時給＄６．５５

「見て見て！！！」
　影絵で客席に降りると、私に指を差しているのが分かるような声が背中の方でしました。話し方で日本人の女の子たち、そして「見て見て。」と指差した先にいる人が、日本人とは思ってもいないことを察しました。
　それから私は今日のセクシャルハラスメントのミーティングを思い出しました。アメリカの最低賃金は６ドル５５セントで、もしその賃金で働いている人がこのショーを観るとしたら、どれだけの時間を費やさなくてはならないのか。ショーを観るには、交通費も宿泊費も掛かることも考えると、その人は一生懸命に働いて、一生に一度、ようやくショーを観に来ることになるのかもしれない。
　彼女達がその人値するとは思われませんでしたが、このショーを観るのはこれが最初で最後になる可能性は十分に考えられることでした。このことはいつも考えることです。だからこそ、私もその時に一番いいものを出来るようにしたいと思います。
　今日はいつもよりもっと丁寧に踊りました。幸い、曲がゆっくりに感じられて、たっぷりと時間を掛けて、心身ともに伸びやかに舞うことができました。