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ディクスン・カー妄論06 職業作家 その3

2025年02月07日 | JDカー
■『火刑法廷』(1937)は怪奇小説か探偵小説か。
★境界線上の作品、と言っていたのは乱歩でしたっけ。
■バウチャーだね。クイーンは『火刑法廷』をミステリではないとしているそうだ(『カー問答』より)。
なんにせよ、やっぱり怪奇小説だと思う。セイヤーズの編んだ怪奇小説のアンソロジーがよく売れたので、
カーもその勢いに便乗して書いてみたんじゃないか。
★「僕もこんなものが書けますよ」みたいな自己アピールですか。その結果として出版社からオーダーがあったんですかねえ。
■どうなんだろう。短編ではいくつか怪奇小説を発表しているけどね。
★『めくら頭巾』はいい作品でした。怪奇小説ながらクリスマスストーリーにもなっていて。
構成が本邦の「夢幻能」にも似ているのは偶然でしょうけど。
■肝心な点は、一種のダブルクライマックスを備えているところだね。
★合理的に解決しておいて、実は……、という。M・R・ジェイムズの『泰皮の樹』もそうでした。
■そのジェイムズのダブルクライマックス手法を長編に利用したのが、『火刑法廷』じゃないかな。
カーが『泰皮の樹』を読んでいたことは確かだね。
『赤後家の殺人』の中で密室殺人の謎解きとして蜘蛛を持ち出す部分があるから(同書 P73)。
★「蜘蛛がそんなに長生きできるものか」とか反証されるんですよね
■力を入れたわりには、怪奇小説としては思ったような成果が出なかったんじゃないか。
『皇帝の~』もそうだけど、ロマンス小説、怪奇小説として読むと、ぎゃくに探偵小説らしい謎解き部分が邪魔のように思えるんだな。
★『火刑法廷』は映画になったんでしょう。
■『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』も映画になっていたそうで、ペトゥラ・クラークが妹役だったんだよ。
★誰ですか、それ。

※左側は創土社版『M・R・ジェイムズ全集上巻』、下巻を探しているうちに創元文庫で全集が出てしまったので、探すのは諦めました。

That Woman Opposite (1957) 原作『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』

※ペトゥラ・クラークはイギリスの女優・歌手で、1940年代から女優活動、50年代から歌手活動を始め、
たぶん日本で一番よく知られているのは大ヒット曲「DownTown」。

Downtown(1964)


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