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「穏やかな死に医療はいらない」 その8 萬田 緑平

2016年01月25日 00時31分50秒 | 健康・老いについて
 「穏やかな死に医療はいらない」 その8 萬田 緑平  朝日新聞出版 2013年

 「入院していれば安心」は大嘘 P-110

 それでもまだ、「どうせ寝ているだけなら自宅より病院のほうが便利で安心」と思っている人もいるかもしれませんが、入院には思わぬリスクがあります。
 老若男女、どんな人でもふつうの生活を送る限り、起きているだけで体幹トレーニングを続けています。ところが入院すると居場所はベッド一つ。食事も着替えもテレビを見るのもベッドの上で、上げ膳据え膳です。体力は加速度的に低下し、シャワーの許可が出たけれど腕が疲れてシャンプーができないなど、入院前は意識もしなかった基礎体力がどんどん失われていきます。

 中略

 元来、寝ていなければ治らない病状はわずかしかありません。それなのに高齢者になればなるほどベッド生活で基礎体力を減退させて、病気が落ち着いても身体は動かなくなり、何のための入院だったのだろうとなる。その典型が骨折でしょう。
 高齢者が骨折をすれば、折れた骨が接合するまで安静にしなければ動けなくなると考えて、ご家族も医療者も入院させます。長期入院で骨折は治ったが、体力・筋力の低下で動けなくなってしまい、退院後は自宅で暮らすことができず施設へ。もっと最悪のパターンは、骨折の治療の入院でせん妄になり、鎮静剤によって眠っている時間がさらに長くなり体力激減、食事もできなくなり胃ろうを入れて施設に入る・・・。いや、最悪というより、かなりよくあるコースです。

 萬田 緑平(まんだ りょくへい)
1964年生まれ。群馬大学医学部卒業。群馬大学付属病院第一外科に所属し、外科医として手術、抗がん剤治療、胃ろう造設などを行うなかで終末ケアに関心を持つ。2008年、医師3人、看護師7人から成る「緩和ケア診療所・いっぽ」の医師となり、「自宅で最後まで幸せに生き抜くお手伝い」を続けている。