【相模原事件】「戦後最大級の大量殺人」再発防止は、どうなし得るのか
7月25日未明、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人の障害者が刺殺される事件が起こった。逮捕された植松聖容疑者は「障害者は死んだ方がいい」と日頃から話していたという。
事件前の備えはどうだったのか。どのような対策を取ればよいのか。テロや危機管理を専門とする、日本大学危機管理学部教授の福田充さんに聞いた。
今回の事件が起こった背景をどう捉えるか。
自分の正当性を社会に訴えたいという政治性の面でテロリズム、そして障害者をターゲットとしたヘイトクライム、この2つの要素があります。
さらに容疑者の精神状態や、薬物、交友関係、多くの要素が絡み合った境界的な事例ですが、まずは容疑者本人の責任を問うべきで、簡単に社会が悪いという問題にすべきではない。
単なる自暴自棄犯とは一線を画すからです。例えば、2008年に起こった秋葉原通り魔事件では、犯人は人生がうまくいかない、だから周りも殺して自分自身の人生も破壊するつもりだった。
ところが、今回の植松容疑者は、衆院議長への手紙からもわかるように、自分は正義だと信じ、人を殺し、金も要求して、2年で牢屋から出せ、と生きるつもりでいる。歪んだ自己承認欲求や自己顕示欲などの自己愛がヘイトクライム、テロリズムへと駆り立てている。単純に労務環境、生育環境と簡単に結びつけるべきではないと思います。
テロリズムというには主張が明確でない印象がある。
政治的主張からテロリズムを起こす人間であっても、もともとのきっかけは、自分が挫折した、人間関係がうまく構築できない、といった個人的要因であることが多いんです。オウム真理教も、欧州のイスラム系のテロにも同じ側面があります。
ヘイトクライムとしては、どのように捉えられるか?
障害者に対しての人権配慮が国際的に定着しているので、障害者へのヘイトは社会問題になるほど大きなうねりにはなっていません。これには、ナチスドイツの優生学とナショナリズムが結びついた前世紀の反省がその背景にあります。
世界でこのニュースが大きく報じられるのも、前世紀的なヘイトクライムだから、という側面はあるでしょう。
この点でも社会の問題というよりは、彼自身の施設での就業経験や、個人的な挫折によるところが大きかったのだろうと思います。ヘイトが向かう先が前時代的、という意味で、世界的にも特殊な事例です。
どうやって危機管理に取り組めばよかったか。
まずは「これは予測できた」という側面を洗い出すこと。
今回のケースで言えば、衆院議長に異常な手紙を送り、措置入院となった。おそらく、ここまでの対策は正しかったと思います。
問題はそのあとです。大量殺人について言及した人物を、退院させたタイミングは正しかったか。仮に正しかったとして、退院後に家族と暮らし、通院することになっていたのに、放置されていた。ここはフォローすべきだったでしょう。
事件を起こす場所も、殺す対象も明確に主張する人物がいた。この情報をもとに、どれだけ備えがされていたかは検証されるべきですね。
設備や人員を足すのも、法整備も簡単ではない。
まず振り返るべきなのは、すでにある手続き、ルールがきちんと運用されていたか。DVやストーカー問題でも、制度はあるが運用できていなかった結果、人が死んでしまうケースがある。これは運用を見直すだけで、ある程度防げます。法整備や、コストのかかる設備はその次でしょう。
今回の事件も被害者の多さから、異常さばかりが強調されますが、だからといって何もできなかった、というのは短絡的。その時、持っていた情報でどれだけ対応できたかを振り返り、改善すべきです。
大量殺人のような滅多に起こらない、しかし多くの命がかかっている問題に対して、どのように対策を考えればいいのか。
大前提は、ゼロリスク社会はありえないということ。とてつもないコストがかかりますし、監視カメラだらけ、鍵だらけの社会が幸せか、という議論もある。ゼロリスクはありえないから、どこまでやるかというバランスについて、議論と合意が必要なんです。
必要な対策は何か。それはインテリジェンス。情報に基づいて、必要な対策を取るということです。
何の脈絡もなく突然襲われる、という想定から始めるのではなく、襲撃予告がある、危険人物がいる、と情報を得たときに、徹底した事前対策を取る、という考えです。すべての障害者施設や学校で、警備システムを強化しようというのは高コストで無意味です。だから、情報をもとにリスク評価し、見えるリスクに柔軟に事前の対応をしましょう、ということですね。リスクの高いところから、お金をかけて人感センサーを取り付けるようなインフラ整備をし、人を増やしていけばいいのです。
滅多に起こらないから何もしなくていい、という極論。二度とあってはならないから、どれだけコストをかけてもリスクをゼロにする、という極論。
このどちらでもなく、その間を具体的に考え、冷静に話し合い、合意形成することが大事だと思います。
☆
ここは、これ以上、税金を使う必要無しムダ...信念を持って深夜に計画的に実行、何ものこのこ玄関から入るバカはいない...それでも今回の事件で、今までも多忙な施設職員の仕事も増す(20人に1人の担当で夜勤)、凄惨な現場を見てストレスかかり、その内、退職者続出だれも居なくなるだろう。
有料老人ホームでも夜間は約20人に1人の夜勤勤務だが日勤から引継ぎを受け19時ごろ本日、夜勤担当の△◯ですと挨拶に来る。
玄関内にいる夜警契約委託先から夕方来る警備員は定年退職した爺さんだ。
入る時、今は自由だが記帳などと、なればこれは面倒となる...ありがた迷惑だ。
「速やかに対策実行を」…相模原殺傷で首相指示
「障害者施設における殺傷事件への対応に関する関係閣僚会議」で今後の安全対策などについて指示を出す安倍首相(右、28日午後、首相官邸で)=中村光一撮影
政府は28日、神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件を受け、首相官邸で関係閣僚会議を開いた。
安倍首相は「多くの方々が大変な不安を感じている。事件を徹底的に究明し、再発防止、安全確保に全力を尽くしていかなければならない」とした上で、塩崎厚生労働相ら関係閣僚に対し、施設の安全確保の強化策や、精神障害者の措置入院後の追跡調査について、見直しも含め早急に検討するよう指示した。
政府は今回の事件における行政と警察との連携などについて検証しつつ、厚労省を中心に対策をまとめ、順次実施する方針だ。菅官房長官は28日の記者会見で「(被害のあった施設は)事前に防犯カメラなどを付けていたにもかかわらず、このような結果になった。検証し、防犯対策を充実していくことが極めて大事だ」と述べた。
7月25日未明、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人の障害者が刺殺される事件が起こった。逮捕された植松聖容疑者は「障害者は死んだ方がいい」と日頃から話していたという。
事件前の備えはどうだったのか。どのような対策を取ればよいのか。テロや危機管理を専門とする、日本大学危機管理学部教授の福田充さんに聞いた。
今回の事件が起こった背景をどう捉えるか。
自分の正当性を社会に訴えたいという政治性の面でテロリズム、そして障害者をターゲットとしたヘイトクライム、この2つの要素があります。
さらに容疑者の精神状態や、薬物、交友関係、多くの要素が絡み合った境界的な事例ですが、まずは容疑者本人の責任を問うべきで、簡単に社会が悪いという問題にすべきではない。
単なる自暴自棄犯とは一線を画すからです。例えば、2008年に起こった秋葉原通り魔事件では、犯人は人生がうまくいかない、だから周りも殺して自分自身の人生も破壊するつもりだった。
ところが、今回の植松容疑者は、衆院議長への手紙からもわかるように、自分は正義だと信じ、人を殺し、金も要求して、2年で牢屋から出せ、と生きるつもりでいる。歪んだ自己承認欲求や自己顕示欲などの自己愛がヘイトクライム、テロリズムへと駆り立てている。単純に労務環境、生育環境と簡単に結びつけるべきではないと思います。
テロリズムというには主張が明確でない印象がある。
政治的主張からテロリズムを起こす人間であっても、もともとのきっかけは、自分が挫折した、人間関係がうまく構築できない、といった個人的要因であることが多いんです。オウム真理教も、欧州のイスラム系のテロにも同じ側面があります。
ヘイトクライムとしては、どのように捉えられるか?
障害者に対しての人権配慮が国際的に定着しているので、障害者へのヘイトは社会問題になるほど大きなうねりにはなっていません。これには、ナチスドイツの優生学とナショナリズムが結びついた前世紀の反省がその背景にあります。
世界でこのニュースが大きく報じられるのも、前世紀的なヘイトクライムだから、という側面はあるでしょう。
この点でも社会の問題というよりは、彼自身の施設での就業経験や、個人的な挫折によるところが大きかったのだろうと思います。ヘイトが向かう先が前時代的、という意味で、世界的にも特殊な事例です。
どうやって危機管理に取り組めばよかったか。
まずは「これは予測できた」という側面を洗い出すこと。
今回のケースで言えば、衆院議長に異常な手紙を送り、措置入院となった。おそらく、ここまでの対策は正しかったと思います。
問題はそのあとです。大量殺人について言及した人物を、退院させたタイミングは正しかったか。仮に正しかったとして、退院後に家族と暮らし、通院することになっていたのに、放置されていた。ここはフォローすべきだったでしょう。
事件を起こす場所も、殺す対象も明確に主張する人物がいた。この情報をもとに、どれだけ備えがされていたかは検証されるべきですね。
設備や人員を足すのも、法整備も簡単ではない。
まず振り返るべきなのは、すでにある手続き、ルールがきちんと運用されていたか。DVやストーカー問題でも、制度はあるが運用できていなかった結果、人が死んでしまうケースがある。これは運用を見直すだけで、ある程度防げます。法整備や、コストのかかる設備はその次でしょう。
今回の事件も被害者の多さから、異常さばかりが強調されますが、だからといって何もできなかった、というのは短絡的。その時、持っていた情報でどれだけ対応できたかを振り返り、改善すべきです。
大量殺人のような滅多に起こらない、しかし多くの命がかかっている問題に対して、どのように対策を考えればいいのか。
大前提は、ゼロリスク社会はありえないということ。とてつもないコストがかかりますし、監視カメラだらけ、鍵だらけの社会が幸せか、という議論もある。ゼロリスクはありえないから、どこまでやるかというバランスについて、議論と合意が必要なんです。
必要な対策は何か。それはインテリジェンス。情報に基づいて、必要な対策を取るということです。
何の脈絡もなく突然襲われる、という想定から始めるのではなく、襲撃予告がある、危険人物がいる、と情報を得たときに、徹底した事前対策を取る、という考えです。すべての障害者施設や学校で、警備システムを強化しようというのは高コストで無意味です。だから、情報をもとにリスク評価し、見えるリスクに柔軟に事前の対応をしましょう、ということですね。リスクの高いところから、お金をかけて人感センサーを取り付けるようなインフラ整備をし、人を増やしていけばいいのです。
滅多に起こらないから何もしなくていい、という極論。二度とあってはならないから、どれだけコストをかけてもリスクをゼロにする、という極論。
このどちらでもなく、その間を具体的に考え、冷静に話し合い、合意形成することが大事だと思います。
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ここは、これ以上、税金を使う必要無しムダ...信念を持って深夜に計画的に実行、何ものこのこ玄関から入るバカはいない...それでも今回の事件で、今までも多忙な施設職員の仕事も増す(20人に1人の担当で夜勤)、凄惨な現場を見てストレスかかり、その内、退職者続出だれも居なくなるだろう。
有料老人ホームでも夜間は約20人に1人の夜勤勤務だが日勤から引継ぎを受け19時ごろ本日、夜勤担当の△◯ですと挨拶に来る。
玄関内にいる夜警契約委託先から夕方来る警備員は定年退職した爺さんだ。
入る時、今は自由だが記帳などと、なればこれは面倒となる...ありがた迷惑だ。
「速やかに対策実行を」…相模原殺傷で首相指示
「障害者施設における殺傷事件への対応に関する関係閣僚会議」で今後の安全対策などについて指示を出す安倍首相(右、28日午後、首相官邸で)=中村光一撮影
政府は28日、神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件を受け、首相官邸で関係閣僚会議を開いた。
安倍首相は「多くの方々が大変な不安を感じている。事件を徹底的に究明し、再発防止、安全確保に全力を尽くしていかなければならない」とした上で、塩崎厚生労働相ら関係閣僚に対し、施設の安全確保の強化策や、精神障害者の措置入院後の追跡調査について、見直しも含め早急に検討するよう指示した。
政府は今回の事件における行政と警察との連携などについて検証しつつ、厚労省を中心に対策をまとめ、順次実施する方針だ。菅官房長官は28日の記者会見で「(被害のあった施設は)事前に防犯カメラなどを付けていたにもかかわらず、このような結果になった。検証し、防犯対策を充実していくことが極めて大事だ」と述べた。