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「大放言」 その2 百田尚樹

2017年06月12日 00時01分52秒 | 本の紹介(こんな本がある)
 「大放言」 その2 百田尚樹  新潮新書 2015年

 まえがき その2 P-8

 少し前になるが、妻子がありながら独身モデルと付き合っていたある男性タレントが「不倫は文化ですよ」と発言したということで大バッシングされた。その結果、彼は一時仕事のほとんどを失い、住んでいたマンションまで売り払うことになった。

 だが、実は彼はそんな発言はしていなかった。不倫交際を記者に非難された彼は「文化や芸術といったものが不倫から生まれることもある」と軽口で反論したのだが、それを前述のような言葉で報道され、タレント生命を絶たれる寸前まで追い込まれた。

 当たり前のことだが「文化や芸術が不倫から生まれることもある」と「不倫は文化だ」はまったく意味が違う言葉だ。悪意ある曲解報道もひどいが、仮に彼が本当に「不倫は文化だ」と言ったとしても、それがどうだと言うのだ。昔も今も浮気をしていないタレントの方が少ないくらいだ。そんなことは芸能記者やレポーターならみな知っている。しかし他の不倫をしている多くのタレントは件の男性タレントほどは叩かれない。なぜか――それは放言をしないからだ。

 昔から日本は本音と建前がくっきりと分かれた国だが、最近になってそれが極端な形になってきているような気がする。だから浮気をしていても(建前上)殊勝にさえしていれば許されるが、それを(本音で)堂々と開き直って言葉にすると、とんでもないことになる。そう、問題は言葉にするかしないか、なのである。

 後略