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-表象の森- 迷走の日々
網野善彦ら編集の講談社版日本の歴史03巻「大王から天皇へ」は、5世紀の倭五王時代から7世紀後半壬申の乱を経て古代天皇制成立の天武期までをかなり詳細にカバーする。昔なら史実としてはほとんど藪の中だった世界が、60年代以降の考古学や歴史的考証のめざましい発見や知見によって、学としてほぼ整理された形で読めるという意味では、こびりついた旧い知を洗張りにかけるようで、新鮮かつ愉しめる読み物となった。
今月は購入本の冊数が多くなったが上記5冊は古書、Amazonのユーズド本からで格安モノばかり。「京都発見」は(三)と(四)を既に所有、資料的価値あり。千夏の「古事記伝」はタレントあがりの健闘に敬意を表し覗いてみようと。「逆髪」は小説だがタイトルに惹かれて。の側からの民俗学を貫いた赤松啓介については、その存在をすら知らず、己の偏狭を恥じ入りつつ。「物理学入門」は理系に弱い頭のリハビリに。「じゃれつき遊び」は偶々見た報道番組から確認のため。
図書館からは、猿之助スーパー歌舞伎の先駆けとなった梅原猛の戯曲「オグリ」と「日本の歴史」以外の4冊は美術書だから、それほどヘビーにはなるまい。
それにしても近頃の読書傾向はいささか迷走気味か。
今月の購入本
梅原猛「京都発見(一)地霊鎮魂」新潮社
梅原猛「京都発見(二)路地遊行」新潮社
中山千夏「新・古事記伝-神代の巻」築地書館
中山千夏「新・古事記伝-人代の巻1」築地書館
富岡多恵子「逆髪」講談社
赤松啓介「差別の民俗学」ちくま学芸文庫
米沢富美子「人物で語る物理学入門-上」岩波新書
米沢富美子「人物で語る物理学入門-下」岩波新書
正木健雄・他「脳をきたえる-じゃれつき遊び」小学館
図書館からの借本
熊谷公男「大王から天皇へ-日本の歴史03」講談社
渡辺晃宏「平城京と木簡の世紀-日本の歴史04」講談社
梅原猛「オグリ-小栗判官」新潮社
「ホルバイン・死の舞踏-双書美術の泉82」岩崎美術社
「アンドレア・マンテーニャ-ファブリ世界名画集」平凡社
塚本 博「イタリア・ルネサンス美術の水脈 -死せるキリスト図の系譜」三元社
「蕭白-水墨画の巨匠第8巻」講談社
<歌詠みの世界-「清唱千首」塚本邦雄選より>
<夏-07>
昔おもふ草の庵の夜の雨に涙な添へそ山ほととぎす 藤原俊成
新古今集、夏。
邦雄曰く、九条兼実主催の治承2(1178)年右大臣家百首の中、白楽天の詩「盧山草堂、夜雨独宿」等による。六・七・六音の調べの上句は稀な例で、重みとたゆたいを秘め、殊に第三句は効果あり。第四句の過剰とも思われる情の盡し方に、作者の特徴は躍如としている。懐旧と五月雨とほととぎすの三要素が渾然として一首を成し、飽和状態寸前の感なきにしもあらず、と。
心のみ空になりつつほととぎす人だのめなる音こそ鳴かるれ
馬内侍
新古今集、恋一、郭公の鳴きつるは聞きつや、と申しける人に。
邦雄曰く、逢瀬も間遠になり、この頃はなんとなく恋冷めの趣もみえる愛人の言葉への、縋りつくような恨み。待ち焦がれて心はうわの空、郭公もさることながら、頼みにさせておいて来ぬ人を恋いつつ、声をあげて泣きたいと、美しい調べに託して訴える。一条院中宮定子立后の際、掌侍となった彼女は、清少納言や紫式部に比肩しうる才媛であった、と。
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