これ、1988年公開なんだね。もう36年前!?
私も齢を取るわけだ。
この映画のなにが凄いって、もちろんアクションもあるけれど、やはり一番は、脚本の見事さでしょうね。
随所に張り巡らされた伏線。主人公のニューヨーク市警察の刑事、ジョン・マクレーン(ブルース・ウイリス)が何故ロサンゼルスに来たのか、から始まって、奥さんホーリー(ボニー・べデリア)との微妙な関係から、奥さんが職場(日系企業ナカトミ・グループ)で名乗っている苗字、写真立て、腕時計。
抑々何故ジョンは裸足なのか?これだけじゃない、もっと細かな伏線が縦横に張り巡らされていて、これらが物語の展開の中でムリなく無駄なく極自然に、しかも効果的に回収されていく気持ちよさ。
最近やたらと「伏線回収」がうるさく言われているみたいだけど、まさしくその伏線回収のお手本、見本市みたいな映画ではないかなと思う。
登場人物の配置もムダがない。ジョンと無線で連絡を取り合うロス市警の黒人警官の人情味。彼が内勤になった悲しい事故の経緯が語られ、それがラスト・シーンで見事に回収される感動のシーン。これいいよ。
一方ロス市警の上の連中やらFBIやらが揃ってポンコツなのもお見事。テロリスト側の策略に乗せられていることに最後の最後まで気付かない。このポンコツぶりが物語を面白く展開させていくんだな。ポンコツだけどムダではない。
そしてなんといってもマスコミ!マスコミの無能でお邪魔で最低最悪なポンコツさ加減ね。ウイリアム・アザートン演じるニュース・キャスターが、余計なことばかりするんだ。コイツのお陰でジョンやホーリーが窮地にたたされることになるんだけど、物語を面白くしてくれるという意味では、コイツの無能でお邪魔で最低最悪なポンコツぶりもムダではない。
そしてテロリストたち。アラン・リックマン(『ハリー・ポッター』のスネイプ先生役でも有名)演じるテロリストの首魁・ハンス・グルーバーの酷薄さ。冷静沈着で物静かな喋り方だが、その根底に漂う薄気味の悪さね。
それと正反対な激情型のテロリストを演じたのがアレキサンダー・ゴドノフ。この方はソビエトから亡命したダンサーで、アメリカでは俳優としても活動していた方です。ダンサーだけあってアクション・シーンで見せた身軽な動きがお見事でした。ロン毛のイケメンだが凶悪な奴。
アレキサンダー・ゴドノフ
それとやはりテロリスト役で出演した東洋系の俳優、アル・レオンね。私この方の個人的ファンでして、日本でいえば故・福本清三さんみたいな「斬られ役」の方で、たくさんの映画やドラマに出演し、大概はセリフもなくすぐ死んじゃう(殺されちゃう)役なのですが、こういう役者さん
好きなんですよねえ。
アル・レオン
ストーリーはテンポよく、アクションは派手だがぎりぎり無理がない。
この「ぎりぎり」ってところが重要。出来なさそうで、でももしかしたら出来るかもしれないという「ぎりぎり」のラインのアクション。これが良いんだ。
特に消化用のホースを使ったアクションね。あれは思わず笑いそうになりながらもハラハラしちゃう、実に見事なアクションとしか言いようがありません。
で、一番面白いのがブルース・ウイリス演じるジョン・マクレーン刑事のキャラクターですね。
この刑事さん、決して「スーパーヒーロー」ではないのです。奥さんとの関係に悩み、ぐちぐちぐち不平不満ばかり口にしている。どこにでもいそうなオッサンなんです。
でも、「やるときはやる」。
文句ばかり言いながらも、奥さんはじめ人質たち救出のため一人で奔走する。ダメなところと優秀なところとがうまく共存している。
演じるブルース・ウイリスはコメディも演じられる、大変「上手い」俳優さんです。これが例えばスタローンとかシュワちゃんとかが演じていたら、ただのスーパーヒーローになってしまっていた、かもしれない。
ブルース・ウイリスが演じたからこそ、「情けなくてかっこいい」ジョン・マクレーンというキャラが生まれたのです。
ブルース・ウイリスって演技が下手だとか一部で言われているみたいですけど
全然わかってない!
この方は、上手い役者さんですよ。
アクション映画の歴史、いや
あらゆる映画、全映画史の中で燦然と輝く大傑作!
『ダイ・ハード』
私のイチオシ映画。これは一食抜いてでも観る価値ありあり。
あっ、同じ『ダイ・ハード』でもパート2以降は観ても観なくてもどっちでもいいです(笑)。
あくまでもこの1作目、1988年公開の『ダイ・ハード』こそが重要。
是非是非。