そういえば、よく言われるような「娘さんを私にください」といって
父親に反対されるという事はなかった。
そもそもが美奈子の父親は私を評価してくれているクライアントの
人たちの中の一人であり「娘をアシスタントにしてほしい」
といってきた人だった。これにはさすがに驚いた。このクライアントの撮影の
時は セキュリティがすごい会社で 撮影場所に行くまでに3つのドアを
開けてもらわないと、いけないので大量の機材の搬入等があるので
アシスタントがいたからだ。ということは・・・?それを知っている
はずなので「アシスタント」の意味はなんだろう、つまりそれ以外になのである。
この時は婉曲にお断りしたが、偶然知り合った美奈子の父親だったので
大反対ではなく大賛成してくれた。でも娘の意思を尊重しないで
アシスタントに・・これってどうなんだろうか?と思うし娘さんだって
立派な成人であるはずで、なにせ機材の搬入だけでもかなりの労力がいる
事はよく知っているはずだし。それはそうとして、美奈子が妊娠したという
ところで話は終わったが、それ以来深夜に会う回数を減らしていた。
なんだかつわり?にしては 体調が悪そうに感じたからだ。それでも、
そろそろ式に招待する人にお知らせと出欠の手紙を送る時期がきていた。
私も親しい友人に結婚するのだと打ち明け始めた。
「え、おまえがぁ~結婚?式の撮影じゃなくて?」とか
「年貢を納めたのかい」だの
「相手は相当変わり者だな」等と云われたが
「これが相手だよん」と写真をみせると
「えーまさかぁありえへん、」
「お前にはもったいないな・・・考え直させよう」
「もしかして脅したんじゃないか」まぁ、
そういう口の悪い奴らが多いが男の付き合いはそんなもの。
「だってお前は一人で生きるとかいっていたのに・・・これならいちころだな」
といわれたが、 最後には
「ちゃんと招待してくれよ」で終わるのだった。
「招待状届くかどうかがお前らの試金石だからな」と言い返してみたり。
それにしてもいざとなるといろいろな事をしなければならないので、
リクルートの知人に応援を頼んでおいた。あまりにも私の知識が乏しいので。
幸い我が母と美奈子の母そして美奈子とは話が合うようだし
だんだんと実感を感じてきた。これで私に甲斐性があるとは思えないし
勝手し放題で美奈子が可哀想だと思う人が多いと思う。でも、だからこそ
仕事をしなければならないというジレンマがあったのは事実。定期的な
収入を更に増やしていかないとと考えていた。収入は頑張った分がそのまま
反映されるのがフリーの仕事の醍醐味だが裏を返せば、仕事がなければ
それこそ食うに困る吉本の新人みたいな状態になる。
生涯ぷーたろうを決め込んでいたので、銀行との付き合いで頼まれた
預金が幾つかあったのと 撮影をしていて気に入って購入したマンションの
最上階ワンフロア全部が つまりエレベーター降りたらドアが二つあり
全部が家でsしかも2階建て構造で 片方のドアは2階から降りてくるのと
1階の勝手口を兼用させたもので中庭があるなど、多分バブリーな医者とかが
親と住む2世帯住宅としても利用できる面白いものだった。
あとはといえば機材の投資につぎ込むか、バブリーな車を買うかだけで、
ある意味悲しい人生だったかもしれない。
服とかは まとめて気に入ったものは色を違えて買ったり、仕立てたり
したが、こだわりはなく、唯一こだわったのは靴ぐらいかも。(省け筆者)
それはさておき、美奈子とで会う前に1年間だけ交際していた女性がいた。
実は元をただせば、家庭教師で来た人で年上の女性だった。勉強以外の事も
この人に教わってしまったのだが、大学が京都に決まったことと機会に
別れますと伝えた。その人も 同じ時期に大学を卒業いて仕事に就くとの
事だったので会える機会は殆どないことと、付き合いだして何かにつけて
姐さん的な言動があり、なんだかそれが嫌になったからだ。別れたいと
伝えたところ、いろいろとあって、女性というのは・・・と思う位に
大変な思いをした。だから、女性恐怖症気味になっていたので、成人して
からは特定の人と付き合いたくなかったのだ。
美奈子には、過去に付き合っていた人がいたのでと伝えた。
「へぇ~そうなんだ、でもそんな昔の話を聞いても関係ないじゃん」で終わった。
その点も 確かに美奈の言う通りでオトナなのだ。私は今後も真剣に交際して
いくためには云わなければならないと思ったのである。
「美奈ももてたけれど、特定の人と付き合うのは初めてだよ」と言ってから
「美奈の事大事にしてね・・最初に声をかけたとき本当は心臓がバクバクして
いたんだから・・今度からリードして欲しいな 」
「それ、一生いわれそうだけれど、だから大事にしているはずなんだけど
まだ 駄目? なんだね。相性はいいけれど 愛情が 足りないとか?」
「うーーん、そうでもないよ。愛してるなんて軽々しく口にする人は
美奈子はっ信じられないから・・将来いろいろなことがあると思うけど
そういう時のことだから・・」
「あぁそういえばちゃんと医者に行っている?」
「うん・・。」
「それならばいいけれど、、なんだか調子が悪そうにみえるので、
そういえば医者はなんていっていたの?」
「えーっと妊娠の初期にはそういうこともあるらしい・・らしいそうです」
「あのさ、ひとつ言っていい?美脚なのはわかったからミニをやめた方が
いいんじゃないかな?お腹が冷えるんじゃない」
「大丈夫だよ。会うときだけだから。あーあと友達と飲みに行くときかな」
「少し、飲むのを減らすとか・・・って無理だよなぁ」
「それいうなら 煙草を慎め・・子供が生まれたら、タバコは禁止だぞ」
「禁止・・はたぶん無理・・・毎日ストレスと闘っているからなぁ。子供の
前では禁止ということで・・・。じゃぁ今のうち思い切り吸うしかないかな。」
タバコは止めたいと思っていた。撮影機材にも悪影響だしその為に、ライトバンク
などの1万円する白い布ディフュザーを買い変えてばかりいたのでもったいない
出費でもあることは 承知していた。
「もう、本当に吸いかねそうだけど・・そんながきみたいな事いうなら子供が
生まれたら 実家に帰って合わせないよーだ。」
「でも・・自分の体もメンテナンスしてないでしょ。本当は少し仕事をセーブして
ほしいと思っているけれど、じゃないと体壊したら何にもならないのになぁと
思っているの・ なんて優しい美奈子なんだろうって 少しは響いた?」
「うん、どちらかといえば 響いたというよりひび割れしたけど・・」
「あのねー美奈が心配してあげてるんだから・・・。幾らお嫁さんが若くて
可愛くて、若くてピチピチしているからって・・・」と美奈子節。
「話がなんで美奈子がぴちぴちしていることと関係があるの でも美奈は
正直だね。美人とは 言わなかった だからすっごく感動した。」
「あのさーまじめに心配しているのに、もう じゃぁさー保険に入れ」
「それって、入っているけどさー。じゃぁ受取人を美奈にして入ればいいの?」
[うん・・・。って冗談だょ。」
「でも、いずれは入らないといけないよなぁ。」
「それはうーんと先の事でしょ。それよりも先にやらなければならないことが
山ほどあるの・・解ってるよね」
「やっぱりそうだよね、ごめん。」
なんだか こんな会話をすることができて当たり前なのかもしれないが
しかし プライベートの時間は殆どかったしただの会話新鮮に感じだのである。
何よりも美奈子といる時間を、フツウに過ごせるといえばよいのか、
ありのままの自分でいてよいと言外に伝え続けてくれたので「結婚」という
方向にかじをきれたと思うのだ。さらにまったく考えていなかった新しい
家族ができたようで、男でも女でも私に似ないでほしいと思った。
その子が成人する頃 私は50歳のおっちゃんというかおじさんだ。
あとは 同じ仕事には就かないで・・などと随分先走ったことを考えていた。
たぶん、この仕事のスタイルは変わらないし、さらに深化させなければ
ならないので実際には家事も育児も、たぶん美奈を頼るしかないような・・・。
ただおんぼろスタジオでこなしている1日で100人を超える撮影は、
歳をとって続けられるのかなぁーと考えたりした。
そんな先の事より 今やらなければならないことがあるのにそれすら
美奈子に任せっぱなしなのだ。本当に私と結婚して美奈子は幸せになれる?
いや幸せにさせなければならないと改めて自分に言い聞かせた。