなければならず、とくに、外国人が著者である場合には、ほとんどと言っていいほど、「外国人が見た日本」というテーマが中心に据えられる。
私は、こういう視点で本を作るのは、そろそろ、やめた方がいいと思う。
ネルケさんは、クソがつくほどまっすぐに、道元禅師の教えを実践しようとしている人で、その試行錯誤のなかから、自分が学びとったものを、ホームページに書き綴ってこられた。
読みながら、こちらの胸が苦しくなるような内容のものも多かった。
ネルケさんは、自分で大事だと思っているような箇所も、削られてしまったとあとがきに書かれているが、私は、削られてしまったところをこそ読みたいと思う。
でも、本は売れないと困るから、編集者は、鬼のようになって、ネルケさんの大事だと思った箇所を削除したんだろうな。
もちろん、ネルケさんの文字通り、血のにじむような修行の話は、先輩の僧、雲水たちの様子なども含めて、とても興味深く、一般の読者にも受け入れらるような本に仕上がっている。