普段から大混雑で知られるJR武蔵小杉駅の横須賀線ホームでは、水没した影響で一部の改札が使えなくなり、券売機やエスカレーター、エレベーターなどが故障した。
駅から南へ徒歩8分ほどの場所にあるマンションの住民が話す。
「台風後すぐに停電してしまい、まだ復旧していません。
ウチのマンションの1階にあるコンビニや銀行のATMも電気設備がやられてしまったようで、営業再開の目処は立っていないのです」
中でも特に甚大な被害を受けたのが、冒頭のタワマン、パークシティ武蔵小杉だった。
地下3階にある電気設備が浸水し、完全に故障してしまった。
その結果、停電し、照明、エレベーターも停止。
最上階の47階に住んでいる住民は、悲惨なことに、外出するためには一段一段、階段で上り下りするしかなくなってしまった。
トイレが使用できなくなったのは配電盤が壊れてポンプで水を汲み上げられなくなったからだ。
便意を催すたびに47階から1階まで階段を上り下りする。
そんな地獄を、高級タワマンの住民は味わうことになったのだ。
さらに、マンションの前には汚水を含んだ泥が大量に溜まり、悪臭を放った。
一連の様子はテレビやネットを通じて全国に広まり、高級タワマンのイメージはガタガタに崩れることとなった。
今回の台風19号では各地で堤防の決壊や越水(河川の水が堤防を越えてあふれること)が起きた。
しかし、武蔵小杉駅は、一番近い多摩川の堤防でさえ1㎞弱もの距離がある。
そして、その堤防付近では、決壊も越水も起きていない。
それなのに、なぜか武蔵小杉の中でもタワマンが林立する、駅の南側のエリアに浸水被害が集中した。
どうしてこのような事態になったのか。
発生直後は不明だった多くのことが、2週間が経ち、徐々に明らかになってきた。
水災害に詳しい神戸大学の大石哲教授が解説する。
「川崎市はエリアによって『分流式』と『合流式』という2種類の下水処理方式を採用しています。
分流式は汚水を下水処理場へ、雨水は川や海に直接放流する。
合流式は、汚水と雨水の両方を一緒に下水処理場に送るのですが、雨が大量に降った場合は、ほとんどすべてを河川に放流するのです」
新設される下水管は分流式が主流で、国土交通省も分流式を推奨している。
合流式は主に古い街などに、そのまま残っていることが多い方式だという。
大石氏が続ける。
「実は武蔵小杉は、駅より北側のエリアは分流式、今回被害のあった駅より南側のエリアは合流式と、別の方式を採用しているのです。
南側のエリアでは、汚水と、台風で降った大雨を下水管から多摩川に放流しようとしたわけですが、その多摩川自体の水位が非常に高くなってしまっていた。
それで下水管から河川の水が逆流し、汚水や雨水と一緒になって武蔵小杉の街にあふれたのだと考えられます」
地下の電気設備がやられた
排水管から雨水が逆流し、市街地などに水があふれる現象は「内水氾濫」と呼ばれている。一方、河川の水は「外水」と呼ばれ、これが配水管から逆流して市街地に流れ込む現象を「外水氾濫」と呼ぶ。
今回はこの内水氾濫と外水氾濫が同時に起こった。
「多摩川はいわゆる『天井川』といって、川床の高さのほうが、街の地面よりも高い位置にある河川です。
水位が高くなれば、川につながっている排水管の水門を閉じる必要があった。
川崎市は今回のような規模の台風に慣れていなかったのか、内水氾濫を恐れ、水門を閉じなかったのです。
しかし、今回のように大量の雨が降って河川の水量が多くなると、河川水の逆流によって被害は大きくなります。
水門を閉じなかった選択は、適切だったとはいい難いでしょう」(大石氏)
タワマンが立ち並ぶ駅の南側のエリアには、地形的な弱点もあった。
武蔵小杉の地元不動産会社「ケイアイ」の代表取締役・金子勇氏が語る。
「今回被害のあったタワマンがあるエリアは、かつて工場などが建っていましたが、地元では『昔、あの辺りは沼だった』と言われています。
一帯が周囲より低い土地であることは間違いありません」
こうして、逆流した汚水、大量の雨水がこのタワマン地帯に流れ込んだというわけだ。
そしてこの水がパークシティ武蔵小杉の地下にある電気設備に襲いかかった。
地域防災に詳しい、東北大学災害科学国際研究所の佐藤健教授が語る。
「電気設備や受水槽のような設備は基本的に地下室などに納めてしまうのが一般的です。
限られた空間を有効に使いたいため、地上部分は住戸や商業施設で占められてしまう。
そのような弱点が今回、武蔵小杉のタワーマンションで露呈してしまったのです」
『生きのびるマンション』などの著書がある、ノンフィクション作家の山岡淳一郎氏もこう話す。
「現在の建築基準法の単体規定(建物自体についての規定のこと)では、地震に対しては対策を義務付けていますが、浸水に対しては何か基準があるわけではありません。
そのため、地下の電気設備などには必ずしも浸水対策が施されているわけではないのです。
今回被害に遭った武蔵小杉のタワマンも停電対策として自家発電装置を備えていたようですが、浸水対策は講じられておらず結果的に使えなくなってしまった」
たとえば、建築基準法では高さ60m超の建物を建てる場合、60m以下の建物に比べて、1・25倍の風速に耐えられる構造にすることなどを義務付けている。
しかし、水害対策の基準は存在しない。
そのため、今回のような事態が起きてしまうのである。
被害を受けたパークシティ武蔵小杉の住民たちの口は重い。
このタワマンに出入りする住民に声をかけたが、一様に「話すことはない」といった反応だった。
なぜか? 彼らにとって今回のトラブルは生活難だけにとどまらない、一大事だからだ。
住宅ジャーナリストの榊淳司氏が語る。
「今回被害を受けたタワマンは、不動産業界で言う『事故物件』になってしまったのです。武蔵小杉は近年人気が急上昇したエリアで、『ムサコマダム』という言葉も生まれました。
しかし、徐々に人気に陰りも見えはじめていたのです。
というのも、2年ほど前に、武蔵小杉駅が大変混雑するため、朝の通勤ラッシュ時などは駅の改札を抜けるのに30分以上かかるといった事態が報道されました。
そこからじわじわと敬遠する人が増えていた。
今回の事態は、その傾向にさらに拍車をかけるのではないでしょうか」
今回の一件で全国的に名が知られてしまったパークシティ武蔵小杉も値崩れ必至だ。
人気エリアだから簡単には値崩れしない―そう考え、投資目的も含めて購入した人も多いパークシティ武蔵小杉の住民は、今回の事態の深刻さを誰よりもよくわかっているはずだ。
地価が3割も下落
「仮に台風前に1億円で売っていた部屋が、急に9000万円になるといったことはないでしょう。
しかし、これまで1億円で売りに出したら、2ヵ月で売れていた部屋が、半年~1年かかるという感じになる。
売れにくくなる、貸しにくくなるわけです。そうすると、売り急ぐ人は相場よりも低い価格で売りに出すようになるでしょう。
そうして下落バイアスがかかってくるのです。
東日本大震災の時に、新浦安と海浜幕張の街で液状化現象が起きました。
その直後はマンションなど不動産の価格に影響はありませんでしたが、2~3年かけてズルズルと下がりました。
海浜幕張などは3割以上価格が下落した物件もありました。
同様の事態が武蔵小杉でも起きる可能性はあります」(榊氏)
住宅地に向いているとはいい難い場所を、古い下水システムが残ったまま、「人気の街」というイメージをつけて売りに出す。
そうして今回のような悲劇を生んでしまった。
程度の差こそあれ、同様の事態は他の地域、他のマンションでも十分起こり得る。前出・佐藤氏が語る。
「武蔵小杉で起きた停電、断水はタワマンだけで起きる問題ではありません。
これを教訓として、デベロッパーを始めとして、業界で対策を講じる動きとなるでしょう。
ただ、そこに任せるだけではなく、居住者自身が電気設備や給水設備がどうなっているかなどを事前に把握しておくのも重要だと思います」
武蔵小杉の事例は決して他人事ではない。そう胸に刻みたい。
☆
最悪の事態となった...電気などのエネルギー施設は地下などの設置は危険と誰もが判っているがコスト、フロアの有効活用で上部には設置しないのが大勢。
まず仮設の発電機or高圧設備で復旧をはかる、汚水ヘドロかきあげ作業、清掃もハンパで無い。
ホースを延ばしてポンプで揚水するものやら...何れにしても多額の費用もかかる。
針金電気ヤが管理している総合病院、事業所の電気室もB1Fなので水害リスクは伴う。
外階段通路とかもあるので想定外の大雨時は階段より水が下りフロアに浸水する可能性ある。
この場合、ポンプで下水配管にUPするしか無い。
今まで特に被害は無いが、他県の水害有り様をみるとリスクは常にある。
施設管理の色々、話を聞くと...それは水没、停電なれば完全にタワマン同様OUT状態。
それより常日頃のBF1にある水槽タンクに供給している、井戸配管の亀裂、破損した場合、たちどころに地下フロアが水浸しになってくる話で昼間は勤務でいるが、夜間に発生した場合は水の中は感電危険で、行く事も出来なくなる。
最悪、電気室、ポンプ室も水没してダメとなる話。
自然の降雨はどうにもならないが、塩ビ配管破損のリスクも大きい。
相談を受けて次の漏水検知制御盤をボランティア実費で製作する事にした。
①オムロンの漏水検知とセンサーを使う。
②検知したら井戸ポンプの主ブレーカをトリップさせる。
③検知信号をオムロンM2M絶縁監視装置(SW150LF8)に入力させ施設担当の携帯電話2人に緊急メッセージとして発信させる。もちろん、漏電.停電と同じ当方にも着信。
取りあえず担当は市内、在住でまず警備員に確認電話して、すぐ出動、複数部署上司にも連絡。
④ブレーカが漏水を検知してトリップしているので浸水は回避できたが、これから原因探査復旧対策の工事となる。
この漏水検知センサーを床に貼り付けておけば良い...電極間はAC24Vで感電はしないので安全。
外からの自然災害は地下設備に関して対策無し諦める他は無いが地震は何処にいても関係ない。