赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(37)
日本共産党に何が起きているのか
日本共産党に変化の兆し
最近の日本共産党は国会での論戦や審議拒否などの行動の場でも、民主党ばかりにおまかせしているように感じます。国会周辺や街頭でも他党と共同行動を取りながら「安保法制反対」を叫んでいるだけのように見えます。
原因は、昨年成立したテロ三法【※1】の影響なのか、院政を敷く不破哲三氏または委員長の志位和夫氏の影響力が落ちているのか、それとも最近の中国の動静に警戒感を持ち始めたなど、さまざまな要素が絡んでいるからではないかと思います。
【※1】昨年(2014)11月、「テロ資金提供処罰法改正案」「犯罪収益移転防止法改正案」「テロ資産凍結法案」のテロ三法が成立した。これにより反社会勢力への金融制裁が可能となった。現在は、暴力団とその密接交際者だけが対象だが、今後は、過激派や市民運動標榜団体などの公安監視団体も対象になるといわれている。しかも、テロ三法が適用されれば、カンパされた側だけでなく、カンパした人のすべての資産を凍結没収できるといわれている。
そこで、政界の事情通に、同党の微妙な変化について伺ってみました。
日本共産党の基本路線に変化の兆しがあります。
日本共産党はソビエト崩壊後、中国共産党との関係が深まっていました。
しかし、中国共産党の覇権主義的な色彩が色濃く出ている中、これ以上の関係に終止符を打とうと考えたようです。
従来、アメリカへの従属や、大企業に対し改革意識を持っていたのですが、安保法制問題では、アメリカに頼らない独自の軍事力で日本を守るという流れになってきた場合は、反対するつもりはないようです。
つまり、共産党はアメリカと資本家が嫌いなだけなのです。
共産党の過去のいきさつと現在の考えに多くの矛盾があるためになかなか正式表明ができずに苦しんでいるようです。
これからは純粋に、弱者救済と戦争反対を基本理念としていくようです。
日本共産党は日本の反体制過激組織の母体である
日本共産党はテロ三法の適用を恐れています。共産党は戦後アメリカによって解放された後、日本革命を目指し、武装闘争【※2】を行っていました。そのような経緯があるため現在でも公安調査庁から、破防法(破壊活動防止法)に基づく「調査対象団体」に指定されています。
【※2】1951年、主流派は第4回全国協議会を開き反米武装闘争の方針を決定。「農村部でのゲリラ戦」を規定した中国革命方式の「軍事方針」を打ち出し、在日韓国人と連携しながら全国各地で「火焔瓶闘争」を繰り広げ、米軍基地、警察署、裁判所などの襲撃を行った。血のメーデー事件(1952年)では警察側は重軽傷者が約750名にものぼった(重傷者約80名以上、軽傷者約670名)という。
しかし日本共産党は一連の武装闘争で国民の支持を失ったため、1955年には武装闘争路線の放棄を決議しました。ただ、これは「暴力革命」を否定したわけではなく「内外の反動勢力が非平和的な手段に訴えない限り、政治暴力は行使しない」という条件付きの武装闘争停止でした。
この時、それを不満とする暴力革命派の学生らが離脱し、60年安保の騒乱事件を引き起こしました。日本の過激派組織の殆どは日本共産党が母体になっているのです【※3】。こうしたいきさつを知ると、「テロ三法」をいかに恐れているかがお分かりになると思います。
【※3】日本共産党の武装闘争停止により、これに不満を抱く学生たちが共産主義者同盟(後に戦旗派、ML派、赤軍派などに分裂)、革命的共産主義者同盟(後に中核派、革マル派、第4インターに分裂)を結成した。
本当は「護憲主義」ではない日本共産党
現在では日本共産党が「護憲」の中心軸であるかのような振る舞いをしていますが、基本の考え方は「改憲」です。日本国憲法制定時には「自衛権まで否定する憲法には反対」として国会演説で猛反対していました【※4】。護憲に転じたのは1990年代のことで、同党のNO.4の政策局長だった筆坂秀世氏(除名)は、「94年7月の第20回党大会までは、第9条の改正を公然と掲げていた」と証言しています。
【※4】同党の最高幹部(当時)野坂参三氏の日本国憲法への反対演説:「日本共産党は一切を犠牲にして、我が民族の独立と繁栄の為に奮闘する決意を持って居るのであります。要するに当憲法第二章は、我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険がある、それ故に我が党は民族独立の為にこの憲法に反対しなければならない、これが我々の反対する第四の理由であります。」
「日米安保条約を破棄して日米友好条約に」という欺瞞
2000年代以降、日本共産党は「革命政党」のイメージを打ち消すのに力を注いでいます。党規約からは「前衛党」規定を削除し、「存在している自衛隊を国民の安全のために活用する」など、見せかけのソフト路線を採用しています。
このような欺瞞的な体質は今も同じで、最近は「安保条約に代えて日米友好条約を結べばアメリカとの関係は対等・平等になり、真の友好を築ける」などと発言しています。ただし本音では、アメリカとの友好はありえません。また、安全保障論議でも同党は「安保条約は集団的自衛権を容認している【※5】」と認識していますから、「安保条約も集団的自衛権も反対」を主張するのです。
【※5】国連憲章の第51条の規定でも「集団的自衛権は国際的に合法」とされている。
中国共産党との関係
日本共産党は毛沢東時代の中国共産党とは不仲でしたが、ソ連崩壊とともに中国に接近していきました。しかし、尖閣問題が生じた頃から再び疎遠になっていたようです。おそらく世論を気にしているのだと思います。日本共産党は尖閣諸島を日本の領土であると宣言しています。また、口には出しませんが「中国が脅威である」と認識しているのです。
このあたりの状況を前述の政界の事情通にお聞きしました。.
けっこう国民の顔色をうかがいながらやっているようです。「平和で安全な共産党」にしたいようです。
党内でも基本路線堅持派と世論に合わせて変えるべきだとする改革派が存在し、揺れています。3対7で改革派が優勢です。
ですから今後は過去に決別して新生共産党になる可能性もあります。
民主党や維新の党の分裂どころではないかもしれません。共産党と言う名前そのものを消し込みたいと考える党員もいます。
あわせて次の質問に答えていただきました。
①党内の改革派の伸張は、不破氏の影響力が落ちて、志位氏の色を打ち出せるようになったからか。
②日本共産党は最近の中国の動静に警戒感を持ち始めたのか。
①は不破氏の影響力の低下もありますが、党内では志位氏の影響力も低下気味です。もっと新しい勢力が出始めています。
②は、2年ほど前から中国共産党に対する世論の反応が悪化しているのを見て、接触を減らしているようです。それまでは中国が日本国内で革命を起こそうと画策し、日本共産党に資金援助さえしていたようです。それを中国側から暴露されてしまう可能性もあるようです。
意外にも、日本共産党は名称を捨て去りたいとまで考えているようです。これも前述の「テロ三法」を恐れている証拠なのでしょう。
先般の安全保障法制に賛成する国会議員の調査でも、共産党の中で1名の賛成があるとの情報が寄せられていますが、時代の変化とともに変わろうとしているのかもしれません。
『current topics(30) 安保法制の必要性を理解している国会議員数』ご参照
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