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「話芸の系譜」 関山 和夫

2013年05月13日 00時11分16秒 | 大道芸
 「話芸の系譜」大衆話芸の歴史をさぐる  関山 和夫 著  創元社 1973年

 「話芸とは?話芸と話術の違い」
 
 私がこの本でいう”話芸”とは、節談説教・落語・講談・浪花節のような、
長い歴史と伝統の中でつちかわれ、きたえられ、ねりあげられた”はなし”の芸をさすのである。

 ”話芸”という呼称は、けっして古くからあったものではなく、昭和30年代にぼつぼつ使われはじめ、
昭和40年代に入って普及した、きわめて新しいことばである。
しかし、遠く仏教の伝来の時から様々な形を整えてきた節談説教や、中世末期に端を発し、
近世初頭に原形を整えて今日に及ぶ落語や講釈の伝統的なものを総括して”話芸”と呼ぶのは、
日本話芸の本質を言い得てわかりやすく、私は最適の用語と考えたので、ずっと使用してきたが、
最近は随分使われるようになり、一般用語となっている。

 話芸は、長い歴史の中で幾度も口演されて”芸”としての型を創造した。
従って話術とはおのずから趣を異にする。
いかによくしゃべって話術に巧みでも、それは話芸ではない。
人間の社会生活に密着し、笑わせたり、感動させたりしながら、
しみじみと聴かせる技術を”芸”というのである。
同じ一つの”はなし”をきかせるのにも、様々の演出をこらし、
創意・工夫を加えて何回も何回も演じて”型”をつくるところに話芸の特色があった。