山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

石ばしる垂水の上のさ蕨の‥‥

2006-02-15 17:01:58 | 文化・芸術
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-今日の独言- 脳内汚染

 丁度1ヶ月前、大いに惹かれる書評を読んだ。毎日新聞1/15付「今週の本棚」、鹿島茂氏評の「脳内汚染」。
著者岡田尊司は精神科医だが、医療少年院勤務というから、多発する少年犯罪の苛酷な実態をまさに丸ごと受け止めている存在といえようか。
評者は本書について「日本が直面している社会現象、すなわち、キレやすい子供、不登校、学級崩壊、引きこもり、家庭内暴力、突発的殺人、動物虐待、大人の幼児化、ロリコンなど反社会的変態性欲者の増大、オタク、ニートなどあらゆるネガティヴな現象を作りだした犯人が誰であるかをかなりの精度で突き止めたと信じる」と説いている。
ではその犯人探しの元凶はといえば、コンピューター・ゲームとインターネット、とりわけネット・ゲームとなる。
これらのゲームは「脳内汚染」を進行させる元凶そのもの、というのが本書の結論だ。
ゲームをしていると脳内にドーパミンが大量に放出されて快感が引き起こされ、麻薬と同じような効果がもたらされる。つまりは、やめたくてもやめられなくなる。
本書によれば「毎日長時間にわたってゲームをすることは、麻薬や覚醒剤などへの依存、ギャンブル依存と変わらない依存を生む」のであり、ゲームはLSDやマリファナと同じような、それ以上に危険かもしれない麻薬的な作用を持つ「映像ドラッグ」だという訳である。
さらに戦慄すべきことは、「ゲーム漬けになった脳は薬物中毒の脳と同じように破壊され、元には戻らなくなる」というから、この警鐘の書が広く読まれなければならないと評者は熱くなるほどに記しているのも大いに肯ける話だ。


今月の購入本
 岡田尊司「脳内汚染」文藝春秋
 鴨下信一「誰も「戦後」を覚えていない」文春新書
 A・マアルーフ「アラブが見た十字軍」ちくま学芸文庫
 堀口大学「月下の一群」講談社文芸文庫
 塚本邦雄「世紀末の花伝書」文藝春秋

図書館から借本
 鹿嶋敬「雇用破壊-非正社員という生き方」岩波書店

<歌詠みの世界-「清唱千首」塚本邦雄選より>

<春-7>
 石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になるにけるかも
                                  志貴皇子


万葉集、巻八、春の雑歌、よろこびの御歌一首。
生年未詳~霊亀2年(716)、天武天皇第7皇子、子に白壁王(光仁天皇)、湯原王など。名は芝基・施基・志紀とも表記されるが、万葉集では志貴に統一されている。万葉集に6首のみだが、いずれも秀歌として評され、万葉を代表する歌人の一人。
石(いは)ばしる垂水-岩にほとばしる滝、流れ落ちる水。
邦雄曰く、春の雑歌の巻頭第一首として聞こえる。草木の萌え出る嬉しさに、人生の春のときめくさえ感じられるのは、しぶきを上げる滝水の光と蕨の淡緑の、柔毛(にこげ)に包まれた芽がありありと浮かんでくるゆえであろう。作者代表歌の一つ。簡潔で意を盡した作風、と。


 粟津野の末黒の薄つのぐめば冬たちなづむ駒ぞいばゆる  静圓

後拾遺集、春上、春駒を詠める。
生没年未詳、11世紀の人、権僧正静圓、伝詳らかならず。
邦雄曰く、近江の粟津野も野火のあとにススキが芽吹く。春野の駒は季節の到来を告げていななく。この春駒の歌を詠んだ時、素性法師が幻に立ち現れ、「いみじくも好もしく感心に堪へず」と賞したという伝説がある、と。


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