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エラリー・クイーン「フランス白粉の秘密」

2013年10月18日 | Eクイーン
エラリー・クイーン「フランス白粉の秘密」
これも40年ぶりぐらいに読みました。
ライツヴィルもの以降の地方志向を知っていると、
都会(ニューヨークのど真ん中)を舞台にした最初期の作品群が若干薄っぺらく思えるのは読者の勝手でしょうね。
ニューヨークの真ん中にある最先端の百貨店のショーウインドウから、
百貨店社長夫人の死体が発見される、というオープニングはつかみOKの見事なスタート。

ですが、そのあとの関係者への尋問パートが長いこと・・・。
中学生のころは、ここで投げかけたことを思い出しました
(一応読みきりましたが、途中の展開はまったく記憶にありません)。

「ローマ帽子」では脇役同然だったエラリーが、やっとここで主人公らしい活躍を見せます。
エラリーの学生時代の友人も関係者にいて、その恋愛模様もからんで
20代の作者が書いた作品らしいところも見えます。

筆者はJ・D・カーとの比較しかできませんが、
クイーンのミステリ作法はミスディレクションを使わない、という点に集約される(かもしれません)。
事件後から読者への挑戦の入る箇所までの長い関係者への尋問部分にまかれた手がかり(レッドヘリングも使われていない)を
丹念に集めて突きあわせると謎が解けそうな気がします。あくまで「気がする」だけで、
やはり探偵役のエラリーによる論理の飛躍がないと真相にはたどり着けません。
反対にカーはシンプルな謎をミスディレクションとレッドヘリング(と物語)を駆使して
読者の目から隠そうとする点に特徴があると言えます。

「フランス白粉」での、被害者家族とその周辺の人間関係(不貞、麻薬癖など)は、
キャラクターが人形同然でなければ、ロス・マクドナルドの諸作品に出てきてもおかしくないような感じですが、
クイーンのスタンスはあくまで謎を支えるためのパーツでしかありません。
とはいえ犯人を指摘する最後のパートのドラマチックな演出は、再読であっても燃えました。

■ストーリーにまったく関係ない部分なのですが、
P126でマリオン・フレンチのせりふの中に「パステルナークのピアノ」(角川版)とあります。
パステルナークは、「ドクトル・ジバゴ」の作者で若いころに作曲もしていたボリス・パステルナークのことでしょうね。
この場合はパステルナーク作品を外国人ピアニストが演奏しているのを聞きに
カーネギーホールへ行った(角川版P204・家政婦の発言)、ということみたいです。


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