赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

カジノ法案は亡国への道

2015-05-29 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(25)

カジノ法案は亡国への道





カジノ法案再提出

本年5月、自民・維新・次世代の党の3党は、「統合型リゾート施設(IR)整備推進法案【※1】」を再提出しました。一見して観光促進の法案に見えますが、実態は「カジノ法案」です。
【※1】IR法案。カジノを中心とした複合観光施設の整備を促す法律案。IRは Integrated Resort(統合型リゾート)の略。超党派の「国際観光産業振興議員連盟(通称カジノ議連)」が、2013年国会に提出したが、11月の衆院解散により廃案になった。

本法案は、カジノやショッピングセンター、ホテル、国際会議場などを一体的に整備する構想で、関係者は2020年の東京オリンピックまでの開業をめざしているようです。誘致に関心を示しているのは、横浜市、大阪市、沖縄県など全国約20の自治体にのぼります。また、カジノ関連企業として知られるセガサミーホールディングス【※2】が、すでに宮崎県のシーガイアを舞台に、誘致を見越した統合リゾート施設の建設を計画しているといわれています。
【※2】大手パチスロ・パチンコ・ゲームメーカーのサミーと大手ゲームメーカーのセガグループおよび両社の関連会社の持株会社。セガサミーはアミューズメント機器の製造技術を生かしてカジノ機器製造子会社を発足させた。また、韓国の釜山市と仁川市に複合リゾート施設を2016年に開業する予定。これらは「日本でカジノ解禁をにらんで」の戦略である。さらに、セガサミーの娘婿である鈴木隼人氏(経済産業省出身)が昨年の総選挙で衆議院議員(東京比例区選出)となった。なお、本年1月14日にセガサミーの会長兼社長宅に銃弾が打ち込まれる事件が発生した。

刑法では、カジノを「賭博」として処罰の対象にしていますが、本法案が成立しますと、国が認定した区域に限り一定の要件を満たせば設置可能となります。なお、カジノの合法化の実例は、欧米を中心に世界120以上の国・地域で実現しているようです。アジアでは、カジノ収益世界一のマカオに17の施設があり、韓国やシンガポールも合法化しています。


懸念される諸問題

法案の目的には「観光の国際競争力を高め地域の創意工夫、民間活力による滞在型観光を実現する」と掲げていて、「収益を社会に還元する」というのがカジノ解禁の名目になっています。その経済波及効果を最大7兆7千億と試算しているようです。

しかし、経済効果を狙って逆に、ギャンブル依存症の拡大、多重債務者の増加、マネーロンダリングの温床、青少年への悪影響、地域の治安悪化が考えられます。

しかも、観光促進という名目にカジノはふさわしくありません。外国人観光客の目的はカジノではありません。日本の魅力は、「都市景観」と「調和された自然の美しさ」、「日本文化」、「清潔で安全な社会環境」、それに加え「おもてなしの精神」にあると思います。それらが高く評価され、日本の観光人気が高まっているのです。カジノは日本の美しさや調和の精神とは正反対で、開催者も客も金銭的な欲望を求めているのです。よその国の真似をする必要はどこにもありません。

また、カジノはギャンブル依存症を拡大させる【※3】可能性が極めて高いと思われます。
【※3】厚生労働省研究班の推計によると、ギャンブル依存症の疑いがある人は全国で536万人に上るという。遊ぶために借金を繰り返して多重債務に至るケースなど、悲劇はなおも続いているとみられる。

これに対して推進する側は「ギャンブル依存症の人や多重債務者が利用できないようにする」として資格要件規定を盛り込んだようですが、具体的な依存症対策は何一つ示していません。


及び腰の野党と大手マスコミ

国民にとっても反対の声は根強いものがあります。日経新聞の世論調査(2014年10月)では、59%が反対、27%の賛成となっており、国民のおよそ6割が反対していることになります。

国会議員がこの法案の実現を急ぐのはそこ利権が発生するからです。カジノを通して、政界とパチンコ・ゲーム業界の利権、また、パチンコ・ゲーム業界を天下り先とする警察の癒着構造を守ろうとしているからです。
また、野党にもカジノ議連の役員もいますし、大手マスコミにとっては業界からの広告収入が高いので、このような悪弊の指摘には及び腰になっているのが実情です。


カジノ議連は利権拡大のためのもの

カジノを推進しているのが、いわゆるカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)です。社民党、共産党を除く日本の超党派国会議員による議員連盟で、略称はIR議連。2010年4月に参加者74人で発足【※4】しました。
【※4】設立総会では会長に民主党の古賀一成、会長代行に自民党の岩屋毅、幹事長に牧義夫の各衆院議員を選出した。現会長は細田博之氏(自民)、副会長に民主党からは鈴木克昌、前原誠司、桜井充、の各氏が名前を連ねる。最高顧問には、小沢一郎氏がいる。

なお、昨年(2014)10月の参議院予算委員会で「多重債務問題や依存症対策、青少年の健全育成などの総責任者である首相がカジノ議連にいることはふさわしくない」としての質問があったのを受けて、安倍総理は「ご指摘はごもっともなので、最高顧問をやめさせていただく」と答弁した。また、麻生複総理・財務相も同年6月に最高顧問辞任と議連を退会した。





IR議連は「カジノの合法化による観光産業の振興を行うと同時に、パチンコの換金合法化を目的」としています。パチンコ業界とも密接に関係していることは言うまでもありません。実際、自民党には「時代に適した風営法を求める議員連盟」、民主党には「民主党娯楽産業健全育成研究会」がありますが、このメンバーは、パチンコ関連の業界団体である「パチンコチェーンストア協会」の政治分野アドバイザーにも名前を連ねている人が少なからず存在します。


利権目的の政治に終止符を

ところで、パチンコ業界は毎年のごとく巨額の脱税が指摘されています。なぜならパチンコ店は「金の動きを外部から追跡するのが極めて困難」であるからです。業界全体の脱税額は気の遠くなるような金額にのぼると見られています。しかも、パチンコ店のオーナーの七割は在日韓国人だといわれていますので、韓国や北朝鮮への資金源になっていると思われます。

さらに、パチンコ店のオーナーは政治献金も頻繁に行っているようです。ただし、政治献金は「外国人献金の禁止」がありますので、業界団体などを迂回させて特定の政治家に手渡しているようです。一方、政治家のパーティ券購入には「外国人の制限」はありませんので、多くの民主党や社民党、維新の党、公明党の議員が購入依頼しています。パチンコは野党議員にとっても大きな資金源なのです。

また、パチンコ産業の企業や団体は、警察官僚の天下り先として確保されています。全国各管区警察局ごとに天下りの縄張りが決められているようで、パチンコが「賭博」として摘発されないのはここに理由があります。

最近のパチンコ業界も倒産する店舗があるようで、業界自体に危機感があるのかもしれません。そこで新たな収益を確保するものとして目をつけたのがカジノなのではないでしょうか。そのために従来から付き合いの深い民主党や自民党の議員を巻き込んでの法制化をめざすということだと思います。このような国会議員たちにとっては利益団体のロビイストをすることで貴重な収入源となっているのです。


公営ギャンブルやパチンコの無い社会づくりへ 

また、カジノが設置された場合、表向きに健全のようにみせかけて運営するでしょうが、賭博行為に変わりはありません。参加者やその家族の心を荒廃させ苦しみの原因となります。しかも、それだけでなくカジノのある周辺地域を殺伐とさせます。これは、「和の心」を大事にする日本の精神風土とは無縁の存在となります。

目先の小さい利益のために、国民の心の調和や安定をおろそかにすることは国家として最も避けなければならないことです。安倍総理の英断を強く求めます。




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