ボストン現地レポート 教育に関連した話題を現地から

アメリカのサマーキャンプ、サマースクールの短期留学専門のコーディネーターが、現地の情報を様々な角度からお届けします。

アメリカ東海岸ボーディングスクール

2022年11月16日 | アメリカの高校留学

早いもので、来週は感謝祭です。高校や大学では、今週末から感謝祭休暇がスタートします。ボーディングスクールに留学中の生徒さんたちは、日本に帰国したり、学校が用意したプログラムに参加したり、親御さんが日本から渡米され一緒に休暇を過ごされたり、様々な過ごし方を予定しています。まだ渡航制限が厳しかった昨年と比べますと、このような選択肢があることが有難いです。昨年はボストン周辺に滞在していた生徒さんたちがほとんどでしたので、我が家に集まってThanksgiving Dinnerをみんなで楽しんだのでした。集まる前に、それぞれテストキットでコロナ感染の有無を確認したことなど、今となっては良い思い出です。

先月は、現在Jr. Boarding School(日本の小学6年生から中学3年生までにあたる、4年間のJr. High School)に留学中の生徒さんと、高校出願先を決めるため、High School Visitsをしました。マサチューセッツ州やコネティカット州のボーディングスクール8校を5日間で訪問し、出願の際に重要視される面接(出願者&保護者)も受けて来ました。コーディネーター・コンサルタントとして、今回初めて訪問した学校もあり、私自身、とても勉強になり、大いに刺激を受けることが出来た、貴重な1週間でした。

特に今回初めて訪問した男子校の印象が、強く残っています。写真は、この男子校で撮影した写真です。長い歴史を感じられるレンガ造りの校舎が目を引くキャンパスからは想像できない、最新の設備を整えたEngineeringの教室(卒業生から寄付されたという、金属を3D加工できるというとても高価な機械もありました)では、若い溌剌とした女性教師が男子生徒たちにRoboticsや車のデザインを教えていました。ネジのような小さなパーツから、全て生徒たちが造るそうです。ツアーガイドをして下さった留学生担当のディレクターに「女性の教師がEngineeringを男子校で教えていらっしゃること。とても良いですね!敢えて、女性を採用しているのですか?」と伺ったところ、「気づいてくれてありがとう!でも、敢えて女性を採用しているわけでは無く、そのポジションにBestな人材を採用しているだけです。その結果として、Teenの男子生徒たちが女性を無意味にステレオタイプ化せずに、男性女性に関わらず敬い、尊重できるようになる環境を提供できていることはとても素晴らしいでしょ!」、とディレクターは😉しました。演劇では、女役は近くの女子校から参加したり、ダンスパーティやスポーツのイベントもこの女子校と合同でやっているそうです。

たまたまHalloween Weekでしたので、仮装したまま1日を過ごすという生徒たちもちらほらいて、微笑ましかったです。

パンデミックがようやく収束しつつある中、寮生活を送りながら、子どもたちが安心して勉強やスポーツ、アート、社会活動に取組めるボーディングスクールがアメリカ国内で注目されているようです。その結果、私立高校受験の競争は増すばかりですが、今回の訪問を終えて、実に多様な選択肢の中から自分の高校を決めていくというプロセス自体、Teenにとって、とても有意義なレッスンなのだ、と再認識しました。

 

 


アメリカの中学、高校留学と新型コロナ

2020年10月21日 | アメリカの高校留学

日ごとに秋の深まるボストンです。

先日、ボストン郊外にある私立高校・ボーディングスクールに留学中の日本人生徒さんを、特別に学校が企画して下さったVisiting Day(保護者またはガーディアンのみ寮生を訪問しても良いという特別な日)に、和風のお弁当を作り訪問した際のレポートをお届けします。通常でしたら、寮生の生徒さんをガーディアン(外国にいらっしゃる保護者の代理として、アメリカ国内で留学生のケアをする大人)として、週末にキャンパスを訪問したり、キャンパス外に連れ出したり、または自宅に招いたりということは、事前に保護者の方のご承認を学校側にお知らせすれば自由にできるのですが、新型コロナ感染対策として、現地ボーディングスクールでは、関係者以外のキャンパスの出入りを厳しく制限しています。この学校では、翌週からいよいよ通いの生徒さんたちも、対面式の授業スタートに合わせて通学してくる、ということもあり、特別に寮生のファミリーやガーディアンのみ、キャンパスを訪問しても良いという機会を作って下さったのでした。

訪問時間は、午後12時から7時まで。寮はもちろんですが、学校内の建物に入ることは禁止。その代わり、大きなテントを張りテーブルや椅子を用意して下さったり、芝生の上も開放して下さった上で、ソーシャルディスタンスを取りながら、各ファミリーが子供たちと屋外でゆっくりと過ごせるよう配慮されていました。予め記入し提出を義務つけられたフォームには、訪問者の体調チェック、新型コロナに感染した人と接触をしていないかどうか、感染者が急増している他の州へまたは州からの移動の有無などの質問があり、最後に署名をするようになっていました。

キャンパスに到着しますと、駐車場のそばに手を消毒するステーションが設けてあり、ここで訪問する生徒とはお互いに連絡を取り合い待ち合わせをする、というシステムでした。この学校は、他の学校に比べますと決して大きなキャンパスではないのですが、それでも19ホールのゴルフ場ほどの広さがあります。秋晴れの素晴らしいお天気のもと、各々持参したランチを芝生の上で楽しんだり、裏山にハイキングに出かけたり、家族水入らずのんびりと過ごせる、保護者の方々にとっては貴重な機会だったと思います。

この学校には、現在弊社でケアしています日本人生徒さんが4名留学しているのですが、帰寮したのは留学2年目の10年生になった男子生徒さん1名です。春休み以降日本に帰国し、13時間の時差がある中、オンライン授業でがんばってきたのですが、もう時差のある中のオンライン授業はたくさん!、と6月からボストンに戻り、サマースクール参加を経て、スムーズに帰寮できるよう準備をしてきた生徒さんです。この夏、彼がバーモンド州で参加しましたサマースクールについては、後日、改めてご報告いたします。

この生徒さんが開口一番言ったことは、「やっぱり対面授業はいいです!」でした。オンラインで授業に参加していた通いの生徒さんたちが、キャンパスに戻ってくることで、感染が広がってしまうのでは?、という心配はぬぐえない様子でしたが、帰寮後、校長先生はじめ教師たちを交えてのミーティングが頻繁に開催され、学校の対応について説明を詳しく受けながら、感染を防ぐために生徒たちひとりひとりが出来ることは何か?、とディスカッションをしながら、学校任せでもなく人任せでもなく、自らの意識を高めて行くという訓練を重ねたことが、「大丈夫かも!」という信頼につながっているようでした。

添付しました写真は、食事中もソーシャルディスタンスを実施する!、という訓練の様子です。まだまだ気候が良いので、このように屋外での食事もできますが、これから冬にかけて屋内で食事をする際は、全校で約350名ほどの生徒さんたちと教師たちが、いくつかのグループに分かれ、シフト制での食事に切り替わったり、予めパッケージされたランチを受け取り、お互いに6フィート離れて食事をする工夫がされています。

 


アメリカの大学進学

2018年12月26日 | アメリカの高校留学
クリスマスの翌日は、穏やかな日のボストンです。今週いっぱい、休暇を取っている人たちが多いからでしょうか。街も静かです。
ボーディングスクールに留学中の生徒さんたちも、全員無事に親御さんのもとに帰省しました。今年の9月から留学をスタートした、新入生の2名の生徒さんたちは、11月の感謝祭休暇は帰省せずに、アメリカ人のお友だちのお宅で過ごしたので、この冬休みは久しぶりの日本です。家族そろっての大事な時間を楽しんでいることでしょう。

現在、弊社でケアしている最上級生・シニアの生徒さんたちは3名。11月中旬が出願締め切りのEarly Decision (早期単願) で大学受験をしていたのは、そのうち2名でした。この2名の生徒さんたちの合否の結果が出るまで、ドキドキの1か月でしたが、二人とも第一希望の大学から合格通知を受けとり、晴れ晴れしい気持でクリスマスを迎えることができました。本当に、心からほっとしています!
最近は、多くのアメリカの高校生が、Early Decisionと呼ばれる早期単願のシステムを利用し、11月中旬から下旬までに大学出願を終えています。合格通知を頂いたら、必ずその大学に入学する、という条件付きもので、レギュラーで受験するよりは、有利と考えられています。

アメリカのボーディングスクールには、カレッジカウンセラーという大学出願をサポートして下さる専門のスタッフがいらっしゃいます。11年生になりますと、ご担当いただくカウンセラーが決まり、大学出願準備がスタートします。生徒全員が参加する説明会に始まり、個人面談を経ながら、実際に出願する大学のリストを作り上げていくのです。手取り足取りのようですが、ここはアメリカ。何人もの生徒たちを受け持つカウンセラーから、どのように協力を得るのかは、生徒次第、そして親次第です。日本にいらっしゃる親御さんに代わり、現地コーディネーター・ガーディアンとして、カレッジカウンセラーと連絡を密に取りながら、大学出願の進捗状況を把握することは、とても大事なことです。そして、生徒さんたちには、「とにかくカレッジカウンセラーに会いに行くこと!」、と何度言ってきたことか。。。

去年の今頃は、大学進学がまだまだ漠然としたイメージだった生徒さんたちに、どこからタックルすればいいのか? Liberal Arts CollegeとUniversityの違いは? SATとACTはどちらがいいのか? TOEFLのスコアは? などなどの基本的な質問に答えていました。
夏休み前には、大学訪問を一緒にすることもありました。その際に、生徒さんたちと色々な話ができたことは大きな収穫であり、その後のカレッジカウンセラーとの話し合いにも多いに役立ちました。
今年ボーディングスクールを卒業していく3人の生徒さんたちは、全員、小学生の時、中学生のときにアメリカのサマーキャンプに参加したことのある生徒さんたちです。サマーキャンプ参加をきっかけに、ボーディングスクール、そしてアメリカの大学へ進学していく生徒さんたちの成長を見守らせていただけたことは、私自身の勉強であり、そして光栄なことでした。知らず知らずのうちに、頼もしくなっていく様子には、毎年のことながら感動をもらっています。幸い、合格が決まった生徒さんたち二人とも、アメリカ東海岸のNew England地域の大学に進学します。少なくとも、あと4年は近くに居てくれることが、何よりも嬉しいです!
あとは、もう一人の生徒さんが、希望の大学に合格できたら、しみじみ喜びを味わいたいと思っています。

子どもからTeenへ、そして大人になっていく、人生でとてもとても大事な時期の高校留学です。楽しいことばかりでなく、辛いことも少なくない高校留学の集大成として、生徒さん一人一人が、大学の選択ということを通して自分に向き合い、悩み、迷い、考えた末に決断したEarly Desicionでした。1日の受験で合否が決まるのではなく、高校生活の3年または4年、自分が何をしてきたのか、何を誇れるのか、そしてどんなことを目指しているのか、ということをテストスコアや成績だけなく、エッセイや推薦状などのパッケージで審査いただけるアメリカのシステムは、とても大変ですが、やはり素晴らしいと思います。

来年シニアになる生徒さんは1名。今年の経験を生かして、この生徒さんのカレッジカウンセラーさんと協力しながら、自分に合った大学を見極め、そして出願を無事に終え、希望が叶うよう、また一からスタートです。そして、今月末には、4名の生徒さんたちが、ボーディングスクールへ出願します。それぞれバックグランドも異なる生徒さんたちですが、全員サマーキャンプ体験者です。サマーキャンプ参加をきっかけに、日本を飛び出して、アメリカのボーディングスクールでどのように成長して行ってくれるのか、とても楽しみです! もう少し、この仕事を頑張りたい、頑張らないといけない!、と思いを新にしています。

良い新年となりますように!

嬉しい報告

2017年11月10日 | アメリカの高校留学
中西部からやって来ているという、平年より早い寒波の影響で、ボストンでも気温がぐっと下がっています。今晩は、零下十何度!、という予報です。

今朝一番に、とても嬉しいメールが日本から届きました。毎年日本で開催しています説明会で、サマーキャンプ参加後の感想を動画でのコメントで皆さんにご紹介しております、元キャンパー、そして元ボーディングスクール留学生からのメールです。

Dear Tammyさん,

時というものは本当にあっという間にすぎていくもので、タミーさんの家で過ごした楽しい日が昨日のように思われます。両親も本当に充実した時をアメリカの地で過ごせたようで、本当に感謝しています。

あれから日本に帰ってきて、やはり医学を学びたいという思いが強かったので編入試験を受ける準備をしていました。そして昨日、とにもかくにも無事金沢大学医学部に編入合格することが叶いました。これも、あの時そしていまでも続くタミーさんの支えのおかげだと、そう実感しています。そしてこの報告で少しでも師孝行ができたらと思っていたりもします。

以前、僕はタミーさんに両親がいる病院を、そこで働く人々を守っていきたいとそう告げました。しかし、タミーさんがその時おっしゃってくれた、たまきそれでいいの?という言葉がずっと心に残っていました。 あれから、学友や教授と話したりする中でなんて僕は視野が狭いんだろうかとつくづく思わされました。今は僕はリベラルアーツで学んできたことを日本に還元し、そしてこれから日本で学んでいくことをまた世界へと発信していきたいと、そう考えています。目先の小利にとらわれず、理想を持ち続ける、タミーさんから教わったかけがえのない教訓です。これから、星雲の志を抱き、公のために、そしてタミーさんのご恩にいつかは報いるために、歩んでいきたいと思います。

またいつか、今度は学校のことなどではなく夢を語りながらタミーさんとお酒を飲めることを楽しみにしています。アメリカの母なる人がタミーさんで本当によかった!


Sincerely,
Tamaki


何度もこのメールを読みながら、涙が出てしまいました。感謝したいのは、私のほうです。

県内の優秀な男子生徒たちが集結する受験校に在学中、思うところがあって、ボーディングスクール見学のため、たった一人でスーツケースを持ってボストンにやってきた彼の笑顔は、数年前にサマーキャンプに参加したときの笑顔と同じでした。でも、笑顔の裏には、色々と思うこと、悩むこと、考えることがたくさんありました。家族や友人たちと離れ、未知の世界に飛び込んで、自分に与えられた環境を十二分に生かし、着実に自信をつけ、自分の道を切り開いていく様子を見守れたことは、コーディネーターとして本当に有難いことでした。NYの優秀なリベラルアーツカレッジに進学後も、時々近況を知らせてくれました。サッカーでは、大学の一軍の主力メンバーとして大活躍し、リーグのパンフレットの表紙に写真が掲載されたこともありました。大学卒業前に、由緒正しいサイエンティストの協会から、大学在学中のリサーチと実験結果が認められて受賞も果たしました。大学卒業後の進路ではかなり悩んだようですが、いったん日本に帰って医学部編入を、博士過程のある国立大学を目指す、という決心を語っていました。日本での編入試験に向けて、日本語で生物や化学の勉強をやり直さないと!、なんて笑っていたのが印象的です。

大学の卒業式前に、ボストンの拙宅にご家族で寄ってくれたことも、とても嬉しかったです。その晩、みんなで夕食をしながら、いかに自分がアメリカのLiberal Arts Collegeで貴重な体験や勉強ができたのか。 人間として成長できたのか。アジアの歴史に始まり、その他色々なことをみんなで語り合いながら、自然に伝わってくるものがありました。私にとっても、忘れられない晩です。彼の成長ぶりが、眩しいくらいでした。

日本に帰国した折、時間があれば金沢まで足を伸ばして、美味しいお酒を飲みながら、Liberal Arts Collegeでの教育の何が、そんなに素晴らしかったのか、とことん話を聞いてみたいです。

彼の夢は、同じ大学で知り合った日本人留学生(彼は、卒業後イギリスのオックスフォード大学院でUrban Designを学ぶそうです)と二人で、定年後に、自分たちがお世話になったアメリカのLiberal Arts Collegeのような学校を日本で作る、ということだそうです! Promote ethical character and service to others という教えを実践してくれる日は、思いのほか近いのだ!、と思いながら、改めて、彼との出会いに感謝したいです! これからも応援していきたいです!



ボストンは卒業式シーズンです!

2017年06月05日 | アメリカの高校留学
ボストンでは、先週ぐらいから高校、大学の卒業式シーズンを迎えています。

先月末、そして今月のはじめに、アメリカのボーディングスクールに留学していた女子生徒さん2名が無事に高校を卒業し、それぞれアメリカの大学に進学します。

一人のお嬢さんは日本で中学卒業後、ボーディングスクールの9年生(アメリカの高校は4年制で、9年生は最下級生・フレッシュマンと呼ばれます)として留学、その後3年目に他のボーディングスクールに転校した際に、本人の希望で10年生をやり直すことになりましたので、5年間の高校留学となりました。5年の月日を思い返しますと、本当に感慨深いものがあります。留学直後に、ご家庭の事情が大きく変化したこともありました。一人娘さんですので、ご家庭の事情の変化は、このお嬢さんの精神的な面で、大きな影響がありました。そもそも、お父様のお勧めで留学していた経緯もあり、挫けそうになったことも多々ありました。入寮のときは、私とこの生徒さんとたった二人で学校に向かいました。そして、私が学校を後にするときの、このお嬢さんの半泣きの心細い気持でいっぱいの表情を忘れることができません。本当にいろいろなことがありました。二人で泣いたり、笑ったりしたこともたくさんありました。

そんな生徒さんから、卒業式の後に届いたメールの一部をご紹介します。

「卒業式の途中から、過去五年間の思い出が蘇って来て、涙をこらえられませんでした。はじめてアメリカに来た時は、日本が恋しくて、英語が分からなさすぎて、友達ができなくて、精神的にも学業面でもほんとうにへなちょこでした。今はまだまだなところもありますが、自分自身の成長に気づけるくらいになりました。いつもネガティブで、甘えたことばかり言っていた私ですが、いつも相談に乗ってくださって、的確なアドバイスをくださって、アメリカでの親代わりとなってくださって、ほんとうにありがとうございます。私のアメリカでの生活をいい方向に変えたのはStoneleighへの転校がきっかけでした。あの時、Tammyさんが背中を押してくださらなかったら、私は今頃日本の大学に通っていると思います。アメリカに来て苦労したこともありましたが、人間として一回り成長できたことは、何事にも変えがたいことだと思います。9月から大学(まだバーナードから結果は届いていません)ですが、勉強に集中して、勉強以外のアクティビティにも積極的に参加して、さらに自分を磨いていきたいと思います。ほんとうにありがとうございました!」

何度も何度も読み直しました。高校留学のコーディネーターとして、長年の経験を積んで来ても、生徒さん一人一人、みんな違います。ご家庭のバックグランド、保護者の方のお考えも異なります。そして、このお嬢さんのように留学後にご家庭の事情が変化することもあります。現地で、子どもから大人に成長していくティーンの留学生たちを見守りながら、私自身学ばせてもらうことが尽きません。生徒さんのことで悩んでいるときは、何かをしているときもずっと考えてしまうので、シャワーを浴びながらシャンプーを何度もしてしまうなんてこともあります。そして、これが唯一の正解!ということも、この仕事ではありません。

大きな達成感と希望を抱いて、アメリカの大学進学という、さらに大きなチャレンジに向かっていく生徒さんたちを見ながら思うことは、一人一人の生徒さんの可能性を信じる、ということです。そして、その生徒さんにとって何がベストなのか、ということを、生徒さんと一緒にとことん考える、ということです。

第一志望の大学は、まだWaite Listのようですが、合格通知をいただいた大学は、Boston University, Northeastern Univ, UC サンディエゴもあります。どの大学に進学しても、この生徒さんだったら、自分で考え、決断しながら、きっと自分の人生を、自分で納得の行くように切り開いていってくれることでしょう。たった5年間で、とても幼かったお嬢さんが、自分の可能性を信じ、前向きに人生を生きることのできる大人になりつつあります。

コーディネーターとしてこのように、とても大事な時期のお子さんの成長を見守らせていただく機会をいただけることは、本当に有難いことである、と実感しております。

コーディネーターとしての私を信頼し、大事なお子さんを託して下さる親御さんたちに、この機会を借りて心からお礼を申し上げます!

あるボーディングスクール校長のスピーチーアメリカ大統領選を終えて

2016年11月29日 | アメリカの高校留学
感謝祭休暇も終わり、ボーディングスクールに留学中の生徒さんも、それぞれ無事に留学先の学校へ戻りました。大統領選の結果が出て、早くも数週間が過ぎようとしています。

現在、アメリカ東海岸にあります6校のボーディングスクール(私立高校)に留学している、日本人生徒さんたちの現地コーディネーターを務めていますが、私の生徒さんたちが留学しているボーディングスクールでも、予想外の結果の影響は多々あったようです。翌日は全校休校とし、グループに分かれ前向きな話し合いをしよう、ということをやっていた学校もありました。結果に動揺したのは大人ばかりでなく、まだ選挙権の無い子どもたちにも動揺はありました。私自身、結果に対してのショックと動揺が大きく、体調も崩し、しばらく呆然としてしまったのですが、そんな中、現在2名の生徒さんたちのコーディネーターを務めています、ボーディングスクールの校長先生が、選挙結果が明らかとなった翌日11月10日の晩に、全校生徒を集めてスピーチされた内容がメールで届きました。校長先生から保護者へのメッセージには、「子どもたちは大人を見ているのです。」というセンテンスがありました。大人の私たちが動揺し混乱しているばかりでは、子どもはもっと不安になります。こんな時こそ、大人である私たちがしっかりしないといけないのですね。

この校長先生のスピーチの内容を何度か読むうちに、このメッセージを和訳し、弊社より日本のファミリーにも発信したい、と思うようになりました。仕事の合間に少しづつ翻訳を進め、やっと出来上がったのですが、操作ミスで原稿を削除してしまうことがありました。そして、いったん諦めかけたのですが、デスクの上にあるプリントアウトした原文を目にするたびに、これはやはり発信しないといけない、と思いを新にしました。

日本でも、大統領選の結果についての分析に始まり、日本への影響などについて、たくさんの情報がみなさんの周りに流れていると思います。この先どうなるのだろう、という不安を持っていらっしゃる方も少なくないと思います。それは、アメリカ市民も一緒です。しかし、このスピーチに込められた、アメリカという、ある意味実験的な若い国が、理想として、信念として守ってきた、そしてこれからも守っていこうとしていることをお伝えできたら!、と願いながら、以下にスピーチの内容を日本語に訳しまして、ご紹介します。

「急な知らせであったにも関わらず、この集会に集まってくれてありがとう。昨日の朝から、この集会のことを考えていました。なんて数日間だったことでしょう!いやいや、なんて何か月間、いや何年間だった、と言うべきでしょう。今晩は、これまでに起きたことを、君達と話し合いたいと思います。もちろん、最近の出来事、その反応を受けての集会でもあります。
本題に入る前に、今こうして、ここで君たちと集うことで、私自身、どんなに安堵しているか、君たちにまず、伝えたいです。象徴的に、感情的に、教育的に、そして思慮深くあるために、私たちは共にいるべきなのです。そして、お互いに歩み寄れば、より良くなれるのです。今晩、この講堂の扉を、ここにいるみんながそれぞれ開けたことによって、私たちは、お互いに歩み寄っているのです。この数日間、私は言いようのない孤独感を味わってきました。しかし、今、君たちの存在を得て、大きな安堵感を得、思いやりと支え合う大切さを実感しています。
一緒に話し合いましょう。そのために、みんなここに集っているのです。最近の出来事は、わが校だけでなく、私たちの国自体を、深刻に分断させる結果となりました。怒りや中傷に満ちた、軽率な言葉や行為が繰り返され、人々の恐怖を煽る結果となりました。先日の学校集会で、私が言ったことを覚えていますか? 「私が怖れていることは、選挙後の怒りである。」、と言ったことを。。。。 前もって君たちに話しておけば、君たちが心構えを持って、相応しい態度で選挙結果に対応できるのでは、と願いつつ話したことでした。結果的に、私たちはなんとか乗り切れたかのようです。しかし、私はそうは思いません。ここ数日間、大きな混乱と落胆がわが校のキャンパスを支配しました。そして、私は思うのです。早急に、私たちは軌道修正をしなくてはいけない。君たちにも要求します。一刻も早く軌道修正をしよう、と。

私のメッセージはとてもシンプルです。でも、私のメッセージを、モラルや、政治的布教、社会学的見解、または崇高な哲学などと取り違えないで下さい。わが校のキャンパスで、酷い、忌まわしい、中傷的な言葉や行為があったことを見聞きしています。偏見、人種差別、同性愛者差別にあたる言葉も耳にしました。わが校のキャンパスに限らず世間では、右と左、革新と保守、賛成と反対という言葉さえ、否定的な悪意ある言葉として捉えがちな傾向があります。クリントンとトランプという各候補者の名前でさえ、そのような意味合いで使われてきました。先ほども、ある生徒が「〇〇〇が、いったい何を今さらしようというんだい!」、と私の名前を、まるで敵であるかのように言い放つのを耳にしました。

私は信じています―ここで“信じる”という言葉の意味を軽くとらないで下さい―ここにいる私たち全員は、個人的な中傷を厭わない、最悪な政治的キャンペーンの犠牲者なのです。これまでの長いキャンペーン期間、私たちは嫌悪に満ちた言葉に、だんだんと鈍感になってしまったようでした。あまりに頻繁に繰り返し使われた言葉が、実際にどんな意味を持ち、どんな状況や人々を表現する言葉であるのか、きちんと理解することを諦めてしまったようでした。私たちはこれまで、何度、各候補者が自分たちの発言に対して、実際はそのような意味で言ったのではなかった、と聞かされたことでしょう。次期大統領のトランプ氏については、あるテレビ番組で女性に対して信じられない侮辱的な発言をし、その性的虐待にあたる発言に対して、単なるLocker room talk (男性だけでかわされる冗談)であった、と言いました。クリントン長官については、トランプ支持者をさして、酷い惨めな人たちの吹き溜まりという発言をし、何万人という人たちが人種差別者であり、女性蔑視者である、と決めつけました。同様の発言は、例を挙げたらきりがないほどです。そして、私たちは思うのです。この二人に共通する点は、自分たちの発言に対して、またその発言によってどんな結果が生じるのか、責任を取る必要は無いこと。そして、自分の発言が意味するところ、また、どのような行為を暗示するということも、どういうわけか認識しないで良い、という姿勢です。
ここで考えてみて下さい。もし、この選挙に関連した一連のことが正しかったと仮定するとしたら、私たちは感じたことを、いつでも、どんな口調でも、そしてその発言がどんな影響を与えるのか考えずに、無責任になんでも口にして良い、ということになります。これは、一般的に間違いです。そして、わが校においては決して受け入れられない間違いです。また、もし君たちの中に、このような行為は容赦可能で受容されるべき、と考えている者がいたら、これも間違いです。残念ながら、大統領選候補者にこのような行為があったことは事実ですが、わが校のコミュニティの一員として、許せることではありません。もちろん君たちから、言論の自由、交渉の自由、反対意見を主張する意義、ということについてはどうなんだ?、という声が上がるのは、わかっています。私もこのことを考えていました。覚えていますか? 9月に新学年がスタートするときに、わが校のモットーとして掲げたメッセージを。「私たちは、異議を唱え、お互いに学び合う機会を、中傷的な意見や軽率な断言に惑わされることなく、見つけていこう! 」今となっては、なんて予言的なメッセージだったことでしょう。

私は言論の自由を信じ、異なる考え方と討論と対話の意義を信じています。しかし、私、そしてここにいる全員は、中傷的な発言または嫌悪感を煽るような発言を信じてはいません。優越感を誇示し他者を貶めること、他者を排斥し追い詰めること、他者に何かが間違っていると断言すること。このような発言や行為は、私の信念として許せるものでなく、わが校でも許されるべきでない、ということです。ここではっきりと言いますが、このような発言や行為をする者は、この学校から去って下さい。もう一度言います。中傷的な、恐怖を煽る、嫌悪に満ちた言葉を使い、他者を傷つけ不快感を与えるような行動をする者は、ただちに、この学校を去って下さい。

我々が直面している、この状況があるからこそ、今、私たちがどのように行動すべきか、わが校が君達に期待する理想が、非常に重要なのです。君達は私のことを知っています。私も君達のことを知っています。そして、非常にシンプルで大事なことは、お互いに尊重し合い、私たちのミッションである“他者を思いやり、市民としての責任を果たす”というモットーを守ることです。これを実行することは、容易いことではありません。私自身振り返ると、自らの努力が足りなかった、と言えます。私自身、あらゆる考え方を尊重することが十分にできていたか? 先にも述べたように、トランプとクリントンという名前自体が、モラル的意味を持つ言葉になっていたのが現状です。そんな中、トランプ支持者はこのキャンパスで、居場所の無い、尊重されるに値しないような思いをしていた、と言っても間違いではないでしょう。私自身もその一人ですが、リベラルな考え方が浸透しているわが校のキャンパスにおいて、異なる意見や考え方を尊重し、話し合うべきであるという信念が、いつの間にか失われていたように思います。実際、排他的で偏狭な考えがキャンパスを支配していたのです。

中流階級の白人であり、カソリック教徒として育てられた私自身、このことに気付くことができなかったのです。物事をより多角的に見る素地が備わっていなかったのでしょう。君達も、自分自身に問いかけてみて下さい。わが校キャンパスで、トランプ支持者が、周囲から断言されたり、批判されたり、侮辱される恐れを抱かずに、自分たちの主張や意見を十分に述べることができていた、と思いますか? 少数でも? 十分な機会が与えられていた、と思いますか? 私自身、同じ問に対する答えは、“恥ずかしいほどの罪悪感”です。

私は自分の信念を持っており、大切にしています。しかし、相反する考えを十分に尊重することを怠ってきたのでは、と今は感じています。私たちが理想とする居場所を維持するためには、尊重、受容、関心、思いやり、感情、同情、そして優しさをいつ何時も忘れてはいけません。どんな時でも、どのような人でありたいのか、その理想を忘れてはいけないのです。

ここではっきり言いますが、トランプ氏は攻撃的な侮辱的な、そして嫌悪を煽る発言を、より多くしてきました。このような言葉自体、そして偏見、人種差別、性差別、女性蔑視、同性愛者蔑視、そしてあらゆるタイプの人々を攻撃するような発言や行為を、私は許すことができません。一方で、彼を支持する人々全員が、彼を支持したからと言って、全員が偏見に満ちた人々である、とは思わないのです。つまり、共和党支持者が全員偏見に満ちた差別者であり、民主党支持者の中には、そのような人間が一人もいない、と言えますか? 

実に悲しいことに、いま、私たちの周りには、憎しみと偏見が満ちています。私自身、トランプを支持せず、これから彼がやろうとしていることに対して、不安をもたずにはいられないとしましょう。しかし、トランプ支持者たち全員に対して、このような考えを当てはめてしまうのは、間違いだと思うのです。悪い考え方であり、解決を導くものではありません。多くの人が語っているように、そして私も同感するように、トランプ氏の成功は、人々の恐怖を扇動した結果であると言えるでしょう。しかし、ある人達にとっては、彼は希望だったのです。どちらが正しいのか、ここで言及することはしません。大事なことは、この点をしっかりと認識することなのです。私たちがトランプ氏を支持できないとしても、トランプ氏を希望である、と理解した人々の中にも、良い人たち、寛容な人たち、良識ある人たち、そして原則をしっかりと持った人たちがいるのです。このことをきちんと理解することによって、分断されてしまった我々が直面している、問題の解決策が見つかる可能性が生まれてくるのです。

全世界でも理想とされる、思いやりのあるコミュニティを築くことを、まずはわが校で実践しましょう。信念を持ち、善良な心を持ち、そして探究者であり、生産者であり、リーダーであり、ヘルパーである君達が一緒であれば、実践できるはずです。多様な才能、考え、文化、そしてバックグランドを備えた君たちのすべてが、貴重な財産なのです。

君達に今、世界の安全と秩序は今後も保たれ、これからも君達が傷つくことなく、痛みを伴うことなく成長していけるだろう、と私は敢えて言いません。なぜなら、それは到底約束できることではなく、そして何よりも、君達を今後もずっと庇護下に置いておくことを、私は望まないからです。私は君達に、信念を持って抵抗する力を持って欲しい、と願っています。わが校は、相互尊重の場であり、寛容と思いやりを持ってお互いに話し合うことのできる場です。意見の相違はあっても、他者を蔑視したり、他者を排斥するべきではありません。私たち全員は、ここに居るのです。そして、存在する権利があるのです。各々の権利が保証される限り、わが校は君達を選び、君達はわが校を選ぶのです。すべて者の立場が尊重されるべきなのです。

ホメ―ロスがイリアスの冒頭で、アキレスの怒りが国の不運と破滅をもたらす、と示唆した言葉にあるように、私たちが共存を重んじず分断を選択したとしたら、その結果として破滅の運命があるのか? 私には、正直わかりません。このような運命が私たちのものになり得るのか、そうでないのか、誰もギャランティーはできないでしょう。しかし、私たちがモットーとする“他者を思いやり、市民としての責任を果たす”というミッションを守ることはできます。成されたことを覆すことはできませんが、これまでの私たちを反省して、より良くなれることを示すことはできるのです。私は、君達に最高に期待しています。なぜなら、君達の可能性は無限大だからです。聞いてくれてありがとう!」

最後まで、読んで下さってありがとうございます。


当事者意識を持つということ

2013年10月29日 | アメリカの高校留学
こんにちは。今日は、朝の気温が氷点下ぎりぎりとなりました。今年は、冬の到来が早いのでは、と感じる朝でした。

今日、たまたま「リーダーシップなくして仕事は無い」というタイトルの記事を読みました。日本の大学の教授の方が、インタビュアーに答える形の記事でした。その中で、「大切なのは、当事者意識を持つことです。チームの目の前にある課題を自分の問題と考え、自分の責任で問題を解決する。独立採算的な考え方で現況を乗り超える覚悟を持つということです。」と、この教授はおっしゃっていました。

最近、私もある2つの体験を通して、”当事者意識を持つということ”について考えていました。

ひとつは、先日、日本のある国立大学の大学院生たちのボストン研修旅行の夕食会にお招きいただいたときの体験です。大学院生、そして既にマスターを取得してPhDの取得を目指している生徒さんたち、教授の方々、そして大学職員の方々の総勢30名ほどでしょうか、ボストンにありますハーバード大学、MITなどの大学との交流イベントやセミナーに参加されていたようです。同じテーブルに同席したのは、職員や教授の方々3名、女子生徒さん2名、男子生徒さん3名でした。生徒さんたちとお話しながら強く感じたことは、当事者意識がとても希薄な点でした。私がこの世代の生徒さんたちに意見や考えを訊いてみたかったこと。たとえば、移民問題についてーどんどん高齢化が進み、少子化問題もなかなか解決されない中、これから日本国内で必要となってくる労働力をどう補っていくのか?たまたま、前クリントン大統領が講演の中で、この日本の問題に触れ、日本はこれから移民を受け入れるのか、それとも女性をどんどん活用するのか、それとも両方の政策を早急に進めなくてはいけない状況にある、と話していました。この問題について生徒さんたちに意見や考えを訊いてみたところ、こんな問題があることをはじめて聞いたかのような反応でした。生徒さんの中に、代替エネルギーとして新しい電池の開発に興味をもっている生徒さんがいらしたので、原発について、これから日本はどうしたらよいのか、考えを訊いてみたところ、やはりまるで人事のような反応で、自分の意見や考えを何も聞くことができませんでした。
グローバルな人材を育てなければいけないという政策から、この国立大学の生徒さんたちの海外研修旅行も実現したようですが、これから社会に出ていくこの世代の人たちこそが直面していく問題に対して、当事者意識の希薄さに驚きました。

もうひとつは、この9月から高校留学をスタートした生徒さんとの体験です。この生徒さんの体験は、言葉だけでなく、根本的なシステムも異なるアメリカのボーディングスクールに日本から留学した生徒さんのほとんどが通る、通るべき道とも言えるでしょう。授業選択、単位、成績管理を学校や親任せでなく、生徒自身に求められることもありますが、日本人生徒さんたちが一番戸惑うことは、自分でアクションを起こすということです。学校によっては、留学生のために、入学1年目は理数系や歴史の授業を留学生用に用意する学校もありますが、そうでない学校もあります。この生徒さんは、いきなり理数系の授業を他の同学年の生徒たちといっしょに受けることになり、その日出された宿題の内容さえわからないことがありました。日本の学校では、内容はともかく、宿題や課題は決められた期日まで提出することが要としつけられていることもあり、とりあえず白紙のまま宿題を出すこともあったそうです。先生に失礼のないよう、「やってみたけれどわからなかった」というメモを添付することもあったそうです。しかし、先生からは何も反応がありませんでした。

そこで、手をこまねいてたたずんでしまったのです。自分の置かれている困った状況について、各教科の担当教師やアドバイザーと呼ばれる先生に自ら相談することができなかったのです。中間テストの結果から、私や保護者の方も、初めてこの生徒さんの状況を知ることになりました。保護者の方いわく、日本の学校では、とにかく先生とコンタクトを個人的に取らずに済むよう気をつけていることが大事だったそうです。先生と話すことは呼び出された結果であり、問題児とレッテルを貼られてしまうのだそうです。
この生徒さんに必要だったことは、まず、自分自身が置かれている状況について、当事者意識を持ち、状況を判断すること、でした。そして、非常に恵まれた環境であるボーディングスクールが提供しているツールを積極的に利用し、自分の抱えている問題を解決し、さらには自分のことを向上させていくアクションを自ら起こすことでした。この生徒さんは、これまでの既成概念の壁を越えて、まず自らアドバイザーの先生に相談に行きました。その後、各教科の教師との個人レッスンを週1回お願いできるようになり、上級生にも個人的に英語を見てもらえるようになったのです。ひとつひとつのステップには、大変な勇気とエネルギーが必要だったと思います。しかし、自らアクションを起こした結果、振るわなかった教科の成績も向上しています。この生徒さんとお話したときに、「ここでは、残念ながら、わかってちょーだい!ということは通用しないのよ。」と伝えました。面倒だけど、ひとつひとつ自分で動いてこそ、アクションを起こしてこそ、物事が展開していく社会なの、と。黙っていると、すべてAll setと理解されてしまうだけです。

保護者の方が常に数歩先に歩み、すべてお膳立てした上での子育てと、”当時者不在的なカルチャー”が、日本でどんどん加速しているように思うのは、私だけでしょうか。。。

高校留学、そしてサマーキャンプやサマースクール参加は、打たれても失敗しても無邪気に受け止め、へこたれずにチャレンジできる順応性をもったころに体験するからこそ、実り多き体験となるのでしょう。どんな些細な小さなことでも、困ったことがあれば自分でなんとか行動を起こし、自ら解決しなくてはいけない環境に、子供たちを放り込んであげる、という事に尽きるのでは、と考えています。

ボーディングスクールの卒業式

2013年06月11日 | アメリカの高校留学
最近、ボストン周辺では天候が不安定ですが、先週の土曜日の卒業式はさわやかに晴れてくれました。

小さい学校で存在し続けることを学校運営の哲学としている、あるボーディングスクールに日本から2年半留学されていた生徒さんが、無事に卒業しました。
彼は、地方の、非常に競争の激しい受験校である日本の公立高校出身です。

このボーディングスクールは、4学年全体の生徒数が100名足らずの学校です。全米のリベラルアーツカレッジのランキングで、常に1位または2位にランキングされる非常に優秀な大学のそばにあります。今年退任された校長先生や、教師の中に、この大学出身者が少なくありません。

この生徒さんは、数学がとてもできる生徒さんで、この高校で微分積分のアドバンスクラスを選択した後、なんとこの優秀な大学で数学の授業を受講していました。高校から大学へ交渉してくださり、この生徒さんと、やはり数学が天才的にできる!という中国出身の生徒さん二人で、徒歩で大学キャンパスに通い、大学生たちといっしょに数学の授業に参加していました。徒歩で20分はかかる距離を、冬は雪も降る中、よく頑張りました。その結果、大学受験の際は、この大学の数学の教授からも推薦状を書いていただいたのです。9月からNYの大学に進学しますが、数学の勉強を大学でも続けたいそうです。数学を極めれば、天文学にいってしまいそうですが、天文学にも小さいころから興味があるそうです。

この生徒さんと、数学について話をしたときに、「この学校では、微分積分の授業も、時には自然の豊かなキャンパスを歩きながら、なんてこともあるんです。」と聞きました。少人数の学校ですので、ときには教師と生徒と1対1という授業もあるそうです。カフェテリアは、バークシャー地方の山の景色が見渡せる大きな窓のある素晴らしい空間ですが、ここに教師、生徒全員が集まって、まるで大きな家族のようにいっしょに食事をし、ミーティングなどをします。壁には、この学校が力を入れているアートのクラスで生徒たちが創作した、アートの作品が飾られています。

この学校を訪れるたびに、自分も、思春期の多感な時期に、親元を離れてこのような環境で勉強し、寮生活を送っていたら。。。とついつい思わずにはいられない魅力ある環境です。

生徒と教師はファーストネームで呼び合います。日本から到着して間もなくは、日本人生徒さんたちはみんな戸惑うのですが、時間が経つにつれ、素直にファーストネームで呼び合える、実に密接な信頼関係が教師たちと築けるのだそうです。

私がこの学校を初めて訪問したのは、10年前ほど前でした。キャンパスツアーをしてくれたアメリカ人の在校生に、「どうしてこの学校に入学することに決めたの?」と尋ねたところ、「この学校はGenuine-本物・誠実だと思ったから。」との答えが帰ってきたことが、強い印象に残っています。その後、5人の生徒さんたちを、日本からこの学校へ送り出しました。もちろん、それぞれの生徒さんのバックグランド、性格、興味のあること、進路、目指しているものは異なりますが、それぞれの生徒さんと話す機会があるたびに、口をそろえて言ってくれることが「生徒と教師の信頼関係が本物。」ということです。

卒業式もドレスコードなどは無いのですが、下級生は卒業生への尊敬の気持をこめて、男子生徒はネクタイやジャケット着用、女子生徒はドレス着用です。そして、卒業生は、それぞれ自分の好きな服装をします。私の生徒さんは、羽織袴でした!そして、卒業生のひとりとして、立派にスピーチをしてくれました。テーマは、人と人との出会いということでした。この学校との出会いに感謝するとともに、学校を後にすることはとても辛いのでしょう。これから、アメリカの大学進学という新しいアドベンチャーがスタートしますが、この学校での出会いによって得られた糧と自信があれば、きっとこれからも大丈夫!Better Personに一歩、一歩、近づいていくことでしょう。嬉しいハッピーな日でした。