赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

蟻の一穴天下の破れ

2021-11-24 12:23:55 | 政治見解


コラム(376):蟻の一穴天下の破れ
 


中国のテニス選手、彭帥(ほうすい)さんが張高麗元副首相から性暴行を受けたとして告発した問題は、北京冬季五輪の外交的ボイコットのみならず、中国の国家体制を揺るがしかねない大事件に発展する可能性も否定できません。また、中国の隠ぺい工作に加担したIOCのバッハ会長にも著しい影響が及ぶと考えられます。


全米メディアと日本のメディアの差

中国は米国メディアに怒り心頭だと思います。メディアの経営危機に対して多額の費用(広告含む)をつぎ込んで救済していたはずのニューヨークタイムズやCNNがこぞって中国批判を展開しているからです。

ニューヨークタイムズは20日付の社説で「否定し、うそをつき、しらを切ってやり過ごそうとするが、どれもうまくいかないと全力で反撃してくる」と中国を批判したうえで、北京冬季五輪開催国としての適格性に疑問を投げかけました。日本でいえば中国の機関紙、朝日新聞が本国を批判しているようなものです。

また、ケーブルテレビ大手のCNNも、彭帥さんの報道で中国当局の検閲を受けているとする様子を生中継で伝え、「これが中国で起きている検閲の実例だ」と強調しています。日本でいえば中国の批判を一切行わないNHKが中国の検閲の内情を明かしたようなものです。

この一連の動きに対して日本のメディアは中国を怖がっているようです。「性暴力」問題を「不倫」に置き換えて事件の矮小化を試み、加害者の元チャイナセブン・張高麗氏の存在を隠そうとしているように見えます。張高麗氏は習近平主席にとっては恩人にあたるようで、張高麗批判が習近平批判につながることを恐れているからのようです。

これは、日頃から「人権を守れ」と国内では勇ましい反体制左派のメディアやジャーナリストも例外なく何も語りません。チャイナマネーで糊口をしのぐ彼らにとって自らの首を絞める行為はするはずもありません。この事件の鎮静化を願い、日本国内の別の話題を見つけては国民の関心をそらすことに全力をあげています。


蟻の一穴天下の破れ

さてこの事件、習近平氏には、「第3の歴史決議」採択により習氏が毛沢東と並んだ指導者であることを見せつけた矢先に起きたもので、自分の顔に泥を塗られたと認識し、さらに中華帝国・習近平皇帝のお披露目の場である北京冬季五輪開催に悪影響を与えるものであると激怒して、この事件を徹底的に封じ込めたいようです。

しかし、この始末の付け方には失敗しました。これまでの中国的な伝統な手法では、すべての口を強圧的に封じ込めておけばよかったのに、それがいまでは現代の世界的正義には全く通用しないローカルルールだからです。

それでなくとも、ウイグル自治区におけるジェノサイド、香港の人権弾圧と国際社会から非難をあびることばかりしている現状では、国連総会で各国代表に小切手を配って買収して決議をひっくり返したところで、国際世論がひっくり返ることはありません。

たとえ、国家ぐるみのドーピング違反によって政府関係者の五輪参加は禁止されているロシアのプーチン大統領を開催国の招待という形で呼んでみても、国際世論に何の影響も与えませんし、また、計算高いプーチン氏がいつ手のひらを反すかわからない状況では、周氏の思惑通りにことが進むとは思えません。

一方、中国国内も「全人口の2倍分」建設された不動産バブルが崩壊し、国よりもお金の方を信用する中国国民にとっては政府への不信感が一層高まっている現状では先行きは全く不透明です。

歴代王朝末期のように人心が離れれば大混乱とその先にある革命が起きるのか、それとも為政者が国民の目をそらすために対外侵略に向けさせるのかは未確定の部分が大きすぎますが、いずれにせよ中国にとっての激烈な変化がもたらされるのは確実です。

その意味で、中国政府当局にとって彭帥氏の告発は隠し通したい些末な事件にすぎないのかもしれませんが、少なくとも「蟻の一穴天下の破れ」になっていることは間違いありません。


IOC・バッハ会長の誤算

IOCも中国と同様です。この原因はバッハ氏が中国当局の主張に加担して彭帥さんの無事を伝えたことによるものですが、これがかえって彭帥さんが、本人かどうかは別として、中国当局の監視下に置かれ自由に発言できないことを証明することになりました。

これによりバッハ会長は、WHOのテドロス事務局長の同様にチャイナマネーに汚染されていると論評される始末です。実際、先般の東京五輪の際にも、東京五輪というべきところを北京五輪と発言し物議をかもすほど、以前から習氏とは深いつながりがあるように見受けられます。

現在、IOCは人権を重視する世界テニス連盟(ITF)や女子テニス協会(WTA)から激しく非難されています。また、一方には、各スポーツ団体からIOCの強権手法に反発する声が大きくなっておおり、IOCの存在自体が問われるまでに至っています。

しかもIOC の収益の柱である放映権は、2032年のブリスベン夏季五輪まで米NBCが独占していますが、肝心の視聴率がとれなくなっておおり、これまた先行きが不透明です。



今回の彭帥氏の告発は些細な出来事のように見えながらも、中国という強国を揺るがし、スポーツ団体の頂点に立つIOCの屋台骨を揺さぶりました。いままさに、「蟻の一穴天下の破れ」、古臭くて無用の権威や権力が音を立てて崩れようとする瞬間だと感じます。



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