第3位 『新・必殺仕置人』
1977年1月~11月。テレビ朝日系列
必殺シリーズ10作目であり、中村主水シリーズとしては5作目に当たります。
必殺シリーズ随一の人気キャラクター、念仏の鉄(山崎努)を復活させ、江戸の仕置人を仕切る組織「寅の会」を登場させるなど、当時低迷していた視聴率を上げるための努力が見られ、そのお陰かシリーズ屈指の傑作となっている感があります。
寅の会では、歌会と称して仕置人たちを集め、元締の寅(藤村富美雄)が仕置のターゲットを和歌にして詠みあげる。その歌を集まった仕置人たちが競り落とすんです。普通、競りは1番高い金額を上げた人に落とされるものですが、これは逆、1番安い金額を上げた人に落とされるんです。この辺りが面白かった。
登場キャラクターも良かった。お馴染みの中村主水(藤田まこと)に上述した念仏の鉄。この二人はクールで厭世的、自分たちのしていることは所詮悪事であることを悟っており、鉄の場合はそれプラス享楽的でどこか自暴自棄的なところがある。山崎努さんの演技がこのキャラに深みを与えていました。
もう一人の仕置人、巳代松(中村嘉葎雄)はどちらかというと人情家。直情傾向なところがあり、メンバー思いで、それが最終回の悲劇につながっていくわけですが、それは御覧になっていただきたく。
密偵役の正八(火野正平)も良かった。明るいキャラクターでどちらかというとコメディ・リリーフ的な立ち位置。暗く重くなりがちな話に明るさを与えていました。
改めて、火野正平さんのご冥福をお祈り申し上げます。
寅の会側のキャラも立ってます。元締・寅を演じた藤村富美雄さんは元阪神タイガースの選手、役者さんではないのですが、その迫力たるや強烈なものがありましたね。まさに「元締」という感じ。あれは見事なキャステイングでした。
仕置人たちの監視役で”死神”と呼ばれる男(河原崎健三)はギリヤーク人という設定。裏切者を始末するときは漁業用の銛を使うのですが、この方、要所要所で北方民族が目を保護するために使う「遮光器」を装着するんです。あんなもの付けたら反って見辛いだろうにと思ってしまいますが、そこは必殺お得意の「ケレン」という奴です。時代劇はエンタテインメントなファンタジー。ケレンもまた良し。
70年代の必殺は、どちらかというと暗く、思い作品が多かったように思う。主水シリーズとしてはこれの一つ前の作品『必殺仕業人』などは、暗さ重さのピークな作品でした。
それに比べれば、コチラは暗さ重さはありつつも、正八やせん(菅井きん)とりつ(白木真理)の”戦慄”コンビが明るさを齎し、良い感じでバランスを保っていました。その辺りも”傑作”と称される所以でしょうね。
80年代以降の『必殺仕事人』辺りから、シリーズは”軽さ”を増していきパターン化が加速していきます。ストーリーも類型化していき、新味も深みも感じられなくなっていく。
これは「80年代」という時代がそうさせたのだと思う。70年代のシリーズにあった暗さ重さも、80年代の軽さも、どちらも”時代”を反映していたもの、時代劇とは文字通り、”時代”を映す鏡だということ。
90年代以降になると、シリーズは失速していき、はっきり言うと”つまらなく”なっていく。さすがの私も観なくなってしまい
現在に至る、かな。
様々な事情から、今後「必殺シリーズ」が作られることはないでしょう。というか、つまらない作品しか作れないなら、いっその事作らないでくれ!と思ってしまう。
70年代の必殺は、あの時代に生きた俳優、脚本家、監督だからこそ作り得た傑作なのです。もう同じものは二度と作れない。
それはどのシリーズであれ、同じだとは思いますが。
そう意味では、シリーズというものは、”歴史”というものを深く感じさせる、そうしたものであるのだなと思いますね。
時代ごとの違いを観てみるのも、シリーズの観るうえでの醍醐味、
と言える、かも。
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