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ロシアの味方は4か国しかない――ロシア情勢②
(「ロシア軍撤退は国家崩壊の予兆」の続き)
報道を見ると、西側諸国からの強烈な経済制裁下にあるロシアが未だに十分持ちこたえでいるばかりか、むしろ、順調にいっているような情勢に感じられます。しかし、実際は相当深刻なようです。
以前、ロシアがウクライナに侵略を開始したとき、ロシア兵がウクライナの民家からテレビなどを持ち出し、隣国のベラルーシから郵送する映像が流されたことを記憶されている方が多いと思います。ロシア兵の殆どがロシア連邦共和国内の貧困層で構成されていたからのようですが、しかし、彼らに限らず、一般のロシア人にとってもウクライナの豊かさは衝撃的だったようです。
こんな記述を見つけました。「ロシア兵は最初、おどろいた。ウクライナ人の生活水準が本国ロシアより遥かに良好なので。1990年時点では何の違いもなかったのに、ソ連崩壊後の経済路線の違いが明暗を分けたのだ」。
ロシアの真の友
ロシアは、自分の見方を、国連総会緊急特別会合でのロシア非難決議に反対した4か国に、棄権あるいは意思表示しなかった国47か国を加えて51か国と強弁しています。しかし、棄権あるいは意思表示しなかった国はあくまでどちらの陣営にも関わりたくないのが本音で、中立の立場に過ぎす、ロシアの味方に入れられるのは迷惑な話だと思っているはずです。下手にかかわって制裁されれば国家存亡の危機になってしまいますから。
この中立の51か国の中には、中国やインドが含まれますので、ロシアが大好きな日本のメディアが中印ともロシア派であると主張します。とくに、ロシアの資金源となる原油、天然ガスを中印両国が以前にもまして大量購入している事実を根拠にしてそう主張しているわけです。
しかし、商売上の利益の観点から言えば、ロシアが他の石油産油国よりも低価格で販売しているから積極的に購入しているのであって、中印がロシアの味方であるというのは屁理屈にすぎません。
専門家の話によると、商売上手の中国は国際社会で孤立して立場が弱くなっているロシアの足元を見て大幅な割引を要求し、サウジ原油の20%安という激安価格で輸入しています。一方で、中国の対ロシア輸出は38%減少し、「要するに中国は、ロシアの味方ではなく、まさに中立なのだ」と述べています。
また、インドを見ても原油価格は35%引きというスーパーの夕方のたたき売り状態で輸入していますし、それだけでなく、武器などを輸入しているにも関わらず、アメリカから一切の抗議も制裁も受けていません。中立だからいいとこ取りができるのです。なかなかしたたかです。
したがって、ロシアの味方の国とは「ロシア非難決議」に反対した、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、シリアの4か国しかないのです。しかも、これらの国は国際的に孤立している国ばかりで、このうち、ロシアが一方的に独立を宣言させたルガンスク、ドネツク人民共和国を承認したのはシリアと北朝鮮のみ。ロシアの真の友は二か国かありません。
ロシアは本当に孤立しているのです。日本のメディアは真実を述べていません。
上海協力機構でも協力は得られず
このような国際的孤立化にありながらロシアの通貨・ルーブルが高騰していますが、これは欧米諸国の動向とは別次元の、金融資本のたくらみがあるようで、素人は何も関与しない方がいいように思います。
さて、14日から16日まで、中央アジアのウズベキスタンで上海協力機構【※1】の首脳会議が開かれました。ロシアのプーチン大統領は「欧米への対抗軸としてこの枠組みを一層拡大する必要性」を訴えたとされますが、ことが思うように運ぶはずがありません。中国が及び腰だからです。
【※1】上海協力機構は、中華人民共和国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8か国による多国間協力組織。中華人民共和国の上海で設立されたために「上海」の名を冠するが、本部は北京である。
なぜなら、習近平氏、この会議には出席するつもりがなかったのに、反習派が意図的にWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)にリークし、すかさずロシアが習氏の出席を発表したため仕方なく、という話が流れてきています。しかも、習氏は、会議のことよりも三期目の主席になれるかどうか気が気でなく、留守をすれば立場がなくなるのではないかとの不安も抱いているそうです。
それゆえ、この首脳会議、ロシアの原油のさらなるたたき売りで終わったと見るのが正解で、ロシアが兵器そめ他の部品供与の要請もうまくいかないことは確かです。なぜなら、世界の工場であった中国でさえ、極度の部品不足、とくにIT部品でも高品位のものが手に入らなくなって悲鳴を上げている状態ですから、ロシアの望みはかなわないのです。これもひとえに、プーチン氏の暴走のツケとしか言いようがありません。
(明日は、ロシア経済の行方)
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