赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

21世紀の対立軸――専制国家 vs 民主主義国家 コラム(482) 

2022-11-18 00:00:00 | 政治見解



コラム(482):
21世紀の対立軸――専制国家 vs 民主主義国家

ポーランド領内にミサイル

15日の夜遅くNATO加盟国のポーランド領内に対地ミサイル2発が着弾してからというもの、深夜にも関わらずヨーロッパ中が大騒ぎになりました。

当初はロシア軍によるものと推定されたため、NATO条約第5条の「加盟国の全体に対する攻撃」と見なされ、加盟国がロシアに反撃を開始することで実質的な第三次世界大戦となることへの懸念が生じたためです。

現在は、ウクライナの迎撃ミサイルとの話になっており、各国とも落ち着きを取り戻しているようですが、欧州自由ラジオ の情報によれば「ロシアは85発のミサイルが落下し、その多くは電力インフラを狙ってきた。この結果、モルドバで広範囲の停電が起きている」ほどのすさまじい攻撃だったようです。

このため、ミサイル調査の最終結論が出ていない事を前提に、ストルテンベルグNATO事務総長が「この紛争の犯人がロシアである事は誰もが認めている。彼らがいなければこのポーランドの事態は起こらなかった」とロシアを痛烈批判しています。


民主主義のルールに背を向ける専制国家


さて、今回のロシアのウクライナ侵略戦争を見て気になることは、これから戦争を平気で起こしそうな国が、ロシアと同様の専制国家という特徴があることです。ロシアを筆頭に、中国、北朝鮮の三国は、残念なことにいずれも日本に隣接している最悪のパターンですが、21世紀になっても古代の専制君主さながらに絶対的権力を握って他国を侵略蹂躙し、領土の拡大と他国の人間を支配したい欲求に駆られています。要は、時代感覚が帝国主義以前の中世もしくは古代の感覚なのです。

実は、この中露朝の感覚が問題をより複雑にします。これまでの国際社会のルールが西欧文明を軸に定められているのに対し、中露朝の軍事国家はそのルールに則取ろうとしないことにあるのです。ただ、彼らにしてみれば、そんな西欧文明のルールなんてものは「知ったこっちゃない」という感覚ではあるのですが…。

おかげで、戦争のルールを定めたジュネーブ条約を守る気はありません。ちなみにロシアは締結国ですがウクライナ侵略戦争では順守していませんし、中国や北朝鮮はジュネーブ条約そのものを締結していません。

ジュネーブ条約の禁止事項は 以下の通り。
① 民間人・施設をターゲットにしない(非戦闘員たる民間人、学校や家などの建物、水源や電源施設などのインフラを意図的に標的にすることは、戦争犯罪になる)
② 投降した兵士を殺してはいけない
③ 捕虜・被収容者に対する拷問又は非人道的な取扱いの禁止(彼らには食糧と水が与えられ、暴力から保護されなければならない)
④ 病院や救命隊員を攻撃してはいけない(赤十字・赤新月社のシンボルである赤い十字架や赤い三日月のマークがある車両や場所に攻撃してはならない。また、これらのマークを偽装して軍事行動に用いることは許されない)
⑤ 民間人が避難するための安全な通路を提供する(紛争当事者は、戦闘地域から極力安全に民間人を避難させるためのあらゆる合理的な措置を講じなければならない。紛争当事者は逃げる民間人の通行を妨げてはならない。)
⑥ 人道支援組織へのアクセスを提供する(戦っていない民間人や負傷者は、医療、食糧、水、住居など、必要な援助を受ける権利がある。意図的に飢餓を引き起こすことは戦争犯罪であり、虐殺行為にあたる。)
⑦ 不必要、過度な損失及び苦痛がないこと(戦争で使用される戦術と武器は、最終的な軍事目標を達成するために、相応かつ必要なものでなければならない。化学兵器などは・・・使用は禁止されている無差別に殺傷できる対人地雷の使用は制限されている。)

関連:世界で禁止されている10の兵器:1 化学兵器、2 生物兵器(細菌兵器)、3 毒矢・毒弾、4 検出不可能な兵器、5 対人地雷、6 焼夷兵器、7 ブラインドレーザー兵器、8 ダムダム弾、9クラスター爆弾、10気象兵器


これからの対立軸は専制国家 vs 民主主義国家

こうしてみると、現在の戦争とこれから未来で起きる戦争とは、民主主義国家対古代専制国家との戦いの図式になると思います。すなわち、戦争の在り方が、従来の考え方の延長線上ではないことを意味します。

とくに、スウェーデンの独立研究機関「V-Dem研究所」は、政治体制を大きく、「閉鎖型独裁」、「選挙による独裁」「選挙による民主主義」、「自由民主主義」の四つの類型に分けた結果、
「閉鎖型独裁」は46カ国、
「選挙による独裁」は63カ国、
「選挙による民主主義」が56カ国、
「自由民主主義」が34カ国
で、地図に落とせば、民主主義国家よりも権威主義的な国の方が多いのがわかります。

その上、人口比でみれば、世界人口の71%が「独裁に分類される国に住む」ことが明らかで、日本のような民主主義が安定した国家に住む国民から見れば当たり前のことも、実は世界からみたら少数派に過ぎないということを理解しておかなければなりません。

したがって、ロシアのウクライナ侵略を非難しても、専制君主プーチン氏に届かないのは当然で、同様に、習近平氏、金正恩氏に抗議しても馬耳東風で、文句を言う民主主義国家の方がおかしいと居直られるだけなのです。

では、中露朝の専制君主の考え方は一体なんであるのかということについては、丁度、中国の『超限戦』ということを学びましたので、これを事例に、次回、考えてみたいと思います。



  お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
  FBは https://www.facebook.com/akaminekaz
 
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本語は人格を丸くする!?... | トップ | 情報アットランダム その2 ... »
最新の画像もっと見る

政治見解」カテゴリの最新記事