赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

制裁下のロシア経済――ロシア情勢③ topics(590)

2022-09-18 09:52:31 | 政治見解



topics(590): 制裁下のロシア経済――ロシア情勢③


「ロシア軍撤退は国家崩壊の予兆―ロシア情勢①」
「ロシアの味方は4か国しかない――ロシア情勢②」


経済制裁下のロシア

国際社会の強烈な制裁は、ロシアの製造業を直撃しています。グローバル化が進んだ現在では、自国経済の完全自立をはたすことは困難だからです。

ウクライナへの侵略直後からロシアの自動車産業は、外国企業18社が撤退。残るのは2工場のみとなりました。そのため、生産台数月10万台から月4000台まで減少しており、ロシア製の自動車には技術的問題でエアバックが搭載されなくなりました。これは35年の後退を意味します。

一方、旅客機の分野も深刻です。ロシア国内にある980機のうち、515機が外国からのリースだからです。業界紙の「乗りものニュース」には、

・ 2022年3月、日本や欧州各国のリース会社が所有し、アエロフロート並びにS7航空などロシアの航空会社が借り受けていた旅客機515機が、ロシア政府によって接収される見込みとなっています。推定価値1兆円以上にも及ぶ前代未聞の「旅客機の盗難」という事態に直面し、航空業界は大きな岐路に立たされています。

・大きな問題となるのが、ロシアの旅客機のほとんどはアメリカのボーイングやフランスのエアバス製であるという点です。経済制裁によってロシアは今後サポートを受けられませんし、多くを外国から購入していた各部品も、消耗しやすいものから順に在庫が尽きるはずです。


とあります。つまり、数年後にはすべて使えなくなる運命にあるということです。しかも、ロシア製の飛行機も、エンジンを含めた部品を輸入しなければ生産できません。

また、兵器や弾薬不足も深刻です。米政府高官がつい先日「ロシアは北朝鮮から数百万発のロケット弾や砲弾の購入を進め、ウクライナで使用しようとしている」と明らかにしたように、戦争遂行能力にも影響が出始めています。直近の情報では、ロシアはタジク駐留軍の三分の一を引きあげたうえ、タジキスタン政府に対し、無誘導の220mmロケット弾を売ってくれと頼んでいるとのこと。ウクライナに侵略したときの勢いは見る影もありません。


物不足は国家崩壊への序章

さて、最大の問題は、ロシア国民の暮らしに影響がでることです。ロシア人は買い物好きといわれますが、その原因はソ連崩壊前夜の物不足にありました。「お金はあっても物がない」という現象を体験し、物を見かけたら買いだめするのかもしれません。

その上に、酒好きで甘いもの好きときていますので、ウオッカ(砂糖でつくるものもあるらしい)やお菓子用に大量消費されてしまいますが、砂糖の原料になるビートの種のF1(一代雑種)は穀物メジャーが独占しており、この分野にまで制裁が及ぶとロシア人が大好きな砂糖が手に入らなくなります。

また、ロシアの農林水産物の貿易収支は赤字です。穀物など低単価の農産物を輸出し、食肉や酪農品、酒類など高単価の品目を多く輸入する貿易構造だからです。ただ、このところ、経済制裁に対抗して、ロシアは逆制裁措置として欧米からの食肉や乳製品、果実など食品の輸入禁止措置を発動しています。これにより、農水産物の貿易赤字は大幅に縮小した模様ですが、必然的に、国内の食料品不足と高騰が国民生活を直撃します。

現段階では、まだ食料を求めてのソ連時代の行列の再現はみられませんか、今夏の世界的な気候変動は農業生産に多大な影響が出ると思われ、秋口から冬にかけて世界的に食糧不足が懸念されます。ロシアもその直撃を受ける可能性は高く、小麦などの輸出を禁じました。その分、ウクライナから略奪した小麦をいつものお得意様の国々にロシア産として売りつけようとしたのではないかと思います。

一般の物資については当面の在庫でしのいでいるようですが、目先の利益しか興味のないユニクロでさえロシアの50店舗すべてを閉鎖している現状や外資の撤退や閉鎖が次々に行われている現状を見れば、近いうちに必ず物不足となります。

買い物好きのロシア人にとって買うものがないのは致命的です。ソ連が崩壊したのは国家予算の大半を国防費につかい、国民の生活を疎かにしたことが原因です。いままた、プーチン氏が同じ過ちを犯そうとしている現在、ロシアの先行きは見えています。軍事・経済・政治、あらゆる面でロシアは倒れる寸前です。

ロシアの崩壊、中国の崩壊、一体どちらが先になるのでしょうか。もし、ロシアの崩壊が先となれば、ロシアの大地は中国人で埋め尽くされます。中国の版図が一気に広がり、その場合は中国の現体制が延命するかもしれません。したがって、どちらかといえばロシアの崩壊の方が後になってほしいと思う、複雑な心境の今日この頃です。

(本稿で終了)




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