フィレンツェのドゥオモの東裏を走るVia Bufaliniにある
Cassa di Risparmio di Firenze銀行の
本社ビルの一階・Sala delle Colonneで
銀行所有の9点の芸術品を展示する展覧会開催中。
キリスト生誕をテーマにした聖母子像だけを集めた展覧会。
この9点の作品は銀行のプライベートコレクションですから
普段はお偉いさんのお部屋などに飾られているものばかりで
通常は一般非公開。
1400年代から1600年代にかけての作品を集めている中で
必見なのは、やはりFilippino Lippi(フィリッピーノ・リッピ)の
「Madonna col Bambino e Angioli(聖母子と天使)」。
フィレンツェ・ルネッサンスの絵画ではよく見られる
「Tondo(トンド)」なのですが
この作品はその中でももっとも大きなものとして知られています。
ウフィツィ美術館に収蔵されている有名なミケランジェロの
「Tondo Doni(トンド・ドーニ「聖家族」)」は直径120cm。
それに対してこのフィリッピーノ・リッピのトンドは直径173cm。
才能と環境に恵まれたフィリッピーノ・リッピの
成熟期の作品といわれるもので
聖母子を中心に繊細な世界が描かれています。
天使たちの物憂げな柔らかな表情と仕草には
師匠であるボッティチェッリの影響がよく見られ、
右背部の海を中心とした風景画の技法には
レオナルドの影響が見られます。
限りなく正確に近い遠近法で描かれる建物の中の
一シーンを切り取りながら
右後方に外の景色を取り入れることによって
モノトーンになりがちな画面を
アシンメトリーに切り崩しているところが
この作品のすごいところ。
ピエトラ・セレーナの灰色の石つくりの建物に
描かれる金のオーナメントは非常に凝っていて
病的な感じさえ受けます。
建物の単調な色合いと
天使たちの纏う繊細な色彩の服が
作品全体を非常に落ち着いた、
それでいて華やかで軽やかな雰囲気に仕上げていて
その大きさを感じさせない、見ていて飽きない作品です。
見たくてたまらなかった作品。
期間限定でも一般公開されて嬉しいです。
NATIVITA'
Da Filippino Lippi a Francesco Botticini
nove capolavori di arte sacra
会場:Banca Cassa di Risparmio di Firenze - Sala delle Colonne
Via Bufalini 6 Firenze
会期:2006年12月12日から2007年1月12日まで
開館時間:8:30-16:45 (月曜日から金曜日)
入場料:無料