ロルフィング・テクニーク学習会の続きを書かなければならないのだが、その前に、マスコミが報じている維新の会大敗について、思うところが多々あるので書く。
わが居住地域でも市長選があって、維新の会からも立候補した。結果的には、マスコミが大敗と報じるほど、大差で負けたが、その敗因について新聞、テレビが報じている内容が、ちょっと違うんじゃないのと言いたい。
マスコミが報じている敗因は
①大阪では維新の会の議員が大勢いて、選挙活動が十分だったが、今回は候補者をささえる地方議員がいなかった②大阪では、既成の政治を批判することで維新の会の主張がアピールできたが、今回は、却って維新の会の主張が攻撃材料にされた③候補者が悪かった④橋下徹代表頼みだった等々。
維新の会そのものが拒絶されたのではないかとの記者の質問に、橋下徹代表は「それもあるかもしれないが、維新の会の政策を理解してもらうのに時間が足りなかった」と答えている。
記者がこういう質問をしたのは、選挙を取材するなかで、記者は有権者の拒絶反応を感じていたのだと思う。橋下代表はそれを分かっているのか分からないが、維新の会の候補者もそれを感じていたのではないかと思う。
テレビで、候補者が悪すぎるとコメントした大学の先生がいたが、果たして維新の会から立候補する人間に、良い候補者がいるのかどうか、私は大いに疑っている。
維新の会と橋下代表について、尊敬する内田樹さんが、たびたびブログに書いている。その内容については長くなるので書かないが、いちいち納得できる内容である。
その内田さんのブログに対して、橋下代表がツイッターで批判しているのが、あるサイトに再録されていた。それを読むと、橋下という人は、内田さんの言っていることを全然理解できていない。理解できないので、ただ「大学の中でものを言うばかりで何も実践していないのに、何が分かるか。夢を追っているばかりだ」というようなことを繰り返すばかりである。
まさに、内田さんの維新の会批判の意味が理解できないような人間が、維新の会の候補者なのだ。
今回の市長選でも、維新の会の候補者の主張や掲げている政策を読むと、いろいろ言葉は並べているが少しも心に響いてこない。
有権者は、内田さんの言っていることを多分理解できるだろうと思う。内田さんの言葉や理論そのものは分からなくても、肌で感じることができる。大阪と違って、この地域の有権者はもっと大人なのだ。
おっと、大阪の有権者がアホだというのではない。大阪の地方自治は、長い間、批判勢力もなく、溜まりにたまってきたヘドロの悪臭があまりにもひどかった。それに対する不満が、維新の会への期待となって、票が集まったにすぎないと私は思う。 しかし、人々の不満に付け込み、威勢のいい言説で政治勢力を拡大するのは、ナチズムやファシズムのやり口である。
大阪で思い出したことがある。維新の会が始めほど支持の勢いが無くなったとき、あるテレビで、仏教者の釈徹宗さんにコメントを求めたことがある。釈さんいわく。「文楽の補助金を削ることで、文楽の太夫さんや人形遣いの人たちに横柄な態度で臨んだでしょう。あれが悪かったんとちがいますか。大阪人は、文楽を自分たちの文化として、誇りを持っている。それを傷つけられたという気持ちがあるんではないでしょうか」。
住太夫さんを始めとする文楽協会の技芸員に対して、当時の橋下知事が横柄な態度でものを言っているのをテレビで見たとき、私も胸が痛んだ。住太夫さんたちが、どんなに苦労して文楽を守ってきたかを知っているなら、あんな物言いはしないだろうと思った。橋下という人は、文化が分からない人間ではないかとも思った。
今回の選挙結果は、この地域の住民の見識だ思う。昔から、この地域は、じっくりとお酒を醸造するように、文化や政治意識を育ててきた。文化的にも政治的にも社会的にも成熟している。それに加えて、阪神淡路大震災と、その後の復興について自治体のやり方を経験するなかで、自分たちの生活に何が本当に大事かを肌で感じ取ってきた。3・11の東日本大震災で、その思いを新たにしたと思う。
自分たちの街は、自分たちの力で、急がず、あわてず、じっくり話し合いながら創っていくしかない。そして、外側ばかりを変えたところで、自分たち自身が変わらなければ、望むような街づくりはできないということを。
維新の会が大挙して乗り込んできて、何やらわあわあ叫んでいることに、住民は拒絶反応を示した。彼らの軽々しい言葉で、自分たちの街をひっかきまわされてはかなわないという気持ち。
私は、郷土意識が強いほうではない。自分の街に対して、何から何まで満足しているわけではない。それでも、今回の選挙で、維新の会が好き勝手なことを言っていることに、嫌悪感や危険な臭いを感じた。現職の候補者が駅前で演説しているところに偶然行き会い、思わず駆け寄って握手し、「維新の会なんかに負けるな」と言った。候補者は「負けへん。絶対、負けへん」と手を握り返してきた。
私が言いたいのは、マスコミや維新の会の人間は、いろいろ敗因を並べているけれども、いちばん大事な有権者の意識について、何も論じていないということである。
これは、経済が停滞していることとも大いに共通点がある。
つまり、経済でいえば、消費者の意識、政治でいえば、有権者の意識が変化していることを、経済界も政界も、マスコミも理解していないということだ。