
K師との40年-<2>
K師は私の高校での国語の教師だった。
一年時では授業もなくなんの接点もなかったのだが
貴公子然とした端正な風貌でただでさえ目立つ存在なのに
戦時の旧制中学時代、志願兵として江田島の海軍兵学校に在籍したという経歴からか
背筋をシャンと伸ばし早足で堂々と闊歩する姿といい
当時としては珍しく蝶ネクタイをチョイと小粋に曲げ
スーツ姿で毎日登校してくるものだから、いやがうえにも生徒たちの注目を集める。
私とすれば、尊大なばかりか自意識過剰ともみえるダンディズムに加え
生粋の大阪人だというのに語り口調は標準語アクセントで
おまけに少し気取ったようなイントネーションもあるという
なんとも自信過剰のキザな奴という印象が強く
大阪弁丸出しの私などには、鼻持ちならぬとても好きになれないタイプだった。
ところが、なぜか生徒のあいだではすこぶる評判良く
校内一、二位を争う人気ぶりなのだから
此方には気にいらない奴なのになぜか気にかかる奴という
妙にアンビヴァレントな気分にさせられる不可解な存在だった。
ところが、二年時となり、初めて彼の授業を受けるようになって
K師への印象は一気に豹変するのである。