本能寺の変 「明智憲三郎的世界 天下布文!」

『本能寺の変 431年目の真実』著者の公式ブログです。
通説・俗説・虚説に惑わされない「真実」の世界を探究します。

大河ドラマ「江」の歴史捜査1:兄・万福丸処刑の真相

2011年01月16日 | 大河ドラマ「江」の歴史捜査
 NHK大河ドラM「江」の第1回を見た職場の仲間から次のようなコメントをもらいました。その方も拙著『本能寺の変 四二七年目の真実』を読んでいるので、歴史の真実にはとても敏感になっているのです。
 「明智さん!昨日の「江」を見ました?!早速、歴史を捻じ曲げて、ひどいですね。江には兄・万福丸がいて、秀吉に串刺しにされて殺されたのに、全くその話が消し飛んでいます。そういう話を出すと今後の話の展開に合わないのですね!」
 私もテレビを見ていて同じことを感じました。しかし、そもそも大河ドラマはドラマであって真実を伝える番組ではないので、脚本家がどのように描こうと勝手です。
 見る方がドラマを真実の如くに受け止めてしまうのがいけないのです。と、思うのですが、残念なことに多くの方々がドラマを真実と受け止めてしまっている現実があります。軍記物という物語が創作した話が通説として日本国中に広まってしまったのは、正にこういった事情によるものです。
 そこで、ドラマと真実の違いをきちんと指摘してみようと思いました。大河ドラマ「江」の作り話と真実の違いをこの1年間きちんと解説していきましょう!

 まず、浅井長政には淀・初・江の三姉妹のほかに万福丸という男子がいて、その子は秀吉に殺されたという話を歴史捜査してみます。
 あらためて各種の『太閤記』や『明智軍記』といった江戸時代に書かれた軍記物を読んでみると不思議なことに、こういった話は書かれていません。恐らく秀吉の業績をアピールするには都合の悪い話だったのでしょう。
 そこで、信長の家臣・太田牛一の書いた、信長については信憑性が極めて高い『信長公記』を調べたところ、次のように書かれていました。
 「浅井備前が十歳の嫡男御座候を、尋ね出だし、関ヶ原と云う所に張付に懸けさせられ、年来の御無念を散ぜられおわんぬ」
 つまり、浅井長政の十歳になる嫡男を見つけ出して関ヶ原で張付(はりつけ)にして処刑したということは事実だということです。秀吉が殺したのかどうかはわかりませんが、浅井の領地を秀吉に与えたと書かれていますので、その可能性はあると思われます。
 この史実を信長の「性格が残虐」だからと見るのは現代人の感覚です。自分の一族が生き残るために最善の手を打たねばならない当時の武将の決断に対して、現代人の感覚で解釈を付けるのは慎重であらねばならないと私は思っています。信長の「性格」に理由を求めるのではなく、一族生き残りのための「政策論」として考えるべきと思うのです。もちろん、「行為として残虐」であることにはかわりがありませんが。
 ★ 織田信長:苛烈・冷酷説を斬る!
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 十歳の子に何ができるかと思うでしょうが、信長自身が死んで子供の代になったときに何が起きるかわかりません。そういった史実はいくらもありました。平清盛が典型的な例です。滅ぼした源義朝の子供(頼朝・義経ら)を殺さなかったために、子供の代に平氏は滅亡する羽目に陥ったのです。こういった史実を知っている戦国武将が子や孫のために最善の手を打っておくのは当然の責任だったと思います。そういう選択をせざるを得ない戦国の世に生まれなくてよかった!
 さて、今日の2回目の放送で信長が秀吉を殴る場面がありましたが、当時の武将が家臣を気安く殴るということが果たしてあったのでしょうか?私はそれも通説となっている信長の虚像のように思えますが、いかがでしょうか。

 ★ 本能寺の変:定説の根拠を斬る

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本能寺の変 四二七年目の真実
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