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チラシの裏

寅申の刻

2011年02月15日 | ミステリ
「南海の金鈴」で最後の事件を迎え、観客からの熱烈なアンコールに
「螺鈿の四季」でカーテンコールに応えてくれたディー判事も、
今回の事件で本当にお別れになってしまいました。
すごく寂しいです。
思い返せば、10代のころ講談社文庫の「中国迷宮殺人事件」を読んだときは、
「なんてつまらない」と感じていたことなど嘘みたいです。

「寅申(いんしん)」という書名の意味は、
猿と虎をモチーフにした2つの中篇が収録されていることから、
訳者の和邇さんがつけたのでしょうか?(それぞれの作品につながりは無い)。

以前にも書きましたが、
発表された年代(50年代末から60年代)のミステリの傾向を反映しているのでしょうか、
事件の動機がとてもモダンです。

「黄金時代のミステリ」ならば、たいていは「金、女、地位」といったところで、
ディー判事が扱う事件は、動機が生々しい現実性を帯びているような気がします。
ちょうどロス・マクドナルドの作品みたいに。

そうしたことを考えると、
西暦7世紀の中国を舞台に、アメリカ60年代のハードボイルド風の動機を導入し、
手法としては英国直系の伝統的名探偵が謎を解く、
というポリグロットなシリーズと言えるかもしれません。

ところで、最近ポケミスは装丁が変わって、キュートなデザインになりました。
以前の勝呂忠氏のアブストラクトな絵のほうが、ポケミスを読んだ気になるんですが、
あのデザインだと表紙だけで作品が判別できないのが玉にキズというか。
書名を隠して、絵だけで作品を当てるなんて芸当が可能なのでしょうか。


■寅申の刻 ハヤカワポケミス ロバート・ファン・ヒューリック著 
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