のんのん太陽の下で

初めての一人暮らしが「住民がいるんだ・・・」と思ったラスベガス。
初めての会社勤めが「夢を売る」ショービジネス。

踊れないバトントワラー

2008-10-07 | KA
 毎週火曜日に設けられている私の練習時間に合わせて、古谷野先生方がいらして、今日も腰の回復に向けて手を貸して下さいました。土曜日のことを考えると、板のように感じるものは取れ、驚異的といえるほどの回復でした。でも、感覚としては左の骨盤の中身に、胃や、肝臓や、腸が痛む時に感じるような痛みがあり、これを動かさなくてはいけないのか、と思うとめげそうになりました。
「ここ、動かしたくないです…。」
 身体の向きを変えながら、そう言いました。そして大きくため息をつきました。多くの場合は、「ため息なんかつかないで。」と言われるところですが、私の母はよく「ため息をつくと悪いものも出て行くからね。」と言ってくれました。そんなことも思い出しながら大きくため息をつきました。身体だって本当は動かされたくはなかったのでしょう。でも、動かさなくてはいけない時となりました。
 トレーニングルームでフルートを回しながら、身体を動かしました。身体のどこかの具合が悪くなった時に、そこを使わないようにして動いたことはこれまでにも何度もありました。しかし、今回の悪い個所は中心で、全身に影響があり、大きく身体を動かせません。
「踊れないバトントワラーぐらいならできます…。」
 私は、そう言ってから曲をかけ、一曲通してみました。動かしたくない部分を無理に動かしているからか、痛い部分を動かさないようにコントロールしているからか、息苦しくなりました。でも、なんとか一曲踊れます。そして、いつものようにあと二曲通して練習を終えました。
 先生方を見送ると、いよいよ一人で舞台に立つことになるのだと緊張してきました。緊張と不安で、誰とも話したくないような感じでした。そこに連絡が入りました。今日の一回目に、未唯さんがいらっしゃるということでした。
 ショーが始まると、いつもとは違い、何故かいろいろな人に話し掛けられました。まるで、全く関係のない話をして、私の気を紛らわせてくれているかのようでした。
 フルートを回し始めると、見守って下さっている先生とよっちゃんの温かみに包まれて、未唯さんが以前いらして下さったときのようにふんわりとした優しさに包まれて、とても穏やかな気持ちで舞台に立つことができました。
 一回目のショーが終わって楽屋口へ行くと、未唯さん達がお待ちでした。一回目の後は、いつものようにほとんど話す時間がなく、さらに腰のことが気になっていたので落ち着かない感じでしたが、写真を撮らせて下さり、さらにお食事にも誘って下さいました。そして、その間お待たせしてしまった先生は、「踊れないバトントワラーでも大丈夫だから。」と励まして下さいました。
 そして二回目が、先生方の今回の滞在でご覧になる最後のショーになります。アーティストの何人かもそう言いながら、先生方のためにショーをしてくれました。
 私はいろいろなことを思い出していました。そしてまた、今こうして舞台に立っていることは奇跡のようで、目を潤ませながら、感謝をしながらショーをしました。
 二回目も無事に終わると、先生とよっちゃんは立ち上がって、大きく手を振り、拍手をみんなに送って下さいました。
 舞台が下がると、ゲイルが「今日、観たわよ。とてもきれいだったわよ。」と声を掛けてくれました。私自身は身体を十分に動かせていないのですが、モニターで観るぐらいだと、“踊れないバトントワラー”でも分からないようで、少しホッとしました。楽屋口に居たアーティストのゲストにも、とても良かったと声を掛けてもらいました。その彼は新体操をしているとのこと。同じようなことをする方にも“踊れないバトントワラー”でも大丈夫なようでした。
 先生方のお蔭で、あとは一人でもどうにかなりそうなところまで回復しました。たくさんたくさんパワーを送って下さった古谷野先生と、よっちゃんに、本当に本当にお世話になりました。無理をせずに回復させつつ舞台に立つことが、一番のお礼となることだと思います。感謝を込めて、この一週間は”踊れないバトントワラー”として出来ることを精一杯しようと思います。