フィレンツェで活躍し
ルネッサンスの先駆けとも言われる画家Giotto(ジョット)は
精力的に活躍していたこともあり、
十字架磔刑もあちこちに残っています。
今回10年の修復が終わって再び一般公開となるのは
フィレンツェのChiesa di Ognissanti
(オンニサンティ教会)の十字架磔刑。
長くジョット派の作品として認識されていた作品ではありますが、
それは埃にまみれたニスや
ミサの際に灯されるろうそくの煤で汚れていたせいであって
洗浄が完了し鮮やかな色彩が戻ってきた作品を見ると
やはりジョットの傑作であるという事実を実感できます。
ビザンチン風の金色の背景に受難のキリスト
その上に父なる神、向かって左手に皺の目立つ聖母マリア
向かって右手に聖ジョヴァンニ。
そして足元にはゴルゴダの丘。
下から見上げ、信者が跪くことを考慮した構図になっていて
金色とラピスラズリの華やかな背景から
グレーのキリストの体が切り離されて
こちらに迫ってきそうな感じを受けます。
近代絵画の先駆者として知られるジョットは
一方で神学者でもあり、非常に熱心に福音書を読み解き
ひとつの聖なる物語として理解をし
それを作品に反映しています。
彼の作品はどれも非常にシンプルでありながら
時に見る者の心に突き刺さる真実を孕んでいるのは
そうした彼のキリスト教への理解が奥深くにあるからかもしれません。
昨今の傾向としては
これだけの芸術価値の高い作品は修復後
美術館に収蔵されることが多いのですが
今回は教会に戻されることになりました。
金色とラピスラズリの青色も鮮やかによみがえった
ジョットの「十字架磔刑像」は
10月29日にオンニサンティ教会に到着、
11月6日から一般公開となります。
修復後のめちゃくちゃきれいな磔刑像は
是非フィレンツェに来たときに
ご自身の目で確認してください。
写真なんかじゃ表せない美しさです。